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第45話 鴎の持ってきた新情報

 ――ズシ。僕は僕の肩が急にズシリと重くなるのを感じた。

 片方の肩だけがガクンと沈むような感覚だ。

 桃太郎さん、はじめジーキーさん、エイプさんポチさんも驚きながら僕を見ている。


 僕はこの感覚をなんども味わっている。

 チラっと向くとそこには空中から垂直落下してきた鴎がいた。

 彼女は僕の肩を足場にしてそっと耳打ちをはじめた。

 小さな(くちばし)から大きな事実がもたらされる。

 僕以外の者には鴎がなにかをゴニョゴニョといってるようにしか聞こえないだろう。


 桃太郎さんたちは鴎の一挙手一投足を注視している。

 なにか知られたくないことがあるようですね? 桃太郎さん。

 鴎が僕に告げたことのひとつめ。

 それはエイプさんはただの()ではないということだった。

 ……それがどう関係しているのか。


 ふたつめはポチさんの本当(・・)の飼い主が判明したこと。

 ただその飼い主から話はまだ訊けていないという。

 僕は鴎に赤鬼さんの推定死亡時刻を告げた。


 ――その時間の彼らのアリバイを調べてください。

 ――それにポチさんの飼い主に聞き込みも。

 ――あとは【臼の仇討事件】についても。


 僕は鴎にこっそりと調べものの注文をだした。


 「青鬼さん。わかりました」


 鴎は新情報という土産を残して颯爽と飛び立った、そして空の上で敬礼するように大きく旋回した。

 僕は鴎が空の彼方へ吸い込まれるのを見届けたあとそのわずかな合間を縫って、水平線にとある術をほどこした。

 鬼属だけが使える変化(へんげ)の術だ。


 「引きつづき調査をお願いします」


 もう聞こえてはいないだろう鴎にそう声をかけてから僕は浜辺に埋まった金棒を手に取りササっと砂を払った。

 金棒の先端には砂と一緒に固まった血痕が残っている。

 そもそも赤鬼さんを殺した凶器の取っ手にまで砂が覆い被さっているのは不自然だ。


 赤鬼さんを殺害後に金棒を放り投げて先端部が埋まる。

 まあ、これは自然にあることだろう。

 海のほうを向いている赤鬼さんをうしろから殴って金棒をそのまま右側にポイっと捨てた。


 行動の順番としてはなんの問題はない。

 右……そういえばエイプさんの背は右に傾いていた。

 でも……あれは関係ないか……。

 投げた金棒が砂浜にザクっと刺ささる。

 これもなんの問題もない。

 だが取っ手にまで砂の山ができていた。

 これは意図的に誰かが凶器を隠そうとして失敗したということだろう。


 単純に考えて取っ手の途中までしか砂で隠せなかったのは時間がなかったから。

 まさか砂の量が足りなかったなんてことはないここには文字通り山ほどの砂があるのだから。

 本当は金棒すべてを埋めたかった。

 いや、できることなら赤鬼さんの遺体ごと埋めたかったに違いない。


 そうすれば桃太郎さんたちは鬼ヶ島にいったけれど赤鬼さんはいなかったとして、すべてを闇に葬ることができる。

 赤鬼さんはそのご失踪者としてのみ記録が残る。


 僕はここで桃太郎さんに仇討退治の諸条件や帯刀者の心構えなどを訊いた。

 特段、怪しむ点も変わった返答もなかった。

 おおよそのルールはきちんと把握していた。

 それに無差別に誰かを殺すような人ではなさそうだ。


 また推理に戻ろう……。

 赤鬼さんの遺体すべてを隠す時間が足りなかった理由は鴎の記憶証言からすると、ちょうど鴎に発見()られたからにほかならない。

 鴎の発見があとすこし遅れていれば完全に隠蔽されていただろう。

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