驚き!
この章のトリビア:
日本では「ユリ」は女の子の名前ですが、ブラジルでは男の子の名前としてとても一般的なんです。
しかも、よく「I-U-R-I」って書かれます。
ちょっと面白いですよね?
ユリのリゾートでの二日目は、初日と同じくらい慌ただしかった。
―でも、少し違う意味で。
彼は一日の大半を街の中心部で用事を片付けて過ごした。
そして今、ようやく夜七時近くになって、数分だけ腰を下ろすことができた。
その短い休憩時間を使って、ユリはフロントのパソコンからシステムにアクセスし、アナの番号を探す。
「……あった!」
彼は小さく、ひとりで喜ぶ。
番号をスマホに保存して、メッセージを送る。
『やあ、アナ。ユリだよ』
『ごめん』
『システムで新しい番号見つけちゃった (^_^;)』
数秒後、彼女から返信が来る。
『やあ』
『大丈夫だよ (^▽^)』
『どうしたの?』
ユリは続ける。
『まだスパにいる?』
『渡したいものがあって』
さっきよりも早く、アナから返事が届く。
『いるよ』
『なに?』
ユリは何度かメッセージを打っては消し、少しでも恥ずかしくない言い方を探す。
でも結局、最初の言葉に戻ってしまった。
『昨日のお礼のプレゼント』
『そんなに大したものじゃないけど』
『あーん♡』と、ほとんど間を置かずに返信が来る。
『かわいい』
『フロントにいるんでしょ?今行くね』
ユリは完全にスマホに集中しながら、返事を打ち始める。
『僕がスパに行ってもいいよ、そっちの方が楽なら―』
しかし、最後まで打つ前に声をかけられた。
「こんばんは。ユリさんはいらっしゃいますか?」
フロントの向こうから、女性の声がする。
少し慌てて、スマホに気を取られていたことが恥ずかしくなり、ユリは急いでポケットにしまう。
「えっ、あ……すみません。こんばんは!」
立ち上がって、宿泊客の方を向く。
「僕がユリです。ご用件は―」
言葉の途中で、彼は止まった。
「……え?」
緑の瞳。茶色の髪。金色の輪っかのピアス。
この三年間、キャンパスの廊下で何度も見かけた、そのままの姿。
「サプライズ!」
彼女は大きな笑顔で言い、ユリを驚かせることに成功したのが嬉しくて、くすくすと笑う。
「エミリ、なんでここに?」
ユリは本気で困惑した顔で聞く。
「言わなかったっけ?劇団のみんなと一緒に、市からの依頼で『クリスマス・キャロル』を上演するって」
その瞬間、すべてがつながった。
「……ここで!?」
「そう」
彼女はフロントに腕を乗せる。
「あなたが、ここに両親のリゾートがあるって言ってたでしょ?だから見に来たの」
ユリは、何気なくその話をしたことを思い出す。
「なに?」
エミリは彼の顔をじっと見つめる。
「親友から少し離れられるって、期待してた?」
「ち、違うよ!」
ユリは笑う。
「ただ、びっくりしただけ」
最初のぎこちない空気が和らぎ、ユリの笑顔は少し大きくなる。
「今、チェックイン?」
「ううん、朝にしたよ。髪がウェーブの人と」
彼女は、朝番のフェリペのことを説明する。
「あなたのこと聞いたら、用事で出かけてるって言ってた」
エミリは楽しそうにフロントに身を乗り出す。
軽いワンピースが、胸元をぎりぎりで押さえている。
「だから、戻ってきたの」
ユリが必死に視線を逸らそうとする中、彼女は笑顔で言う。
「今夜、クリスマスフェスティバルのオープニングに行かない?」
「え?もう今日から始まるの?」
地元なのに、すっかり忘れていた。
「始まるよ。イルミネーションの点灯もあるし、ライブもあるの」
彼女の声は期待で弾んでいる。
「どう?」
エミリはじっと彼を見つめる。
でも、ユリの顔には彼女が思っていた以上の不安が浮かんでいた。
「……仕事で忙しいなら、無理しなくていいよ」
彼女は付け足す。
「ごめん。まだ、午後のスタッフがいるんだ」
ユリは少し無理した笑顔で言う。
「みんなが打刻するまでは、ここにいないと。何かあったら困るから」
「そっか……ごめん、私が忘れてた」
エミリも同じように、少しぎこちなく笑う。
空気を和らげようと、ユリは続ける。
「先に行ってていいよ。僕、みんなに何か必要ないか聞いてくる」
それを聞いて、エミリの表情が少し柔らぐ。
彼が言い訳していないことが、伝わったからだ。
ユリは、そういうタイプじゃない。
でも、この半年、彼がどんどん遠くなっているように感じていた。
いくつかの仮説はあった。
三年間、親友だったのだから。
それでも、彼が何も言わない以上、彼女は慎重になるしかなかった。
「もし大丈夫だったら、シャワーだけ浴びてから街で合流しよう」
ユリが提案する。
「うん、約束ね!」
エミリは笑顔で後ずさりしながら言う。
「行けそうだったら、メッセージちょうだい。待ってるから」
手を振って、彼女はフロントを出ていく。
