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皆あなたに恋してる  作者: ロロロ
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皆あなたに恋してる

日本では夏が訪れると、どういう理由なのか日本中の暑い職業などという番組特集が設けられたりする。1日高温の炉で作業する加治屋、時には火の中に飛び込み、常にサウナスーツのような服装で動く消防士、寒いくらい冷房の効いた客室とは真逆に厨房内は常に30度越えのラーメン屋

確かにどれも暑いだろうなと思いながらワイシャツを着てネクタイを締める。


「学生は仕事には入らねぇってのか」


テレビの「どれも暑そうですね~」などとクーラーの効いた部屋で喋るキャスターを睨みながら、ワイシャツのボタンを一つ外し、綺麗に締めたネクタイの上に指を引っかけて隙間を作る。

そしてシャツの袖を二回折り畳むと、テレビを消して家を出る。

特にかっこ良く見られたい相手もいないから他はしない、髪も固めないし、余計なお洒落はしない。ただ清潔で目に写る人に不快感を与えないようにはしてる。


ドアの鍵を閉めて失くさぬように鞄の小さなポケットに入れる。

学生の癖に何故か一軒家に住んでいる俺は学校に行くのに車か自転車かで一瞬悩む、

チラッと空を見れば苛立つ程に天気がいい、きっとあと30分もしたら汗をかく


結果選んだのは車だった。

車に乗り込み、朝方の冷たさが残る内にエンジンをかけてクーラーを全開につける。


しばらく走ること10分、自分の通う学校に着くと、あえて嫌いな生物学の教師がいつも止めている場所に車を止めて、思い手提げを持って学校に入っていく。

どこから途もなく、いや、そこら中から自分の事を話している声が聞こえる。

話してる内容までは聞き取れないがいつもの事なので分かる。

どいつもこいつも視線を俺に差し込んで、友達と仲良く時間を過ごす為に俺を使う。


「お前ら密になってんぞ」

吐き捨てる。


またしばらく歩き、手が痛くなる度に手提げを持つ手を入れ換えていた、そして目的の教室の前に着く、そして一呼吸、ドアを開けると物音に生徒達がこちらを見てくる。友達が来たのかと見てるのだろうが、入ってきたのが俺❲山本 央向❳だと分かるとあからさまに目を細くする。そしてまた彼らは隣と仲良くする。


「はぁ、俺の為に席までありがとな」


いつも俺は窓際の席に座る、一番左の一番後ろ

なんてことないいつもの事


が、俺は予想外のことがあり、立ち止まる。


「あん?」


俺がいつもの座っている席、一番端の席には既に俺の場所はなかった。


時期的に考査前で俺もテキストなり教材なり沢山もっているが、明らかにその倍近くの量の教材が積まれている、そしてその中に一人の女子生徒が座っていた。

実に座席四席分のスペースを占領していた。


しかし俺は一瞬戸惑いはしたが、臆せずに自分の普段の席に座る。

机の前に置いてあった教材?無言でずらした。

女子生徒の方も一切の反応を見せなかった。


「アッツいな、、」


俺もテキストを何冊か広げて準備をする。おもむろに手に取った一冊でバタバタと扇ぎながら悪態をつく。

基本的には教師や教室管理者以外はクーラーをいじらないように言われてる、そのルールが染み込んだ皆は同じように自分を扇ぎながら悪態をついているだけた。

俺は直ぐにエアコンのスイッチを入れて温度を24度設定から20度まで下げた。


何かのテレビで最初は窓を開けておいた方が冷えやすいとかなんとか聞いたから窓を取り敢えず俺の席の横の窓を開けて冊子に腰かけてバタバタと自分を扇ぐ。


そして不運なことに手から教材がすっぽぬけた、窓を開けてたことにより中にはに飛んでいく、


ビチャ 不快な音


「は?」


雨も降っていない最近、何故か水場に落ちた音か耳に入り目を見開く。

原因は植物に水をあげている生徒だった。恐らく食農の学部の生徒だろう。

向こうも気づいたのか、❲俺に❳明らかに不味そうな顔でこちらを見てくる。


「ったく、いいよ、気にすんな」


俺のイメージはどうなってんのか、、これに関しては100俺が悪いのに俺が怒るとでも思ったのか。


そして俺はびちゃびちゃになった教材が今から使う教科だと気づいた、当然乾かして使えるとかそんな状態ではない。

んで、もっと酷い事実に気づく。


机の上にさっき出した教材達を見る、手元にはグシャグシャの生物学  机の上には数学 バイオマス 無脊椎動物集 生物学


「生物学?」


さて問題、俺は進級時に間違って2冊生物学を買ったのか?

