最初のステップ
この章の興味深い事実: ブラジルでは、会話中に人々が冗談めかしてお互いを「侮辱」することは非常に一般的ですが、常に愛情と友好的な方法で行われます。
生活のいろいろな用事を片づけ、仕事用の車を受け取った後、ユーリはリゾートに戻る。車を停めて、まずは受付へ行ってレストランの倉庫の鍵を受け取ろうとするが、中に入る前に木陰のピクニックテーブルでリゴとフェリペが話しているのが目に入った。受付に客がいないのを確認して、ユーリはそっちへ歩み寄る。
「二人とも、もうバカンス気分か?」
ユーリが冗談っぽく声をかけると、
「おお、フェリペ、見てみぃ。ボスが来たで。平和は終わりや!」
ロドくんが笑いながら即座に返してきた。
「ちょっと落ち着いた?」
ユーリはベンチに腰を下ろしながら聞く。
「神様のおかげでな。でもクリスマスが終わったらまたドカンと忙しくなるやろな」
ラファエウが答えて、続けた。
「街のほうはどうや? 賑やかか?」
「めっちゃ混んでるよ。だから今日のリゾートがこんなに静かなんだと思う。ビーチにいない人はみんな街で明日の買い物してるんじゃないかな」
ユーリは静まり返った周りを見回しながら言う。
「ほんまや。あしたもうクリスマスイブやったわ」
ロドくんがパチンと指を鳴らして思い出した。
「そうだよな。俺、もう一週間以上クリスマスディナーのこと考えてたもん」
フェリペがコメントする。
ロドくんはスマホを取り出して画面をスワイプし始めた。
「そういえばユーリ、お前ひとりやろ? うちの実家でクリスマス過ごさんか?」
フェリペが本気で誘ってくれる。
「ありがとう。でも明日は広場で劇を見に行って、そのあとそのまま家に帰るつもりなんだ」
ユーリは丁寧に断りながら感謝した。
「ああ、エミリが出るんだよな?」
フェリペが確認する。
ユーリがうなずくと、フェリペは立ち上がりながら優しく肩を叩いた。
「気が変わったらまだ誘いは有効やで。エミリにも頑張ってって伝えてな」
もう一度うなずいて礼を言うユーリ。でもフェリペが遠ざかる前に、受付に来た本来の用事を思い出した。
「あ、ちょっと待って。レストランの倉庫の鍵持ってる? 物資置いてきたいんだけど」
「ん? じゃあここで受付見ててくれ。俺、バンガローのゴミ箱交換に行かなあかんから、そのついでに倉庫に置いてくるわ」
「いいの?」
「全然。鍵よこせ」
フェリペが手を差し出す。
ユーリは車の鍵を放り投げ、フェリペは駐車場の方へ歩いていった。
受付には特にやることがないので、ユーリはロドくんと一緒に座る。ロドくんはまだスマホに釘付けだ。
「なあロドくん、そんなに真剣に何調べてんの?」
ユーリが興味本位で聞く。
「ちっ……俺、ほんまに明日がクリスマスイブやって忘れてたわ、兄ちゃん」
ロドくんは画面から目を離さずに答える。
「こいつ、頭が首にくっついてるから思い出せるんやで」
後ろから声がした。フェリペが出て行ったばかりの廊下からだ。
振り返ると、肩まで編み下ろした茶髪の女性。黒地に大きな赤い花柄のロングドレスで、丈は短めで黒いコンバットブーツが見える。腕はタトゥーだらけ、指にはリングがたくさん。片手にスマホを持っている。
「ヴァウ! やっと来た!」
ユーリは立ち上がって挨拶する。
ヴァレーリア——ユーリにとっては姉のような従姉だ。彼女はにこっと笑って、ユーリをぎゅっと抱きしめた。
「ほんまに久しぶりやな」
抱きしめたあと髪を直しながら言う。
「ほんと。元気? おばさんも?」
ユーリも笑顔で聞く。
「元気や、神様のおかげで。お前、絶対家に来いってキス送ってたで」
「へい」
ロドくんが気まずそうに笑いながら声をかける。
「あ、ロドリゴ。今は話しかけんといてくれる?」
ヴァレーリアは彼を見もせずに手を振った。
「忙しかったけど、ちゃんと間に合ったやん」
ロドくんが弁解する。
ヴァレーリアは自分のスマホを指さす。
「間に合ったちゃうわ! 思い出させられただけや!」
「…………うん、ごめん」
ロドくんはもう言い返せずにしょんぼり。
「ふん……」
ヴァレーリアは鼻を鳴らしてユーリの方へ向き直る。
「アナはおる?」
「たぶんスパにいるよ。話したい? 電話する?」
ユーリはすでにスマホを出しかけた。
「ええけど、電話いらん。もう行くって伝えてあるから」
ヴァレーリアは自分のスマホで時間を確認して、ドレスのポケットにしまう。
「あとで家に来なよ」
ユーリの頬にキスして別れを告げると、
「で、お前は……」
ロドくんを指さして、