『最近のユリ、どうしちゃったんだろう……』
エミリは、他の宿泊客の後ろについてリゾートの出口へ向かいながら、そう思う。
フロントに戻ったユリは、腕を組んでカウンターに顔を埋め、大きくため息をつく。
「なんでこんなタイミングで……」
「宇宙の陰謀だな。俺を困らせるための」
「なにひとりでブツブツ言ってるの、モテ男さん?」
背後から、聞き覚えのある声がする。
振り返らなくても、誰かはわかる。
「……やあ、アナ」
ユリは顔を腕に乗せたまま答える。
「来たばっかりなのに、もう色々仕込んでるじゃない」
アナはからかうように言う。
「さっきの可愛い子、なに?クラッシュ?すごく仲良さそうだったけど!」
「ち、違う!誰?あ、あれ?えっと……大学の友達だよ」
ユリは完全にパニックになりながら言い訳する。
『なんでそんなに早く気づくんだよ……』
アナは、彼の必死な様子を無表情で見つめる。
「はいはい。とっても説得力ありますねー」
そう言って、彼の目の前で大笑いする。
ユリの顔はトマトみたいに真っ赤になる。
「……それで?」
アナは笑いをこらえながら話題を変える。
「私のプレゼントは?」
「こ、これ」
ユリはカウンターの引き出しから、青いリボンのついた白い箱を取り出して渡す。
アナの表情が、すっと柔らかくなる。
目を閉じて、箱を両手で持ち、頬にぎゅっと当てる。
「ありがとう」
心から嬉しそうな声だった。
それを見て、ユリもようやく力を抜いて微笑む。
「大したものじゃないよ」
彼は言う。
「昨日のこともあるし……それに」
少し、間を置く。
「お祝い」
「ん?」
アナは箱を抱えたまま、目を開く。
「ちゃんと言えなかったけど……」
ユリは続ける。
「君が元気になったって聞いて、本当に嬉しかった」
驚きは一瞬。
すぐに、いつもの優しい笑顔に戻る。
「それで泣いたの?」
アナはからかう。
「うん、そうそう」
彼女は自分で答える。
本当の理由じゃないことは、彼女もわかっていた。
でも、あえて触れなかった。
少しの間、沈黙が二人の間に流れる。
「正直ね」
アナが、少しだけ弱い声で言う。
「久しぶりにあなたと話すの、ちょっと怖かった」
リボンを指でいじりながら続ける。
「なんだか、他人みたいになってたらどうしようって」
箱を胸に抱きしめる。
「でも、まだ大切に思ってくれてるって分かって……嬉しい」
二人は微笑み合う。
その静けさの中で、かつていつも一緒だった、子供の頃の自分たちを思い出す。
「サプライズを台無しにしたくないから、家に帰ってから開けるね」
アナは箱を指さす。
その言い方に、ユリは引っかかる。
「……“帰る”?」
「スパ、もう閉まってるんじゃ?」
「閉まってるよ」
アナは箱をカウンターに置いて、壁にもたれる。
「でも、乾燥機がまだ、シーツとタオル回してるの」
アナは時々、スパの片付けを全部終わらせてから帰る。
待ち時間は、サウナやプールで過ごすことも多い。
「朝早く来て、山ほど仕事するよりマシだもん」
彼女はあくびをしながら首を伸ばす。
「私、朝は本当にダメなの」
その瞬間、フロントの高い椅子がきしっと音を立てる。
ユリが勢いよく立ち上がったのだ。
「俺がやる!」
彼は真剣な顔で言う。
アナは一瞬、ただ見つめ返す。
「……なにを?」
「スパの片付け」
ユリは繰り返す。
「そうすれば、遅くならないで帰れるだろ?」
「大丈夫だよ、そんなの」
アナはなだめる。
「ほとんど毎週やってるし」
「お願い」
ユリは引かない。
あまりにも真剣なその様子に、アナはますます分からなくなる。
「……シーツ、乾燥機から出したあと、どこにしまうか知ってる?」
「……知らない」
ユリは正直に言う。
「教えてくれる?」
アナは腕を組んで、じっと彼を見る。
「本気?」
「うん」
一瞬の後、彼女はため息をついて、前髪をかき上げる。
「分かったよ、頑固くん」
彼女は小さく笑う。
ユリはほっとして、笑い返す。
「付き合ってくれるなら、喜んで」
アナは、さらに大きな笑顔で言った。
―その夜遅く。
エミリは、通りに面したテーブルに座っている。
周りには、サンバの生演奏を楽しむ観光客たち。
テーブルの上には、半分残ったビールジョッキと、彼女のスマホ。
画面が光る。
『20:03 12/19』
それだけ。
新しいメッセージは、何もない。
『仕事で捕まってるだけだよね……』
エミリはそう思い、ため息をつく。
肘をつき、手のひらに頬を乗せ、スマホを見つめる。
『でも……』
『あの事故のこと、まだ自分を責めてるんじゃないかな』
まだ誰も第1話を読んでいないのに、もう第2話を公開できました。
なんだか、うまくやれてる気がします。
ここにいる人たちは、みんな本当に書くのが早くて、
毎日すごい物語ばかり。
正直、ちょっと羨ましいです… (╥﹏╥)




