エルフ達の援護
傭兵たちは体を維持することが出来ず、真っ逆さまに大樹から落ちて行く。
「良し!当たった!次々行くよ!」
「おう!任せとけ、魔法が使えなくても俺たちは戦えるんだ!」
フリジアをはじめとするエルフたちは自分たちにできることを行っていた。
「フリジア…ありがとう。良し、このまま僕が『ブラックレイリー』を引き抜いて…グぐぐぐ!」
僕が『ブラックレイリー』を引き抜いているときにも引っ切り無しに傭兵たちが攻撃してくる。
その攻撃をフリジア達の矢で何とか対処しているがいつまで持つか分からない。
「できるだけ僕が……速く…抜かないと…フリジアたちが持たない…」
しかし、どれほど力んでも全く『ブラックレイリー』が微動だにしない…
『ブラックレイリー』は思ったよりも深く大樹に刺さっており、自分の魔力を吸い取られながらだと、どうしてもあと一歩力が足りない…
「く…くそ!抜けない、どれだけ深く刺さっているんだ!」
僕が手間取っている、間も引っ切り無しに矢を放っているフリジア達
僕にギリギリ当たらないようにコントロールしながら、傭兵にピンポイントに当てていく。
もし、フリジア達の援護が無かったら今後を僕はぐちゃぐちゃのバラバラになっているだろう。
「ヘイヘ!まだ抜けないの!そろそろこっちが限界に近いんだけど…」
フリジア達が何本矢を放ってもそれを超える数の傭兵たちが大樹を守ろうと過剰に反応している為か全く数が減らない…
――傭兵たちの数が増えている…フリジアたちが壊した傭兵たちよりも、大樹が生み出している傭兵の数が壊している数より多いってことか…このままじゃ本当にまずい。どうする…どうする!考えろ、考えろ、考えろ…!手で引っ張っても僕の力じゃ到底引き抜けない…
僕が考えている間にも傭兵たちの攻撃は止まってはくれない。
いくつもの拳や蹴りが僕に向って飛んでくる。
勇逸の救いは、大樹に傷を負わせないためか魔法を使用してこないことだ…もし魔法なんて使われていたら…今頃吹っ飛んでるだろうな。
「ヘイヘ!早く…これ以上はもう…私の魔力が……」
スージアがフリジアを見ると
「フリジア!指から血が…」
矢を放ちすぎてフリジアの指が魔力より先に限界が来てしまったのだ。
「指は、大丈夫…ただ、魔力の方が限界…」
僕は何か、この状況を変えられる方法がないかダメ元で魔法の袋に手を突っ込む。
「何かないか…何か…うわ!!」
一体の傭兵の攻撃が僕の腰を掠め、その際腰に付けていた魔法の袋を繋いでいたベルトが切れてしまった。
「嘘だろ!!何かを掴みかけてたのに!!」
何とか手を伸ばすも…神の悪戯か弱い風が吹き魔法の袋にギリギリ手が届かない。
結局僕は傭兵の攻撃によって魔法の袋を落としてしまった。
傭兵たちの攻撃は止まらない…既に援護のスピードは相当落ちている。
フリジア達の矢だけでは対応できなくなっていた。
「クッソ!『ブラックレイリー』を抜くことに集中できない!」
前…右…左…後ろ…上…何処を見ても、傭兵、傭兵、傭兵、傭兵…傭兵…顔に表情は無いがそれが逆に恐ろしい…
僕は魔剣を手に取ると傭兵に切りつける。
さすがエルツさんの作った魔剣…傭兵の装甲を両断する。
その時、やっと突破口を思いついた。
「そうだ!魔剣には魔剣で対抗する!」
僕は手に持っていた魔剣を大樹に刺さっている『ブラックレイリー』の周り数か所に刺しこみを入れる。
「こっちの魔剣はエルツさんが作ったんだぞ!」
円を描くように『ブラックレイリー』の周りを切り裂いていく。
多少力はいるが…それでも、『ブラックレイリー』を手で引き抜くよりは勝機が見えた。
「はは…エルツさん切れ味良すぎますよ…」
――魔剣は魔法力を使ってその強さを発揮するが、エルツさんの作った魔剣は一味違う…魔力が無い状態でも恐ろしくよく切れるのだ。
「いける!行けるぞ!!――このまま『ブラックレイリー』の周りにある大樹を削りとってやる!」
――もう力もうまく入らない…さっきから力を入れっぱなしだ…でも、これだけは何としてでも成し遂げてやる!
「フリジア…あと少しだ…」
「そう…それなら最後の魔力、全部この一矢に込めるから――『アローレイン!』イッ!!ケェーーー!!!」
フリジアたちに先ほどまでの権勢力は既になく、傭兵たちの攻撃がヘイヘに当たるのは時間の問題だった。
フリジアが最後に放った矢は光を放ち、一直線にヘイヘに向う。
矢に込められた魔力が空中で矢の形へ変化し、一本の矢が数十本から数百本へと増えていく。
まるで魔力を込めた矢が魔力を込めた矢を召喚しているように。
そして、一矢は空を埋め尽くすほどの矢の雨となり光の線を引きながら、ヘイヘの周りにいる傭兵たちを一掃した。
「ヘイへ…あとは…頼んだよ」
フリジアは魔力を使い果たし、その場に倒れ込む。
「ありがとう…フリジア」
[今なら逃げられる…今なら周りの傭兵たちが居ない、今この時ならここから逃げることだってできるぞ]
「グ!…」
――何でこんな時に頭痛が…ここで僕が逃げてどうする…ここでやらないと…今できるのは僕しかいないんだ…。
僕は最後の力を振り絞る。
大樹の切込みからは光が漏れ出しているが『ブラックレイリー』どんどん吸い込まれていく。
そして、ようやく『ブラックレイリー』の周りの大樹を切り落とすことに成功した。
「やった…何とか魔剣を大樹から切り離すことが出来たぞ…」
しかし、大樹を傷つけられ、過剰に反応した大樹を守る傭兵の数はフリジアが一度一掃したものの…もう既に初めの数倍の数になっていた。
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