目覚め
「いててて…」
慌ただしく出かけの用意をしているラビは棚に頭をぶつけた。今日こそは家から出て街に出向くのだ。
子供の頃から使っている皮製の大きいかばんに、地図、お金、食料、その他諸々必要になりそうなものを詰め、街を目指す旅へ出た。
朝に出るつもりだったが思ったより用意に時間がかかってしまい、あたりはすっかり暗闇に包まれていた。幸い、祖父が狩猟で使っていたランタンがあったので、その灯りだけを頼りに先へ進むことにした。
「地図を見た感じ、このまま真っすぐ行けば街につくな」
そう言うとラビは迷うことなく森の中を突き進んでいった。
辺りはまだ鬱蒼と茂る草木ばかりだ。果たしてどれくらい歩いただろうか、一向に町に着く気配がしない。すると、ふと足音が聞こえた。時刻は1時程、人が出歩くような森でもないため、動物か何かかと思った。
しかし、足音の感覚が異様に遅い。なのに、音のする場所はどんどん変わっている。そして、何かを探しているような感じがした。
まずい。森は自分の庭だと思い込んで油断していた。この音を出している者はきっと魔物だ。しかも、僕には到底太刀打ちできないような。
足音はだんだんと近づいてきている。ラビはその者の威圧感に押しつぶされそうになりながら、岩陰に隠れた。
「どうしよう、こんなことならもっと運動に慣れておくべきだったなぁ…」
周りを歩く何者かは草を掻き分け、気がつくとすぐ後ろまで来ていた。
『ウグゥォォ…』
目の前に現れた怪物は熊や猪のようで、その剛腕をこちらへと振りかざしてきた。
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
『ウグゥォォァァァ!』
するとそのとき、怪物は叫び出し、地面に倒れ込んだ。目の前には土埃に包まれて立っている人影が見える。
突然のことで声も出せず呆然としていると、煙が引きその人影の正体が姿を現した。髪は赤く長く後ろで結んでおり、雪のような肌で、焔のような目を持っていた。服装からしても、女性の冒険者だろうか。
「大丈夫か。」
しかし、聞こえてきたのは青年の声だった。
「だ、大丈夫です。ありがとうございます。」
動揺してしまい遅れたが、感謝の言葉を伝えた。
「ここらへんはゴーレムやナイトバットといったモンスターがうろついている。夜はあまり来ないほうが良いぞ。」
上にキララと書かれている美少女の見た目をした青年は、続けて話した。
「って、お前HPバー出てないし、輪郭は灰色だし、NPCかよ…こんなところにお助けイベントあったっけなぁ…」
見た目と違う声質。聞いたことのない言葉。ラビは更に困惑した。
「あの、えいちぴーばーとか、えぬぴーしーとかってなんですか?」
ラビの発言に、青年は少し驚いたようだった。
「えっ、こいつメタキャラかよ。そういう台詞は好きじゃないし、さっさと拠点に帰ろうかな。」
青年はまた意味のわからない言葉を出し、木々の間をするりと抜けて、去ろうとした。そのとき、ラビは好奇心の赴くままに質問した。
「ま、待ってください!僕も連れて行ってください!聞きたいことがたくさんあるんです!いいですか?」
青年は立ち止まり、ラビのいる方向を向いた。
「あぁ?こいつ味方になるのか…おもしれぇ仲間にしてやろう!」
「▶はい」
「【ラビ】が仲間になりました。」