もういったくは隣の女子が授業開始5分前になり生物学の教材を探している様子、彼女のものか?


あと4分 いよいよ彼女はオロオロし始めた。

俺は胸が苦しくなってきた。俺は自分に何かをされることは余程じゃなければ気に止めないが誰かに迷惑をかけるのは絶対に避けたい人間だ。

俺ができることは一つ

(素直にあや╲╲╲)


「落としてるぞ」


訳あって久々の登校だったおかげで俺の生物学はほとんど記入されていない、名前も書く癖が昔からついてなくて未記入、

素っ気なく彼女に渡す。


「ありがとございます」


やや早口で彼女は返事をすると安心した様子で生物学を横に置き、また他教科の勉強を始める。



ガラガラっとドアが開き、外から教授が入ってくる。クーラーがついてることにやや驚いてる表情だったが俺を見ると直ぐに目付きを変えた。


「山本!テキストもなしに私の授業を受けるのか?」


死ぬほど嫌味を含めた言い方、また一つこの教室の人間への印象が悪くなる。


「話し聞いてボード見てれば十分なんで!」


「持ち物不十分だな、減点だな~」


職権乱用もいいとこだな、まぁいいか、別に一番になりたい訳でもない。


すると突然隣の山積みにしてた女子が立ち上がる。


「先生!私がテキストを忘れたのでこの授業の間借してもらおうとしてました。でも彼が減点されるのであれば返します」


!?


なんだ突然?何のメリットもなく知らない男をそれも俺を庇い出した彼女に言葉が出ない。


「なっ、石塚くん、そうか、なら減点はなしだ山本!」


「は?」


なんだ突然、この女子に弱みでも握られてるのか?と思ったが回りの反応もおかしい

なんて色々頭の整理が追い付いていないまま授業が始まってしまう。

すると俺に彼女が話しかけてくる。


「これ、私のじゃないよ」


不思議そうな顔で俺が渡した俺のテキストを返してくる。


「あなた、わざわざ失くした私に自分のをくれたの?」


「、、、、、」


返答に詰まる、そもそも学校で話しかけられるのはいつぶりか、、、

いやいや、今はそんなことよりもだ


「本当に申し訳ないんだけど、、」


ゆっくりと情けない姿になったテキストを前に出す。名前には[石塚 晴夏]と滲んだ文字が見えている。


「あ~、なるほどね、別にいいわ、解き終わった問題を眺めることに意味はないしね」


「いや、本当にごめん、それ、俺のなんだけどみての通りほぼ新品だからさ、あげるよ」


「あげるって、あなたは今後の授業どうするの?」


「こーするの」



手提げに広げていた教材を入れて、汚れたテキストは手に持ち、俺は立ち上がった。

授業中に立ち上がって荷物を持っている、そう、

帰る事にした。


「えっ!ちょっと、あなた、、と、図書館に来て!」


驚きを顕にながらも図書館に来るようにと遠退く背中に言葉を投げる。


駐車場に向かう。 荷物を置いてから行こうとか、そういう訳ではない。

普通に帰る。

薄情だと言われれば自覚はありますと返す。そもそもが[何時]なのかが分からない。あの授業の後なのか、彼女のスケジュールの最後なのか、これは自分への説得とも言える。


先に言っておくと特に急ぐ用事はない、なら授業が終わる位まで待っていればいいと言うだろう。

その通りです。


理由と考えは一応ある。

まず緊急性のある内容ではないだろう、少なくとも自分には、

そしてお互い学生で同じ学年で、今日同じ授業を一つ取ってることが分かった。

結論、[いつでも会おうと思えば会える]

彼女次第ということだ。


後日、

「石塚さんの転校に、、、、」


「マジか、、」


まさかの転校、それも今日、昨日の偉そうな自分の推測は大間違いもいいとこだった。

思いの外衝撃は強く、その後の話が殆ど入ってこなかったがどうやら海外の学校に転校のするらしい、所謂天才だ。


不幸中の幸いとしてお互いまだ他人のままだ、親友と仲違いしたまま、なんてドラマチックな話ではない。

石塚さんの記憶に一つ、申し訳ないが刺を刺しただけだ、そこまで深い話ではないだろう、酷い奴、と心の中でレッテル。張られるだけだろう。


いろいろ言葉にしたが本当に今更、申し訳ないと思う。


自分自身に小さな刺を刺した事に気付きながら階段を下りる。数札の特段重くない教材と手提げがやたらと重く感じる。


玄関を手前に声を掛けられた。


「女性との約束事放って何処へ行くのかしら?」


「え、、?」


知ってる声、わざとらしく怒ってる態度の女子生徒が凄い荷物と一緒に居た。



気が向いたら続けます

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