壁
ここは……。どこだ?
「やあ!」
誰? 俺は、そうだ。俺は俺だ。人間だったはず。男だったはず。いや、待て、今の声は?
「探しても無駄だよ! ボク達は一つなんだ」
は? 意味が分からない。そんな事より大事な事があった気がする。大切な存在。たった一つの。ダメだ! 思い出せない!
「娘さんのコトじゃない?」
ムスメ……。そうだ! タバサは! まだ子供なんだ! 俺がいないと! 目を覚ませ!
「それは無理……。ボク達は一つの存在として、モノになってしまっている」
さっきから誰だ?
「ボクの名前は【スクイズ・オル】。ソラリス人だった」
だった?
「今はこうして皆と一緒の存在。肉体的死が精神だけを残して魂が融合してるの」
どういうことだ?
「君も死んだってこと」
バカな。そうか! これは夢だ明晰夢。ならば問題ないか。はは。
「確かにもうどうしよもないから開き直りが肝心かも」
なぁ、スクイズ。さっき皆って言ったよな? お前意外はどうした?
「ああ、そのこと。ボクは皆を繋ぎ止める役割をしているからボクと誰かは話せるけど、誰かと誰かは話せないんだよ」
やっぱり夢だ。そんな事起こるわけがない。そういえばソラリスって言えば俺ぁ、たしか、ソラリスの設計図を……。うっ! 頭がいたい!
「無理しないで、時間は無限にあるのだから」
そろそろ起きたい。夢から覚ましてくれ。
「……。それは無理」
どうしてだ! これは夢だ! 夢じゃなきゃなんだって言うんだ! タバサ! 起こしてくれ!
「ここにいる皆は元々人間だった。だけど、今は単なる物質、原子なんだよ」
は? そんなわけないだろ! 原子が意思を持つとでも言うのか? バカバカしい。あー、なんだこの悪夢。
「システム名、オンダス……」
あ?
「君は聞いたことない? オンダスって」
確か、あらゆる物質を一度何でもない物質に変えて、再構築する……。って、まさかな。
俺達も?
「……ウラー。漸く気付いた?」
うわーーーーーーー!!!!