逡巡
一度も身体を経由していない言説には誠に奇妙な感覚を覚える。それ、一体どこから出てきたの? と思わず聞きたくなる。彼らの頭蓋骨の斜め左前、上空20cmのところから突然ポンっと湧き上がってくるような不思議な感触がする。私はその方向をチラッと見上げる。白い雲がぽわ〜っと浮かび上がっている。食べたら美味しいんだろうか。どんな味が匂いが食感がするのだろうか。まぁきっと美味しくも不味くもないのだろう。無味乾燥なものであるに違いない。ほのかに漂ってくる匂いからもそんな予感がする。
吃り。物理的な吃りではなく、精神的な吃り。澱みや躊躇い、逡巡のない言説に果たして何の意味があろうか。それらには大抵独特の湿気った匂いが、途切れ途切れの息遣いが、引きずられた跡が、重々しい質感が、仄暗い森が、壁を引っ掻き回したような傷が、岩壁にぶつかって飛び散る波しぶきを見つめる濁った視線が、永遠とも思える長い長い駅のホームの端っこをおぼつかない足取りで進む足音が、付いて回る。全ては何かの到来を待っている。何かの......。いや、それともそれ自体がひとつの到来であるとでも言うのだろうか。何かが......。それは到来を告げる詩であり、そして自らがその出現となるのだ。




