王の作戦
「王様…後方に引いたのは良いものの、このまま行くと王都まで一直線ですよ」
怪我の治療を受け、大分傷の癒えたジャスは椅子に座りながら王に意見を聞いた。
「分かっておる、王都に近づいたのは退避するためでもあったが、他にも理由は有るのだ」
「理由?」
ジャスは手を顎に当て考える…
「ギルドですね…」
ジャスの答えに、口角を少し上げ、王は話し出す。
「そうだ、ギルドに兵士の要請を出す。それに、Sランク冒険者を集めるのだ。このまま引いてばかりでは勝てぬ」
「確かに、今の状況を鑑みるに、それが一番の得策かもしれませんね。では、僕はギルドへの要請が終わるまで、ここら一帯を監視します」
ジャスは立ち上がり、立て掛けておいた剣を手に取ると左腰へ鞘を固定する。
「そうしてくれ、わしはもう少し作戦を考える。兵士の命と国民の命をできるだけ残すやり方でな」
「分かりました…僕も、兵士の命と国民の命を守ることが責務です。僕にできる事をできるだけやらせていただきます」
そしてジャスはその場から離れた。
その雰囲気は戦争が始まった時より相当変わっている。
白から黒になるように反対の色になるのではなく、近しい色に少量違う色を混ぜたかのような変化だ。
「この状況で旧友に助けを求めるとは…何とも情けない王じゃのう…。魔導士はおるか!今すぐギルド長へつなげ!」
王都国内ギルド本部
「こんな時になんだ!住民の避難やら、悪人の始末やらで忙しいんだが!それよりも戦争はどうなんだ、勝ってるんだろうな!」
王は深刻そうな口調で話を進める。
「聞いてくれ、我が友よ…このままでは人族は負ける」
「は!何言ってやがる。そっちには『勇者』がいるだろうが、ギルドからいきなり引き抜きやがって、そのせいでどれだけこっちの利益が下がったと思ってる!ジャスは5人しかいないSランク冒険者なんだぞ!」
「そのジャスが失敗したのじゃ…ジャスの心は優しすぎる。あ奴では魔族に勝てんだろう」
「いや…しかしな…ジャスで勝てないとなると…他のSランク冒険者を集めて何とかなるかどうか…」
「頼む、今すぐ派遣できる冒険者とSランク冒険者をこの場まで派遣してくれ。このままではいずれ王国…王都内が地獄になる…それだけは何としても避けなければならない」
「お前がそこまで言うのならそうなんだろう…分かった!出来るだけのことをする、待ってろ!」
「助かる…やはりもつべきものは友だな…」
「チ!だまってろ、気持ち悪いな…」
「わしにそんなことを言えるのはお主だけだ」
「こっちはあんたの尻拭いを何度やってきたと思ってる。今回もそれと同じだ。今冒険者たちに一斉に連絡した、のちにSランク冒険者が向かうはずだ。ただ、フィーアだけは向かえないらしい、自国を守らなければならんそうだ」
「やはりギルト長…仕事が早いな。感謝する」
「ただ気を付けろ、Sランク冒険者は確かに強いが…頭の方が少し行かれている部分がある、特にケイジュの奴が頭一つ抜けて狂ってる…上手く使えばジャスよりも優秀だろう…しかし、ケイジュは気分屋だ…気を付けろ」
「忠告感謝する。では、わしは作戦を考える。ギルド長は住民の避難を急いでくれ」
「分かってるよ。人族が負けそうだっていうのに、しかし…何処に避難するか…」
「東国へ向かわせろ…あの国は一応人族だ、同胞ならば匿ってもらえるはずだ。それに、東国の王とは顔馴染みなのでな、わしの名を言えば、門を開けてもらえるだろう。少しでも多くの国民を東国へ!」
「了解した。王国内にいる国民に今すぐ、東国へ向かうよう指示する」
「ああ、頼む」
王は連絡を終えると、作戦を練るため兵士を数人集め基地に身を隠した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
毎日更新できるように頑張っていきます。
よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。




