第13話 閉ざされた村
周囲を山々に囲まれた小さな村があった。
冬季になると山頂で山肌が雲とぶつかるため村一帯は豪雪に頭を悩ませることになる。
絶え間ない寒波が半年以上もつづくという厳しい環境の村だ。
入道雲のようにモクモクとした灰色の空ならば悪天候の予想もつくけれど、吹雪に関してはなんの前触れもなく突然はじまる。
空はわずかなあいだで暗転し、現にいまも雪は止むことを忘れたようにシンシンと降りつづいていた。
それにともなって風も強まっている。
「はぁ~寒い」
村人は自分の体重の半分もあろうかという薪を背負い肩を竦めて歩いていた。
その態勢が冷えから体を守る防御本能なのだろう。
ゆき交う人はみんな同様に似たり寄ったりの態勢で、口に両手を当てては吐息で手を温めるを繰り返している。
それでもマイナスの温度は刹那的な暖をすぐに掻き消す。
村人の赤みがかった指先はまた小刻みに震えはじめた。
この村は窪地という土地柄のために冬季はいつも食糧不足に悩まされている。
もっとも春夏であってもそこまで恵まれた場所ではない。
ただ、この鬼のような冬よりはよほど天国だ。
村人は厳寒期とはいえども生活のために遠方へと出稼ぎにいかざる負えなかった。
それぞれが蓑を編んだり笠を編んだりした物を背負い、危険を承知のうえで町へと出かけていく。
旅立つ村人たちは過酷な環境ゆえに道中で命を落とすことは日常茶飯事だった。
なかには吹雪の中に飛びだしていって犠牲になった子どももいたという。
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