Sランク冒険者:ジャスVSケイジュ2
「それにしてもこの揺れ…うっとおしいな」
ケイジュは、足を地面に叩きつける。
すると、地面の揺れが一瞬で収まる。
「何をした…まだ魔法の効果が残っていたはず…」
「ジャス…お前は勇者だが…魔法では俺に勝てない。お前がなぜ普通にしていられるのか、それは簡単。俺がお前に催眠を掛けていないからだ…、勇者とて俺の魔法は効くだろうからな」
「やってみればいい!だが、僕はお前の姿形を間違えたりしない。それが勇逸『無限催眠』の弱点だからだ。例え、僕に催眠を掛けたとしても、お前に催眠を解かせればいい…だけの事!勇者の僕にとっては造作も無い」
「へえ…簡単に言うじゃないか…ジャス、君にそれができるのかな?」
――いまこうやって話している間にも多くの者が訳の分からぬまま戦い続けている。早くケイジュに催眠を解かせないと。
「フ!」
――先手必勝、奴を拘束し魔法を解かせる!
ジャスは、身が見消えるほどの速度でケイジュへ速攻を仕掛ける。
「おいおい…まだ話の途中だろ…そんなに急ぐなよ!」
ケイジュは、ジャスの攻撃を読んでいたかのように、最小限の移動で回避し、親指と人差し指でジャスの剣身を摘まんだ。
「く!」
剣を薙ぎ払い、ケイジュとの距離をとる。
「魔法は、あんまり得意じゃないんだ…『身体強化!』」
勇者自身が『身体強化魔法』を発動させ、その身は淡く光り出す。
「勇者が『身体強化』…いったい、どれほどの力なんだろうな…」
ケイジュのだらんとぶら下がった手が、ジャスの方を向く。
「今…お前に味合わせてやる…」
ジャスは、剣を鞘に納めてしまう。
「何だ…その剣は使わないのか、せっかく王家の秘宝を味わえると思ったのに…」
「拳で十分…行くぞ!!」
地面が割れ、肌で感じるほどの魔力…空気が今まで以上に重くなり、喉を詰まらせる。
「ふ~ん…楽しませてもらえそうだ…」
「フ!」
「お!はっやい!」
ジャスの放った拳は、確実にケイジュの死角を突いたものだったが、ケイジュは容易にかわす。
そのまま蹴りへと移行し脇腹を狙うが…ケイジュは身を翻し、この攻撃も回避する。
「当たったら痛いだろうな…その攻撃。俺…死んじゃうかもな…昔のお前がやったように…」
「黙れ…今そのことは関係ない」
「そうだな…関係ないな…勇者の力が暴走して村の殆どを皆殺しにしたなんて…。今の戦いには全く関係ない。ほら、どうしたまだ一発も当たっていないぞ~」
――落ち着け…奴の挑発に乗るな、自分のペースを保て。
「ふ…」
「何だ…つまんねぇ」
剣を使えば…奴を倒せるかもしれない、しかし…僕のやるべきことは、ケイジュを殺す事じゃない。
この魔法さえ止められればいいんだ。
ケイジュのように殺戮を目的にしてしまっては…僕は人間でいられなくなる。
僕は一生…彼女の前に身を現せなくなってしまう。
「ケイジュ…もう一度言う、この魔法を解け。そして魔族の総司令を捉えるんだ。そうすれば、この戦争も終わる」
「………」
「どうした…答えろ」
「…………嫌だな、そう言うの…何だろ、何だろうな…面倒だ…面倒くさい…面倒で仕方がない…」
「おい…何を言って!」
――何か怖気を感じる、何かする気だ。今こいつを拘束しないと!取り返しが付かない!
『ドツ!!』
地面を割り、推進力へと変え、一瞬でケイジュに近づき、拳を叩きこむ。
しかし、ケイジュの鳩尾を完璧に捉えたはずなのだが、当たっている感触が全くない。
当たっているにも拘らず、拳がどんどんケイジュの体に飲み込まれてゆく。
拳を思いっきり引き抜き、額に向って、体の外から大きく回した蹴りを叩きこむ。
だが…ケイジュの顔が影のように消え、ジャスの攻撃は、ケイジュに当たらなかった。
明らかに人の肉体を其処に留めている状態ではない。
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