ヘイヘの判断
「フィーアさん…僕、決めました」
「え…き、決めたって何を…」
「僕…獣人の国に向います。」
「!」
フィーアさんは「さっきの話を聞いていた!」と言った様な、ものすごく驚いた顔をしている。
「何言ってるの!さっきの話聞いてた!今、ヘイヘ君が行ってもどうしようのないの!例え、人族が負けていなかったとしても、あんな噂が流れるということは、優勢とは考えづらい。しかも、よりによって獣人の国に行くって…」
――やはり…「さっきの話聞いてた!」って顔してたんだ…
「フィーアさん、心配しないでください。僕は戦いに行くんじゃありません、確かめに行くんです!」
「確かめに行く…それなら私が行った方が確実でしょ。ヘイヘ君には危険すぎるわ!」
――フィーアさんのいう事は最もだ。今の僕が獣人国に向っても出来ることなんてたかが知れている。それでも…
「フィーアさん、右手に持っているそれを貸してくれませんか?」
「あ!そうそう、話に夢中で忘れてた。はい」
フィーアさんは右手に持っていた僕の魔法の袋を返してくれた。
「その魔法の袋…エルツさんから貰ったの?」
「はい…辞めるときにお祝いとしてもらいました…確かこの中に」
僕は魔法の袋の中に手を入れる。
空間が広すぎて中々見つからない…腕を大きくかき回すようにしてみるとお目当ての物が手に当たる。
「ありました!これです…」
僕の右手にはアランさんから貰った腕輪が…貰った時の状態で出現している。
「それは…獣人族の腕輪。どうしてヘイヘ君が…」
「とある獣人の方にもらいました…戦争が終わったら遊びに来いって…」
「獣人族がそんなことを…」
「この腕輪があれば、僕は獣人国に警戒されることなく入ることが出来るはずです。この腕輪をくれた方に会いに行って現状を聞いて帰ってきます」
「でも…やっぱりそんな危険なこと…ヘイヘ君にやらせる訳には…」
「フィーアさん!フィーアさんには、エルフ族の人たちを守れる力があります!今は万が一に備えてエルフ族の守りを強化する方が得策なんじゃないですか。それを指揮するのはエルフの中で最も強いエルフにしかできないと僕は思います!」
「それは…」
「心配しないでください。僕はこう見えて隠れるの上手い方なんです」
フィーアさんは納得していないような顔だった。
「分かった…ただし条件がある」
「条件?」
「必ず、半年以内に戻ること…それと、定期的な連絡をすること。これが守れるなら、私はヘイヘ君を信じてみる」
「フィーアさん…ありがとうございます!」
「連絡方法だけど…これを」
フィーアさんは綺麗な羽を僕に渡してきた。
「これは『伝鳥の羽』この羽に魔力を込めて頭の中で伝えたい相手、場所、ことを思い浮かべる。すると、羽が魔力を吸って鳥の形になり伝えたい相手の元まで届くの…この羽をヘイヘ君に数枚渡す。3日に1回、この羽を私に飛ばしなさい」
「分かりました」
「本当は行かせる気なんて無かったのに…どうしてか、あなたなら大丈夫だって気がしてしまうの…」
「フィーアさん…僕は大丈夫なのでメイをよろしくお願いします」
「分かってる…ヘイヘ君の力は思う力だものね、私が何としてもメイちゃんを守って見せるわ。でも、出発する前にしっかりと話し合っておきなさい。それとフリジア…貴方はもっと気配を消す練習をしなさい」
「え?」
すると、扉が開きフリジアが現れた。
「あちゃ~、バレてたか…」
どうやらドアの外で盗み聞きされていたようだ。
「私も行く!」
「ダメです!」
フリジアの声とフィーアさんの声が重なりあう。
まるで、フィーアさんはフリジアの言うことが分かっていたかのように。
「どうして!私だって役に立てます!」
「フリジア…貴方にまで危険を強いることはできないわ。スージアに申し訳が立たない…」
「お父さんは関係ないでしょ!」
「関係は有るのよ…貴方のお母さんの事で…」
「え?どういうこと…」
フィーアさんはそれ以上言わなかった。
「とりあえず、絶対ダメ!分かった!」
「う…それなら、私と勝負して!フィーアさん…いや!おばさん!」
「お…おば…勝負?」
フィーアさんは、おばさんと言われたことのショックと勝負という訳の分からないダブルパンチを食らい頭が混乱しているようだ。
「そう!私の弓とおばさんの弓どっちが多くの的に当てられるかっていう勝負!魔法は無しで!」
「へ~言うようになったじゃない。いいわ、受けてあげる。ただし、負けたら私のいう事を聞いてもらうから」
――多少…いや、大分切れ気味のフィーアさんはすんなりとフリジアの勝負を呑んだ。
「うん!分かってるよ!」
――どうしてこの世界の人たちは…こう…何かを決めるとき戦おうとするんだろう。
僕は両方の弓裁きを見てきた。
素人の眼ではどちらも凄く上手く見えるのだが、経験値の差ならばフィーアさんの方が圧倒的に上だろう。
しかし、フリジアの力も僕は知っている。
僕の体を正確に射抜いてきた正確さには今でも体が恐怖心を覚えているのだ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「うん!負けないんだから」
「ヘイヘ君は審判をお願い」
「は、はい…」
――僕に審判などできるのだろうか…
フィーアさんとフリジアは森の中にある少し開けた場所に来た。
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