危機
次の日、僕はこのままだと飢え死にしてしまうと考えていた。
「どうしたら、この状況を打破できるのだろう」
そう考えながら、畑仕事をしていると野良犬が他人の畑を荒らしているのを見つけた。
「おい! 畑を荒らすんじゃない!」
でもそこで気が付いた、どうして野良犬は飢え死にしないのかと。
野良犬が食べていたものは何だったのか、気になり掘り起こしてみた。
「そうか、そういう事か。これなら、何とかなるかもしれない」
気づいた時にはすでに行動していた。
僕はダルさんの武器屋に全速力で向う。
「ダルさん! お願いがあります」
僕は武器屋の中に入り、武器の手入れをしているダルさんに話し掛ける。
「どうしたんだい、ヘイへ君?」
お父さんの戦友であるダルさんは僕の方を向き、聞いてきた。
「どうか、ジャモとサモの種芋を分けていただけないでしょうか」
「ジャモとサモかい? それなら家に沢山あるけどあれは家畜の餌として使うものだよ」
「はい、それでもいいんです、僕たちはジャモとサモが必要なんです」
「そうか、そういう事なら今すぐ持ってこよう。少し待っていなさい」
ダルさんは武器屋の奥に歩いていく。
「あ、ありがとうございます!」
☆☆☆☆
僕はダルさんから種芋をもらい、植える準備をすぐさま整えた。
「お兄ちゃん、今日も畑仕事?」とメイは嫌そうな顔をしてついてきている。
「今日は残りの畑に、これを植えようと思う」
僕は半分に切った種イモを入れた木製の箱をメイに見せた。
「ジャモとサモの種芋?」
「そうだよ。ジャモとサモは全く売れないけど、他の野菜より比較的早く育つ」
今育てている野菜は売れば高く売れるのだが、収穫するまで時間が掛かりそれほど、空腹を抑えることができない。
「でも、ジャモとサモはおいしくないよ!」
メイはあからさまに嫌そうな顔をする。
確かに、ジャモとサモはおいしくない、しかしこの状況を少しでも良くするためにこの二種類を育てるしかない。
「文句を言わない! この状態が良くなれば美味しいものが食べれるようになるから、一緒に頑張ろう」とあるかもわからない未来の話を口にしたことを後で後悔する。
「このジャモとサモの種芋どこから持ってきたの? おうちの奴は全部食べちゃったのに」
メイは木箱の中身を覗きながら聞いてくる。
「ダルさんにもらったんだ。頼んだら快く譲ってくれたよ」
ダルさんは父の死を伝えてくれた時から、いろんなことを助けてくれる。
今の世の中、どこの家庭もつらいはずなのに、彼は僕たちが困っていたら手を差し伸べてくれるのだ。
「感謝してもしきれないよ。じゃあ話しはここまでにして仕事を始めようか」
時間がない、少しでも早く収穫して母に食事を食べてもらわないと。
☆☆☆☆
ジャモとサモを植えてから二ヶ月が経った。
母は衰弱しきっており、起き上がることもできない。
「やっとジャモとサモを収穫できる。メイ、ジャモとサモを収穫してくるから、母さんのことを頼む、何かあったら、ダルさんを頼るんだ」
「わかった!」
「急げ、いつどうなってもおかしくない」
ジャモとサモは子供一人では持ちきれないほど収穫することができた。
「これだけあれば、今年の冬は超えることができるぞ」
今までにないほど収穫することができ、安堵したその時だった。
「お兄ちゃん! お母さんが!」とメイが全速力で走ってきた。
僕は察した、持っていたジャモとサモが入っている籠を捨てジャモ一個を握りしめ全速力で家に帰った。
「母さん!」
家の中にいたのはダルさんと村でただ一人の医師であるセキさんだ。
「ヘイへ君……」
ダルさんは泣きながら僕の名前を呼んだ。
僕は母のもとへ駆け寄った。
「母さん見て、やっと収穫することができただ。これを食べれば元気になるから、目を開けてくれよ……」
「ヘイへ君、マイアさんが、『ヘイへ、メイ、ごめんね』と言い残していたよ」
ダルさんは俯きながら呟く。
「なにを言ってるんだよ、母さん。謝ることなんてないさ。母さんがいてくれてうれしかったんだよ、ごめんなんて言わないでよ……」
――なぜだ、どうしてだ。どうしてこんなにも悲しいのに、目から涙が溢れないんだ。僕は人間なのか、最愛の母さんをたった今亡くしたというのにどうして……。
「っ!」
まただ、涙ではなく頭痛が出てくる。
メイも追いつき、母の死を知ったことでその場で泣き崩れた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
毎日更新できるように頑張っていきます。
よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。