Sランク冒険者:カインズ12
「よし…これで動きやすくなった」
「あ…あ、せっかく開けたのに…塞がった…まぁいいやもう一度開ければ、いいだけだから…次は何処にしよう…」
――なんていう圧だよ…。こいつの攻撃は弓だろ…遠距離の方が得意なんじゃないのか。これだけ近いと、矢を引く動作が隙になるだろ…
「カインズさん!私たちのことは気にせず逃げるんだ!私たちを庇いながら戦える相手ではない!」
ミーナとアランは既に疲弊しきっている。
今真面に動けるのはカインズただ1人…確実に逃げられる保証は無い、この2人を囮にすれば逃げられる可能性は高くなるだろうが…カインズにそんな考えは微塵もなかった。
カインズの魔法の袋には残り7つの魔石があり、2つを2人の獣人にさりげなく渡す。
――残り4つ+1…魔力はあまり残っていない…。それに、僕はこの魔石以上の威力を出せる高火力の魔法を放つことが出来ない。接近戦だって『身体強化』が無ければ人並以下だ…。目の前の魔族に攻撃を与えられるとしたら、魔石による爆撃しかな…く!
考えをまとめている最中、魔族はいきなり矢を放ってきた。
予備動作など無くいきなり矢が飛び出してきたように見える。
――今回は、威力ではなく速度重視の攻撃か…それとも次の攻撃に移るための陽動か…それにしても早い!。
何とか身を捩じりながら回避するも、矢はカインズの右頬を掠め、傷口から薄く血が流れる…。
――外した…いや、わざと外したのか。いつでも殺せるといった意思表示か…憎たらしい。今分かった事として…動かずに考え続けていたら、すぐ殺される。動きながら考えろ…!。
「ふ!」
カインズは地面に魔石を叩きつけ、煙幕として使用する。
爆発により爆風が発生し、地面から土煙が舞う。
空中に舞い上がった土煙は優に4ⅿを超え、カインズ達の姿が土煙の中へと消える。
「煙幕…へぇ…で?…それから…どうするの…」
――魔族は特に警戒もせずその場に直立している…周りの視界が悪いというのに。視界を奪られるという行為は、弓を使う者にとって最も嫌な行為のはずだろ。何で動かない…。逃げるか…いや、今ここでこいつを倒さなければ…。どう考えてもこの先、人族の天敵になるのは間違いない!
カインズは先ほど付き刺した剣を手に取り、魔族目掛けて思いっきり投げる。
土煙の中に剣が投げ込まれ、剣身の輝きを覆い隠した。
しかし…魔族はその攻撃を予測していたか如く、最小限の動きで回避し、投げ込まれた剣は魔族後方の地面へと再度突き刺さる。
カインズはそのまま攻撃の流れを止めずに、2つ目の魔石を投げ込む。
魔石が魔族の目の前に飛んで行く。
魔族の目前に投げ込まれたのを確認したカインズは、魔力操作によって魔石を起爆させようとするが…。
「何だ…光…目障りだな…」
魔族はその今にも爆発しそうな魔石を手で強く握る。
――馬鹿なやつだ、そんな至近距離から食らったら、ただじゃ済まないぞ…。頼む、これで終わってくれ…。
カインズの魔力操作により、魔石は起爆された…。
しかし…何時も聞こえるはずの爆発音が聞こえない…。
魔族の手中から、黒い煙が立ち上る…。
どうやら、爆発はしたらしい…、したらしいが…魔族の手に傷らしき傷は付いていない。
――マジかよ…素手で魔石を掴んで無傷とか…他の魔族兵なら数人は吹き飛んでるぞ…。それだけこいつと他の魔族には大きな差があるのか。しかも、これは相当まずい状況だ…。普通の魔石じゃいくらぶち込んでも効果は薄い…。こうなると必然的に方法は絞られるな…。…あの獣人たちは何とか逃げ切れたか…魔石を渡したから多少は動けるようになっているだろう。――今回は助けられたかな……。
最初に起こした煙幕は晴れてしまい、その場にはカインズと魔族の2名だけが静かに留まっている。
「何が目的だ…どうして人族の国を責める…」
「はぁ…知らないよそんな事、王が…行けと言うから…来ただけ…別に、人族なんかに興味は…無い…」
――何か1つでも情報を聞き出せたら良かったんだが、こういうタイプか…。
「名前はなんだ…」
「名前…名前は…さぁ…何だったか…覚えてない…そもそも…興味がない…」
――名前も聞きだせないか…無駄死にだけは避けたかったんだけどな。
カインズは走り出す。
自身に残っている魔力をすべて『脚力上昇』に使い、人とは思えぬ速さで魔族に向かって一閃する。
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