作戦の実行
僕は諦めかけていた…
傭兵が見ているため派手な行動はできない。
しかし、行動できなければ魔剣を抜くことが出来ない。
そう思っていたころ、僕の右頬を掠る一本の矢が真横に刺さった。
――な…攻撃!いや、この矢は…フリジア、いったい何処から…
周りの木はほぼ枯れ果てている、隠れるところなんてほぼない。
頭を動かしあたりを見回すが…僕はフリジアの姿を確認することが出来なかった。
そしてもう1本、次は左頬を掠り顔の真横に矢が突き刺さる。
――な!また…ん?矢文…
そこに書いてあったのは魔法の呪文だった。
「テレ…パ…シィ―であってるのか?」
すると、何処からともなく声が聞こえだした…何とも頭に声響く
「ヘイヘ!大丈夫!」
僕は、その声に一瞬驚くも、声の主がフリジアであることが分かると、胸をなでおろした。
――ああ…フリジア…何とか大丈夫だよ。でも今やっとここまで来たのに…足止めを食らっているんだ。原因は突き止めたんだけど…そこまで行くのが難しくて。
「なるほど…でもそれは1人の時でしょ。今なら2人いや数十名!」
――どういうこと?
「私は、今エルフの里にいるの!」
――え…でもこの矢はフリジアので、間違いないだろ?
「そう、それは私の矢、この里から放ったの。どお?私の遠矢ドンピシャでしょ!」
――ドンピシャも何も…僕の顔ギリギリなんだけど…。
「ほら!ドンピシャじゃない。それで、これからの作戦はある?そこにいるのはヘイヘだから私たちはあなたの作戦にのるわ」
フリジアにそう言われ、僕は足りない頭で考えを巡らせる。
――フリジア…大樹の根に魔剣が突き刺さっているのが見える?
フリジアは、魔力を目に溜め大樹を見る。
「見えた!なるほど…あれが原因ってわけね、弓で撃ち落とせばいいの?」
――いや、それは無理だ。この矢を飛ばすには多少なりとも魔力を使ってるだろ。それだと、魔剣に当たった時、魔力が吸い取られて威力が足りない。だから僕が引き抜くよ、その援護をお願いしたい。
「なるほど…了解!」
フリジアは元気よく答える、僕にもその元気を分けてもらいたい。
僕は作戦をフリジアに伝える。
――まず、魔剣までの足場をつくってほしい。足場さえできれば僕が一気に魔剣までたどり着ける。そのあと、僕が魔剣を引き抜いている間、僕に傭兵が攻撃してくると思う。だから、傭兵の足止めをお願い。作戦と言えるかどうか分からないけど…僕が考え付くのはこれくらいかな
「了解!まず、足場をつくればいいのね」
そう言ってフリジアは僕と魔剣までの間に数本の矢を打ち込んだ。
――早…
「これでいい?」
――ああ、完璧だよ。
そして僕は息を整える…魔剣を引き抜くのは僕なんだ…失敗はできない。失敗したらその時は死ぬときかな…。
「ふ~、良し!それじゃあ、フリジア援護を頼む!」
「任せといて!」
「魔力を体全体に流して…よし行くぞ!」
僕はその場で一気に立ち上がり、矢を足場にして魔剣まで一直線に進んでいく。
矢は僕の体重でも簡単には折れなかった、魔力で矢を強化してあるおかげなのだろう。
傭兵も、いきなり動き出した僕に気づいたのかゾロゾロと大勢向ってくる。
「皆!集中して、私が指示するからその場所に正確に放って!多少ずれても私の風魔法で何とかするから!」
エルフたちが弓を構える。
傭兵たちが大樹を伝い、ヘイヘのすぐ傍まで来ていた。
「――僕はフリジアたちを信じる!フリジアたちを信じる!!フリジアたちを信じる!!!」
僕は上っている間傭兵のことを考えなかった。
傭兵たちのことは、すべてフリジアたちに任せたのだ。
「――僕は魔剣を抜くことだけを考えろ!傭兵たちはフリジアたちが何とかしてくれる!」
そしてようやく僕は、魔剣に手が届いた。
「グ!…魔力が…吸われる…」
一瞬体を流れる魔力のバランスが崩れ、力が抜けたが再度力を入れ直し、全体重を足に乗せ一気に引き抜く体制を取る。
それと同時に、傭兵の攻撃も繰り出される。
「放て!」
フリジアたちは矢を放つ。
僕には『放て!』の声しか聞こえず、今…矢が飛んでくるのを見る余裕は既に無い。
傭兵の攻撃が僕に当たるコンマ数秒…フリジアたちの矢が傭兵たちの額に突き刺さる。
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