「二度と忘れるなよ? わかった?」
「はいはい、了解です」
ロドくんは恥ずかしそうにうなずき、ヴァレーリアはスパの方へ歩いていった。
少し離れてから、ユーリはロドくんを見て、二人で笑い出した。
「お前らまだそんな感じなん?」
「ヴァウにクリスマスイブのミサ、一緒に行くか日曜日までに返事してって言われてたのに……今思い出したんや」
「それだけであんなに追い払われたの?」
「世の中厳しいわ、弟分。男がトロいと女はみんなああなるんちゃうか?」
ロドくんは自分をからかいながら言う。
「さあな。トロい奴に聞いてみないと」
ユーリも負けじとからかう。
「くそくらえ! ヴァウ、お前が小さい頃も同じように怒ってたやんか」
「それは違う。あれは女が男に怒ってるんじゃなくて、ベビーシッターがうるさいガキに怒ってるだけだ」
ユーリは反論する。
「同じことや。アnaはどうや? お前もアnaに怒られたことないとは言わんやろ?」
「あるけど、それも違う。お前とヴァウみたいに恋人同士じゃないし」
「それがお前のスキル不足や、ボンクラ」
ロドくんは立ち上がりながら大笑い。
「やっぱりお前もトロい証拠やな」
握手を交わして別れを告げる。
「俺、もう行くわ。今日はあと二人のサーフィン生徒おるねん」
「行ってこい。明日広場で会えなかったら、メリークリスマス!」
ユーリも立ち上がる。
「おう、ほんまやな、弟分。メリークリスマス!」
ロドくんはまた思い出したように笑って、軽くハグしてきた。
「また忘れるとこやったわ!」
その後、ロドくんはサーフィンレッスンに向かい、ユーリは受付に残った。
その日の残りはゆっくりと過ぎていった。受付を通る客は街から戻る人と出かける人だけ。翌日はさらに静かだった。
そして今日——クリスマスイブ——ユーリは午後まるまる暇で、リゾートに予定もチェックインもなく、早めに受付を切り上げて家に帰って準備をした。
エミリは逆に大忙しだったらしい。今日は一通もメッセージが来ていない。
「エミリ:明日の公演は19時30分から。忘れないでね。 – 22:07」
昨夜、リハーサル後にキャストと出かける前に送られてきた最後のメッセージだ。
ユーリはスマホで時間を確認しながらそのメッセージを読み返す。まだ余裕がある。
スマホをベッドに放り投げる。続いてTシャツ、短パン、下着も床へ。
シャワーの中、冷たい水が今日の暑さと汗を一緒に流していく。
外は午後の静けさが肌に触れるほど。風で葉が揺れる音と、タイルを打つ水音だけ。
その静けさが浴室にも染み込み、シャワーを長くさせてしまう。
ユーリは目を閉じてリラックスする。久しぶりに頭が本当にクリアになった。
「……今日の舞台、エミリにとって大事だ」
独り言のように呟く。
ある意味、今夜はエミリが3年間語り続けてきたことの集大成だ。本物の舞台に立つ夢、俳優になる夢。
もちろん大事だ。でもどこまで?
夢の完全な実現ではない。だって、彼女にとって初めての本格的な舞台にすぎない。
じゃあ、夢が叶うってどういうこと?
映画のエンドロールに名前が出ること? 劇場を満席にすること? 賞を取ること? それとも毎日幸せで満足しながら目覚めること?
目を閉じたまま、アナの姿を思い浮かべる。色とりどりの花に囲まれた店内で、薄オレンジの制服を着て客に接するアナ。
「あれが彼女の夢が叶った姿なのか?」
想像が移る。今度は豪華な劇場の舞台で、衣装を着て重要な役を演じるエミリ。
「こっちは?」
もう少し考え続ける。夢は一体いつ叶うのか。
次第に問いが変わっていく。
「夢はいつ叶うのか?」から「自分はあと何歩でそんな夢にたどり着けるのか?」「彼女たちは?」
そして突然、結論に至る。
ユーリは目を開け、シャワーを止めるのも忘れて飛び出した。まだ水が滴るまま、タオルで髪と体をごしごし拭きながら部屋を横切る。
服も着ずに急いで机に向かい、ノートを開いてペンを掴む。書き始める。
「エミリ、アナ、ヴァウ、ロドくん、フェリペ……」
呟きながらリストを完成させる。
ページの上部、大きな文字でタイトル:
「新しい夢」
書き終えたリストを見てユーリは微笑んだ。
「まだどこにたどり着くかはわからないけど、きっと……」
タイトルの下、少し小さめの文字で:
「1. 彼らの夢を叶える手助けをする」
満足げに息を吐く。
「いい第一歩だ」
わあ、読んでくださった方もいらっしゃるんですね。全部読んでくださらなかったり、気に入らなかったりしても、本当に心から感謝します!




