傭兵の藻屑
「大樹の傭兵達よ…あなた達の守る大樹は今正常な状態に戻りつつあるわ。免疫機関であるあなた達は今…この瞬間にも無駄に大樹のエネルギーを奪っている。この私があなた達の魔力を大地に還元してあげるわ…。フリジアの攻撃もその歳にしては中々頑張ったけど、もっと修業を積めばこんなこともできるのよ…『レイア-ストーム』」
フィーアさんは矢を真上に打ち上げると矢は一瞬にして拡大し、矢を中心として森全体の風が流れ込む…。
僕たちを取り囲んでいた傭兵たちはどんどん風にのみ込まれ、遥か上空まで巻き上げられたのち一点に集められていく。
その真下にはフィーアさんが立ち、青い空を眺めながら笑顔を見せる。
「さっきの矢で周りの傭兵全てを上空の一点に集めるなんて…」
「まだまだ…最後の仕上げをしなくっちゃ」
フィーアさんは腰から矢を一本取りだすと弦を引き始めた。
「今度は矢を使うんですね…」
「その方が効率、良いからね…攻撃の場合!」
弦を引きながら呪文を唱え始める…すると矢は一瞬にして火に包まれた。
「さぁ、傭兵さんたち…木の藻屑となる時が来たのよ…『フレイム-アロー!』」
燃え盛る一矢を傭兵が集まる一点に目掛けて放つ…
一矢は周りの風を利用し、さらに燃え盛っていく。
傭兵たちのもとに届いた際にはその大きさは数十倍に膨れ上がっていた。
「周りの風が…火を大きくしている…」
「合わせ技ってやつね!こうしたほうがいちいち狙うより楽でしょ!」
燃え盛る火は消えない…風が吹き続けているため、燃料となる傭兵たちを燃やし尽くされるまできっと燃え続けるだろう。
「そろそろね…」
フィーアさんの言った通り、風が次第にやみ始め、ここら一帯の視界が鮮明になっていく。
「何もない…」
枯れ果てた木も草も傭兵たちも…何もかも無くなっていた。
ただそこに大きな大きな大樹が存在しているだけ、あの風はいったいどれだけのものを巻き上げたのだろうか…
「あちゃ~、またやちゃった…父様に怒られちゃうな~。ま!仕方ないよね~」
「フィーアさん…お願いがあります」
「ん?」
「立てないので肩を貸してくれませんか…」
――恥ずかしながら僕の魔力も体力もすでに底をついているのです…
そのまま倒れ込む僕をフィーアさんは受け止めてくれた
「おっと…お疲れさま、ヘイヘ君…」
フィーアさんは僕の肩を持ち、村まで戻る。
「ヘイヘ君!大丈夫だったのかい」
最初に声を掛けてくれたのは、スージアさんだった。
「大丈夫、ただ疲れ切ってるだけだから。早くヘイヘ君を寝かせられる場所へ」
「あ、ああ、そうだなこっちだ」
「フィーア…あとで話がある、顔を見せなさい」
「父上…」
「分かったわよ、父様の部屋に行けばいいんでしょ。それくらいできるわよ、子供じゃないんだし」
フィーアさんの父親は今にでもブチ切れそうな顔だったが、周りに多くのエルフたちがいたため、事を荒立てたりはしなかった。
フィーアはヘイヘを部屋まで連れていく。
「今日はここでゆっくり休んでね…ヘイヘ君」
フィーアはヘイへの額にそっとキスをする…
「これで、少しは回復が早くなるかな」
「フィーア姉さん…父上が至急来るようにと…」
「ホントにあのエルフはせっかちなんだから!はいはい、言われなくても行きますよ」
ヘイへを部屋に残し、フィーアとスージアは退室する。
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