プロローグ 2「Re:xx13」
「あの時…どうして私は…。私は何故、あの場所に居なかったのか…。どうして、私は…。あの場所に私が居れば…変わっていたのか…いや、もう試したはずだ…何も変わらなかった…。私が居ても、何も変わらなかった…変わらなかった…変わらなかったんだ…。何故だ…、どうして…私が居ても…何も変わらないんだ…」
ヘイへは小さく…そして大きく足を踏み出し深く降り積もった雪に入り込む。
――足先の感覚が鈍い、痛みを感じなくなったか…
ここまでの道のりで足の指先はとうに腐り果て、黒く変色している。
足先に力が入らず、幾度として雪に顔から倒れ込む。
その度、魔剣を地面に突き立て衰えた右腕の力で立ち上がる。
ヘイへが歩いてきた道は既に雪によって埋まり、竜の死体は雪山へと変わっていた。
降り続く雪は灰のように深々と降り続ける…神が現実を突きつけるが如く…。
――顔の半分が動かない…触ってみても感覚が無い…、すでに片目も見えなくなってきた。
今まで見てきた幸せが…今まで受けてきた絶望が…黒く濁った眼に焼き付けられている。
――何度体験しただろうか…何度味わえばいいのだろうか…、死にたいと思えば思うほど…幸せが舞い込んでくる…。幸せだと思えば思うほど…絶望がすぐそこまで迫ってくる…。
「ラーシュ…。ミーナ…。フリジア…。」
『……メイ……』
既に枯れ果てている涙は…出るはずもなく…頬に付着した雪の結晶が残りの体温を奪い…液体へと融解した。
目頭に雪が積もり、黒く…そして灰色に染まった右目から融解した液体が赤黒く塗りたくられた頬に一筋の黒線を浮かび上がらせる。
もう歩けないと…思えば思うほど、体は止まるのを拒絶した。
「――ただの幸せを…ただの喜びを…奪ったあいつだけは…あいつだけは!!!」
『――殺す――』
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