耳と尻尾が消えた
ジャスがリーシャの家を訪れてから数日が経った。
「うう…ん…、あ…僕ベッドの上で寝てるんだった。ん…あれ…なんかいつもと違うような…」
――いつも起きた時には尻尾が足に当たってる感覚があるんだけどな…尻尾の感覚が無いぞ…
ベッドから起き上がり、神を掻き上げる…
「あれ…なんかいつもと違うんだけど…あれ…あれ、耳が…」
ベッドから起き上がり、ベッドの近くにあった鏡をのぞき込む。
「な……なな、何じゃこりゃあぁぁぁぁー!」
大きな耳と尻尾の無くなった姿を見て大声をあげてしまった。
「あら、ラーシュちゃん起きたのね」
「あ…あのあのあの!ぼぼぼぼ僕の耳と尻尾は…いったい何処に…」
「ちょっと、ラーシュちゃんがそのまま王国に避難するのは難しいと思ってた所に、私の友達がラーシュちゃんに魔法を掛けてくれたのよ」
「ま、魔法ですか…これが」
――人の姿…大きな耳も尻尾もない…ヘイヘさんと同じ人間…
「へへ…へへへ…」
――あら…今の姿は別に嫌いじゃないみたいね…
「それじゃあ、ラーシュちゃん今からすぐに出発するわよ。ここもいずれ戦場になるわ…とその前に、私の名前はリーシャ。ラーシュちゃんを助けた命の恩人よ」
「ぼ…僕の名前はラーシュです。ええっと、助けてくれてありがとうございました。それと、僕のことをラーシュちゃんって呼ぶのやめてください」
「あら…可愛らしいのに…」
――ラーシュちゃんも目を覚まし、自分の姿が変わっていることに驚いていたが、うれしそうな表情を浮かべていたし問題ないわね。
私たちは出発の準備を整え、王国への避難を開始した。
「リーシャさん…僕、本当に大丈夫でしょうか…」
「大丈夫よ、どこからどう見ても人間にしか見えないもの」
ラーシュちゃんの大きな耳と尻尾は無くなり、代わりに人の耳が付いている。
――ここまで分からないとは、ジャスの魔法すごいわね。
「この体、力がでないですし、前のときより速く走れないみたいで…」
――なるほど、獣人のパワーまで人並になっちゃってるのね。
「人の普通の子供になったってことよ」
「でも、それじゃ…足手まといにしかなりません。鼻も利かないし、僕は何のためにいるのか…」
「何って…守られるためでしょ」
「守られるため…それってどういうことですか?」
「ラーシュちゃんはまだ子供なんだから、誰かのためにならなければいけないとか、自分の存在意義は誰かの役にたっている時だけだとか、子供のうちはそんなこと考えなくていいの。だって、子供を守るために大人は頑張るんだから」
「何もできない僕でいいんですか…」
「当たり前よ、普通に生活して普通に生きていくだけで良いの、時には誰かの役にたって、時には誰かに助けられて、そうやって人は助け合いながら生き残ってきたの。どの種族にも言えることだって私には思うけど」
「そういうものなんですかね…。僕、このままじゃ居場所がなくなっちゃうとか…役に立てなかったら、殴られて捨てられちゃうとか…ずっと誰かに必要とされたくて、ずっと頑張ってきたんですけど…上手くいかないことばかりで…」
――ラーシュちゃんも相当ひどい目にあってきたみたいね…
「その度に僕は落ち込んでばかりで…こんな僕じゃ仕方ないと思って生きてきました。でも、今回ばかりは諦めたくないんです。何が何でも生き残ってヘイヘさんに一発、ビンタを食らわせてやらないと気がすみません!ビンタを食らわせた後、謝るんです!そしてお願いするんです!僕を傍にいさせてくださいって!」
「そうね…きっと彼なら、快く受け入れてくれるわ。人のあなたでも、獣人のあなたでも…その為にはまず生き残らないとね。きっともう…戦いは始まっているわ」
「はい、王国に急ぎましょう」
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