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Re:フレンドワーズ ~家名すらない少年、ディストピアで生きていく~  作者: コヨコヨ
終わりから…始まり:ヘイヘ少年偏
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新生活(2)

 この村の名前は、『()()()()』といわれている。


 昔、ルーツ村は冒険者たちがこの村付近の調査を行った時のベースキャンプが大きくなった村らしい。


 ルーツ村の名前の由来は、この辺りを冒険していた冒険者の名前が『ルーツ』という名前だったからだと父さんから聞いた。


「お兄ちゃん、今日は、二アータウンに行くんだよね?」


 メイは未だにジャモとサモを食しながら言う。


「そうだよ。ニアータウンに冒険者ギルドがあるらしいんだ。冒険者ギルドに登録してお金を少しでも稼ごうと思う」


 冒険者ギルドなら、子供でも働くことが出来る。


 子供に支払われる金額は少ないが、ちょっとした雑用や、お使いなどでお金を稼ぐことができるはずだ。


「じゃあ、私は畑の手入れをしてくるね」


「ああ、頼んだよ」


 メイはこの一年で畑仕事を一段と頑張るようになった。


 畑の規模を子共二人で手入れができるほどにまで小さくし、ジャモとサモを確実に育てられるようにしたのだ。


 そのおかげで多少なりとも、日々の生活に余裕が持てるようになった。でも、ただ生活してるだけではだめだ。


 一〇歳になったら王都へ行って学園に通うのが貴族やお金持ちの普通なのだが、平民にはそれが難しい。


 ものすごく優秀な生徒または、大量の補助金を出すことができるなどの条件がないと平民は学園に通うことができない。


 そのため、貴族と平民の間に埋めることが難しい溝が存在している。


 でも、僕は諦めていなかった。


「メイだけでも学園に通わせてやるんだ」


 僕は、父と母の代わりにメイを学園に通わせてやりたかった。


 昔、父と母は何かの縁で学園に通っていたらしい。何処の学園かは知らないけど、ただ学園に行ったことを良く僕たちに自慢していたのだ。その為、父と母も僕たちを学園に行かせたいと思っていた。


 でも、父と母はこの世にいない。


 僕が学園に行くことはできなくなってしまったけど、メイだけでもなんとか学園に行かせたい。


 僕はメイを学園に通わせるために大量の補助金が必要だった。


 補助金は約金貨一〇○枚、平民の大人の男が一年働いて金貨一〇枚ほどだとダルさんが言いていた。


 つまり、大人の男が一〇年間お金を全く使わず、貯め続けた金額と同じ金額を子共の僕が貯めなければならない。


 メイは六歳になった、あと四年で金貨一〇○枚貯めなければならないのだ。


 不可能だ! という人もいるだろう。でも僕は、メイに良い人生を送ってもらいたい。ただそれだけなんだ。


「ぐずぐずしている時間はない。少しでも多くのお金を稼がないと……」


 僕は数時間かけて、ニア―タウンへと走った。


 ニア―タウンに着いた頃、僕はへとへとになってしまった。


「まさか、こんなに遠いとは思わなかった……」


 朝方にルーツ村を出たのに、ニア―タウンについたころ、もう昼間になっていた。


「へいらっしゃい! 東国原産の、おにぎりだよ! もちもちした触感とほのかな甘みが癖になるよ。腹持ちがいいから旅のお供にお勧めだ!」


 一通りが多い道でよくわからない食べ物を売っている人がいた。


 身なりはニアータウンの人たちと一風変わっており、赤、黄、黒の三色が使われた丈の長い服。帽子や屋台も赤い。


 煉瓦造りの建物が多いニアータウンと雰囲気が全く合っていない。明らかに浮いている。


「変わった食べ物を売ってるんだな……」


 その屋台は道行く人たちの目に入っていないのではないかと思わせるほどに、売れていなかった。


 でも僕は、それが逆に気になってしまった。


「すみません、このおにぎり一つください、銅貨一枚ですよね」


「え、なんていった?」


「おにぎりを一つください!」


 僕は同じことをもう一度大きめの声で言った。


「う……うう、」


 屋台のおっちゃんはいきなり泣き出してしまった。


「ど、どうしたんですか?」


「いや、東国から、地元の料理を出そうと思って『家族にいっぱい稼いでくるから』といったにも拘らず、今まで全く売れずにいたからよ。うれしくて仕方なかったんだ」


 おっちゃんも、家族のために頑張ってたんだな。


「お前さん、良かったらおにぎり五つくらいもらってくれ」


「い、いやそんなにいただけませんよ」


「いや、これは俺の気持ちだ。俺の見立てによりゃ、お前さん、めちゃくちゃ疲れてるだろ。おにぎりは疲れた体にめちゃくちゃ効くからよ、受け取ってくれ」


 僕はおにぎりを包んだ葉を強引に渡される。


「わ、わかりました」


 まさか得体のしれない食べ物を、一つ買ったら、四つおまけとしてついてくるなんて。


「うまかったら、また買いに来てくれ」


 おっちゃんは手を大きく振りながら見送ってくれた。


「そ、それじゃ」


 ーーまさかこんなにもらえるなんて、おいしいのだろうか? どこか座れる場所で食べよう。


「は~、なんかすごく元気なおっちゃんだった。まぁ、でもこれで、メイへのお見上げはできたな」


 メイも昼食を得ているところだろう。


 僕は、おにぎりを一つ手に取り、初めは小さく一口、二回目は大きく一口。


「これ、めちゃくちゃうまい……。小さな粒が一つ一つしっかりとした弾力で、噛めば噛むほど甘みが出てくる。ほのかに塩が利いていて疲れた体に染み渡る感じがする。この一年間ジャモとサモばかり食べてきたからかもしれないけど、食べ物で初めて感動してしまった」


 なんでこんなにおいしい食べ物が売れてないんだろう。


 僕は思うがまま食べ進め、おにぎりを一つ一気に平らげた。


「一つで十分満腹になるな、腹ごしらえも済んだし、冒険者ギルドに行ってみよう」

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