Sランク冒険者:ジャスVSケイジュ4
「待て!」
「『大樹操』」
森の陰に消えたケイジュは、森と一体化した。
ただそこに、佇んでいただけの木が急激に伸びだし、その侵蝕性を疑うほど、激しく畝っている…。
「1…2…3…4…5…今のところは、5本か…」
5本の木根が地面から吐出し、タコの腕見たく畝っているが…まだ統率を上手く取れていないようだ。
「今なら…!」
しかし…一瞬にして、すべての先端がこちらを向き、容赦なく襲い掛かってくる。
ジャスは、アネモネを強く握りしめ、1歩も引かず前に出る。
1歩…また1歩、地面を確かに踏みつけながら、アネモネを一振りする。
アネモネを使う感覚を取り戻し、集中する。
「ハア!」
ジャスは大きくアネモネを振るった。
斬撃が飛び、目の前に襲い掛かってきた根を輪切りにしていく。
しかし…、輪切りにされた根の断面から、即座に再生し、元の形へと戻る。
更に数回斬撃を飛ばし、根を全て切っていく。
「クソ!この根…、そのまま攻撃してくるぞ…!」
切られた根は、再生している途中にも拘らず、ジャスを狙い攻撃していく。
その攻撃は、息をする瞬間すら与える事無く、繰り返されている。
5本の根は、ジャスに切られては再生し攻撃、切られては再生し攻撃とするといった行動を繰り返している。
だが…5本の根だけでは、ジャスにダメージを与えられないと踏んだらしく、地面から更なる根を生やし、計10本に増えた。
「これを操作しているのがケイジュなのか…。クソ!本体は何処にいる。この木根は、切っても切っても再生するから攻撃しても意味がないぞ!」
斬撃を飛ばすだけでは、対処できなくなり、アネモネの剣身でも根を切りつけて行った。
アネモネ本体の切れ味は当たり前のように、すさまじく、大木の根をいとも容易く両断していく。
しかし、質には量で勝負だと言わんばかりに、地面から大量の根が出現する。
ジャスが切断した根も容易く再生し、そのまま攻撃へと転じてくるのだ。
あまりの本数に数えている余裕など既に無い。
ジャスは常に移動しながら斬撃を繰り出している。
止まってしまった場合、地面から吐出した根によって体を拘束されてしまうからだ。
「このままやっていても、埒が明かない…。ここら一帯の森を吹き飛ばすか…。いや…そんな事をしたら兵士の皆が、ただじゃ済まない。生憎…ケイジュは、僕にしか興味が無いみたいだ」
根は、全てジャスの方に集中している…。今の所、兵士の皆に向う素振りは見えない…。
「いや…アイツのことだ、殺し合わせた挙句、最後はケイジュ自身の手で無き者とするに違いない。なら、僕が奴を倒さないと…。でも…どうやって、この森中からケイジュの本体を見つけるんだ…」
――ケイジュが居るとするならば…、僕と人族、魔族を一望できる場所に居るはず…。でも…この近くでそんな場所あったか…。
ジャスに考え事すら行わせまいと、根の攻撃は止まらない。
「それにしても…この根、面倒くさすぎる!切っても切っても生えてくるし、当たったら痛いし、いつまで経っても追い続けてくる…!」
ジャスは、すべての根を切ること自体、不可能になっていた。
「く!」
左側方向から攻撃してくる、巨大な10本の根を切りつける。
その後、注意を右側方向へ移動させたのだが…、既に右側方向から10本の根が接近してきている事に、気が付いた。
…何とか腕でガードしつつも、根の振りぬく力によって、地面を数回跳ねながら、数10メートル弾き飛ばされる。
「グワァ!」
根に、弾き飛ばされ、空中を漂っている…、しかし損傷は少なく、頭自体は、今の所まだ働いている為、戦闘中にも関わらず、次の行動を考え始めた。
――どうする…どうする…、一度着地したら…。その後、今度いつ考えられるか分からない。考えられるときに行動しなければ成らない…。それは今だ…。今のはずだ…。
空中で回転しながら、態勢を整える。
しかし、根の先端は、僕を逃がそうとしない。
森の何処を走っても、ジャスが走った道に生え揃う木が…成長し、新しい根が地面から這い出し続けている。
言わば、ジャスに逃げ場は無く、この森全てが敵なのである。
「クソ!いったい何処に、これだけの魔力が!」
――おかしい…これだけの魔法、何度も使用していれば人の魔力量など簡単に使い切ってしまうはず…。それにも関わらず、ケイジュは何度この魔法を使用した…。それに加えて、未だ攻撃に移る根の数は、増えつつある。確かに、ケイジュの魔力量は人間にしては、とんでもない量だが…。それでも、『大樹操』を使える回数は、1回から2回程度が限界だろう。それ以上使えば、体がもたないはずだ…。
「何か原因があるはず…。探せ…、探すんだ…」
なるべく魔力の消費を抑えるため、逃げに徹する。
その際…、森中に有る、多くの物事を観察し、ケイジュの手がかりとなる物が無いか探る。
すると…、不可解な物を見つけた。
「何だ…鎧…どうしてここに?」
鎧が木へ、もたれ掛かるようにして、立て掛けられている…、元からその場に、存在していたかのようだ。
しかし…その光景が、あまりにも不自然に感じたジャスは、辺りを見渡すと…。
「鎧だけではない、剣…槍…弓…よく見れば、何故かチラホラと地面に散らばっている。どうしてだ…」
そして決定的な物をジャスは、見つけた。
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