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巨大な魔法陣

夜明けから進行を始めた王たちは既に、前線付近まで接近している。


崖の上で羽を休めていたリチアは、王の進行を確認すると、崖から急降下し地面すれすれで急上昇する。


上空に上がる際は急降下するよりも格段に早く、他者が目で追うことは不可能であった。


地面からの高さを考えながら、リチアは前線付近を飛び魔族軍の注意を引く。


すでにリチアは前線に刺さっている黒い羽のことを王に話していた。


「前線に刺さっている黒い羽は一定の振動が加わると数秒後に大爆発をお起こすから、引っこ抜いてすぐ敵陣に投げ込む。それが私たちに対する作戦実行の合図とする。これでいいかしら」


「そうか…了解した」


そして夜明けから数刻…ついに王は前線まで赴いた。


「良いか!魔族軍は前線の奥!森の中にはびこっておる。魔族は誰一人も残さず八つ裂きにするのだ!兵士よ、黒い羽を抜き!敵陣に投げ入れよ!」


初めは撥ねるように歩いていた馬が…王の手綱により4つ足の回転数が上がっていく。


後ろについてきている兵士たちも次第に歩きから走りに変わり、目指すのは敵陣地ただ1点のみ。


王は前線を走り抜け、兵士たちは黒い羽を抜き取り、魔族軍側へと投げ入れる。


リチアの黒い羽は人の力であっても相当な飛距離飛び、森の中で大爆発が起こる。


木々が吹き飛び、地面が露出した。


所々爆風により抉れ、クレーターが生まれているが、作戦に支障はない。


「よし!進め!!!!」


王は光に照らされる剣を掲げ、突き進む。


「爆発が起こった!始まったんだ…よし!行くぞ…」


ジャスは今、王率いる軍の左翼側後方の森中にいる。


ジャスは爆発音を聞き、森を全速力で走り出す。


リチアは上空で旋回しているだけだったが…魔族軍の行動で不可解な点を見つけた。


「何あれ…。多くの魔族が集まって…魔法陣、まさか!!」


森の奥深くそして山の山頂付近に巨大な魔法陣を発見してしまったのだ。


既に魔法陣が淡い光を放ち始めている。


「あれだけ巨大な魔法陣…絶対にいい事ない…。しかも、もう詠唱が始まってる…ク!」


リチアはアランの言っていたことを破り、魔族軍目掛けて猛スピードで飛んで行く。


風を切り、残像が見えそうなほど早い。


「――空は黒く成りて…強風が吹き荒れんとす…黒雲立ち込めて…雷撃を欲す…天を欲する我が力、――神のみ心を今ここに権限せよ…」


魔族軍が集まり、地面に描かれている巨大な魔法陣がさらに眩い光を放ち始める。


「あれは何としてでも阻止しないと!」


自身の羽を毟り魔族目掛けて投げ込む、しかし銀羽はとある壁によって堰き止められる。


「魔障壁!いったい誰が!こうなったら自力で突破するしか!!」


魔障壁に突き刺さり空中に浮かんでいるように見える銀羽が威力を失い地面へと漂いながら落ちて行く。


リチアは詠唱を行っている魔族のもとに高速で飛んで行くが、魔障壁に食い止められる。


「ぐ!!何この魔法壁!普通の魔法壁じゃない!私の攻撃でもビクともしないなんて…まさか…!」


リチアは何かに気づいたようだがその時にはすでに遅く、地面の魔法陣が赤紫色に光り出す。


障壁内は赤紫色の光に包まれ、その光景は魔族軍、人間軍どちらもその光に目を捕らわれている。


空よりも明るく、森の闇よりも深い光が天高く伸びる。


光は天を突き抜け快晴だった空を黒く染めていき次第に雷雲を生成した。


それと同時に強風が吹き荒れ、木々が悲鳴を上げている。


「こ…これじゃあ自由に飛んでいられない…」


リチアは強風にあおられ、自身のコントロールを失失い、一瞬パニックになるが冷静さを取り戻し風に乗る。


「とりあえず…低い所へ」


リチアは旋回し、体制を立て直そうと試みるが…


その時!


「ぐ!!」


リチアの右翼を強烈な痛みが襲った。


「しまったぁ…」


右翼は何者かに撃ち抜かれ、大きな穴が開いている。


銀羽は焼け焦げ、美しかった銀翼は見る影もない。


「これじゃあ、真面に…飛べ」


真っ逆さまに落ちて行くリチア、重力により勝手にスピードが上がっていき、このまま地面に衝突すればただでは済まないだろう。


「このままじゃ…確実に死ぬ。でも、この大きさの穴が空いてたら飛ぶことはもう難しいな…いや、飛ばなくても良いか…」


リチアは、自身の羽を最大に広げ多くの風を受け止める。


右翼は大穴が開いており風邪を受けにくいが、そこはさすがSランク冒険者だった。


リチアはすぐさま対応し、右翼の穴を考慮し風に乗る。


羽ばたくよりもスピードは落ちたが、急降下していたスピードをそのまま載せている為、移動には問題なく滑空している。


「ふ~、危なかった…それにしても。私の大切な羽をこんな有様にしちゃうなんてどこのどいつよ…。でも…どうしてあの時、私本体じゃなく羽の方を狙ったの、まさかワザと…。いや、そんな訳ないあれだけの強風が吹いている中私に上手く当てられるはずが…ないわよね」


リチアは滑空の際風を余分に受け次第に高度を落としていく。


「――そんなに逃げるなよ…。リチア・ストレ…お前に殺された同法の恨み…。しかと受け取てくれ…」


森中に魔力で作られた弓を持つ魔族が1体。


身長体系は他の魔族と比較するとだいぶ貧相である。


魔族特有の茶色い肌に黒い髪、頭に生えた2本の角、黒く染まったその眼には力が入っていない。


その為か瞼が垂れ下がり、何処か眠たそうに見える。


しかし、リチアを狙うその視線は対象から微塵も逸らさない。


「ふ~…」


弓を構え、魔力で出来た弧をゆっくりと引いていく。


すると…弓の握りと弧の間に電流が走り始める。


…弧を引ききるころには電流が矢となり、周りの空気を震わせ、電流が発する轟音を強風がかき消し、紫電色の光だけがその場に留まっている。


「その命…貰うぞ…『サンダーアロー』」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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