第2話 謎のベスパと非接触バトル
ハイオクガソリン(レギュラーガソリンで良いはずが、スタンドの兄さんに2ストはハイオクが良いよ!と謎に言われた。)を入れ、自宅の吸い殻からまだ吸えそうなタバコを吸う。川を挟んで貧富の差を感じざる得ない街並みを、肌寒く、震えながら走らせた。
国道抜ける交差点前。反対車線から、何だかショウヤ的にセンスのいい奴が、ボロいイタリアのスクーターをキックしている。Vespaだ。ボロくて濃いブルーメタリックのカスタム車。黒い傷だらけの小さめなジェッペルに、丸目の濃い紫のサングラス。カーキのモッズコートに細身のデニム。オイルまみれなのか、黒いハイカットのコンバース…
翔也はとっさに真似したいと思ったと同時に、何か言葉に出来ない、存在感を感じた。
青になると同じ方向に向かっていく。自分のジョグの方が早いが、Vespaのうしろ姿と乗り手のファッションチェックもしたくて後ろを走った。
「ん?なんか曲がる軌道合わされて前に来たり、離れたりされてるような……」
ジョグのハンドルを握る手に、じんわりと冷や汗が滲む。このベスパ野郎は、俺が次にどこに動くか知っているみたいに、ジョグの動きを先読みして、自分のベスパでスペースを潰しに来ている。
息を止めている時間はもう限界に近かった。次の右カーブ、ジョグは無理な角度でイン側へ一気に突っ込んだ。路面から3センチ浮いた「ライド」能力が、車体を物理法則無視の勢いで引っ張る。
――その瞬間。
前を走っていたベスパが、まるでその加速を最初からわかっていたみたいに、スッと車体を左へずらした。避けられた?
ショウヤが驚愕したのも束の間、息を止める限界が、プツリと切れた。「うっ……!」能力の維持に失敗し、ジョグの車体が路面に叩きつけられ、タイヤが小さく鳴いた。
ショウヤが呼吸を整える隙に、ベスパの奴はもうミラーにさえ映らないほど加速していた。
「な、なんだ、今の……」ただのバイク乗りじゃない。ショウヤの頭には、底知れない違和感と焦燥感だけが残った。
第3話、レース会場と闇と現実




