1/6
プロローグ
魔法と力と知が拮抗する世界。
軍──武をもって国を護る者。
騎士団──理念と正義を貫く剣。
学園──魔導と理を極める者たちの集う場。
三つの勢力は表面上の協調を保ちつつも、水面下では静かに火花を散らし続けていた。
そのどこにも属さず、どこにも染まりきらなかった男がひとり。
かつて、最年少で学園に首席入学し、誰よりも早くその場を去った“問題児”。
名前は──サンゴ・ブライト。
いま、彼は“期間限定助手”として学園に戻ってくる。
教師ではない。生徒でもない。だが、彼が見据えるのは“教える”ということの本質。
現場で通用しない知識に意味はない。
美辞麗句で飾っただけの魔法理論では、生徒は戦場で死ぬ。
彼の授業は、甘さを叩き潰す。罠を仕掛け、試し、転ばせ、立たせる。
──名もなき助手が、いま再び教導に立つ。
それは、静かな戦の始まりである。