2人のエルフ
「ここが良さそうね…」
「うん!そうだね」
大きな木が生い茂り、葉と葉の隙間から光が差し込む。
何とも自然が美しい場所だ…
気温は少し低く、風は無い。
葉と葉の擦れる音さえ聞こえず、時間が止まってしまったかのような感覚を覚えた。
「それじゃあ、この木の板を投げるので交互に撃ち落としてください」
「了解」×2
「それではまず、フィーアさんから…」
『ふっ!』
僕の投げた木の板は上空に綺麗に上がった。
フィーアさんは僕が投げてから矢を引き、すぐさま放つ。
矢は木の板に吸い込まれるような軌跡を描き板の中心に突き刺さる。
「さすが、おばさん!」
「これくらいできないとね」
「それでは次に、フリジア」
僕はまたも同じように上空に木の板を投げた。
フリジアは既に弓を引いており、標準を合わせ、矢を放った。
スピードとパワーはフィーアさんの上を行っている気がする。
木の板が真っ二つに割れ地面に落ちてくる。
「これくらいの威力があったほうが、敵も倒しやすいでしょ!」
そこからは長かった。
僕がどんな所に投げようとも2人のエルフは全く外す気がしない…
「そろそろ、板の枚数を増やしますか…2枚で行きましょ」
フィーアさんがそう提案するが…
「いや…4枚で行こう」
フリジアはフィーアさんの提案の2倍の枚数を提示したのだ。
「へ~、いきなりそんなに枚数を増やして大丈夫かしら」
「さっきまでのは準備運動でしょ…」
2人の顔は既に勝負師の顔をしていた。
射貫かれる相手が僕だったら…すでに何回殺されているのか…想像しただけで恐ろしい。
僕は木の板を4枚持ちそれぞれ違う方向に投げる。
風邪は無い、板は回転しながら飛んで行く。
フィーアさんは余裕の表情ですべて射貫き、フリジアも負けじと、4枚打ち抜く。
その後も枚数を増やしていくが…外す気がしない。
「はぁはぁはぁ、さすがフィーアおばさん。全然軌道がぶれない…」
――フリジアは相当辛そうだな…あれだけの枚数を撃ち抜いてるんだから仕方ないか。更に外したら必ず負けるという緊張感がフリジアの体力を削っているのだろう。それに比べ、フィーアさんは汗の一滴も掻いていない。これが経験の差なのだろうか…。
「ここまでにしましょう。その状態で行っていたらフリジア、あなたの指の傷が悪化するでしょ」
見たところフリジアの指には傷を手当てした様子がある。
「大丈夫!私はまだやれるから!」
フリジアは大きな声を出して主張するが…
「ダメよ、自分の限界を知ることは大切なことなんだから。自分の実力を見誤って位はいけない、それで死んでいった者たちを何人見てきたと思ってるの」
可愛らしい見た目からは想像もできないほどの説得力と威圧感のある恐ろしい眼をしていた。
それほど今のフリジアのことを思っているということなのだろう。
「うう…」
「分かって…フリジア、貴方の為でもあるの。貴方はまだ幼すぎる」
「幼すぎるって…フリジアとフィーアさんはいったい何歳な…」
僕が歳を聞こうとしたとき、両耳の傍を矢が通った…僕の両耳を掠め、真後ろの木に突き刺さる。
「ヘイヘ君…女性に年齢を聞くのはご法度だって教えてもらわなかったの?」
「何で私の年齢が気になったのヘイヘ?」
2人は僕の方を向き次年齢を聞いたら『その頭を撃ちぬくぞ!』と言わんばかりの剣幕を僕に放つ。
「は…ははは…おお二人とも…お美しゅうございます…」
――こんなところで似なくてもよかったのでは…
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
毎日更新できるように頑張っていきます。
よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。




