街に帰還
――どれくらい歩いただろうか…もう、そろそろ街が見えてきてもいいころだと思うんだけど…
僕は森を抜け、何とか魔物の被害を受けずに街の近くまで来た。
「痛っ!!」
――また頭痛だ…この頭痛がある時に限って何かが起こるんだよな…
僕の肌に触れる空気が鋭く突き刺す感覚…僕は身の危険を感じ、遠目で見える位置にあった崖の上に身を隠した。
その行動は…何か危険なものを回避する動物の行動そのもの…魔族を初めて見た時と同じだった。
僕は身を隠しながら待機していると…。
前方から、武装した魔族らしき軍隊が進行しているのが見えた。
――始まったのか…早く僕が返ってきたことを知らせないと。メイ…
僕は恐怖によって震える手足を地面に叩きつけ震えを止めようと試みるが、震えが止まらない…ただ、叩きつけた痛みだけが僕の頭に響く。
「僕はまだまだ弱いな…」
それを痛感し、魔族の軍が通り過ぎるのを待った。
魔族の放つ威圧感はオークのそれとは比べ物にならない…
「いったい、どれほどの数がいるんだ。魔族1体倒すのに今の僕だったら何回死ぬんだろうな…」
魔族は人以上の体格を持ち、魔力量も人以上であるため、常人が魔族を倒すのは一苦労どころではない。
「は~、僕にジャスみたいな力があればな…いや、人の力を羨ましがる時間があるなら、少しでも役に立てるようになれ」
僕は少しでも、ジャスの役に立てるように見た魔族の装備や数などを記憶した
「少なく見積もっても、あの魔族たちが1部隊だとしたら…全部の部隊が沿ったらどれだけの数になるんだ…」
僕は恐怖を通り越し、笑いが込み上げてきた。
どうやら恐怖の先の感情は笑いらしい…
「は、はは、勝手な僕の考えだけど…やばすぎるだろ」
魔族軍が見えなくなってから、僕は崖を後にし、さっきよりもさらに慎重に行動する。
草木が揺れるたびに警戒し…音が鳴るだけで魔剣を構える。
そして…ようやく僕が出発した場所が見えてきた。
しかし、そこには2体の魔族が悠々と立っていたのだ。
――不意を突けば…倒せるか…
僕は魔剣に手を伸ばすが
――いや…やめておこう。自分の実力を見誤るな。
僕は何とかして中に入る方法はないかと考えた。
まず、街の周り見て回ったがどの入り口にも、魔族が立っており、どうも自力で突破するのが難しそうだった。
――どうする…これじゃあ、中に入れないぞ。何とかしてあの魔族たちをあの場所から引き離さないと…
そう思いながら、僕は何かこの状況を解決できるものを持っていないかと魔法の袋を確認する。
「あ…これがあった」
僕が手に取ったのは、ジャスさんからもらったオークの魔石だった。
エルツさんの所で勉強した時知ったことがある。
「ヘイヘ、魔石を使うときは注意しろ、お前は集中すると魔力が流れ出る体質みたいだからな。もし魔石を使っているときに集中しすぎると、お前から出た魔力を魔石が吸いすぎちまって、大爆発を起こす可能性がある」
「え、魔石ってそんなに危ないんですか…」
「そりゃあ、魔石なんて物騒な名前がついてるんだからな」
「分かりました、気を付けます…」
「エルツさん…この魔石なら今の状況を変えられるかもしれません」
僕は魔石を握り締める。
握りしめた魔石は冷たく…僕の熱を吸っているかのだ。
「よし!作戦は決まった。後は行動するだけだ」
僕は、作戦に必要な道具を集めることにした。
作戦に必要な道具の2つ長い紐、大きな石を森の中に無断でごみが捨てられていた場所から集めることが出来た。
「後は…バケツのようなものがあればいいのだけれど…」
ゴミの中を漁ったがそれらしきものは見つけられなかった。
川の近くを探し、ようやく見つけたのが…誰か釣りをしていたのだろう死んだ魚の入ったバケツだった。
「すみません…このバケツ少し借ります」
僕は危険の少なそうな崖まで戻り、岩の隙間に身を隠す。
「よし、ここならあまり見つかることもないだろう」
手の中にある魔石を強く握る。
息を吐く、吸うのを繰り返し行い、どんどん集中していく。
数時間経つと、魔石は光始めた。
「よし、第一段階突破!」
魔石の光方には3段階存在する。
一段階目は魔石が光を放ち始める、2段階目は光が魔石の中央に集まり始め光が魔石内に留まる、三段階目は魔石全体が光だし、魔石内にも光がとどまっている状態になる。
それぞれの段階で様々なことに利用されている。
基本的によく使われているのは1段階目であり、魔石を剣や弓に装着することによって、魔法を使うことが出来ない人でも魔法を使用することが可能になる。
比較的安全で強い衝撃を与えなければ、爆発することはほとんどない。
2段階目は主に、魔物の権勢に使われるようだ。
大きな音と爆風で魔物を追い払うらしい。
3段階目は主に戦争で使われていたらしい。
最近では魔石を3段階目にすること事態難しく、簡単に大爆発を起こしてしまうことから、使用するのが極めて難しいとのことで使われることはほとんどない。
しかし、今回僕が使おうとしているのはこの3段階目の魔石である。
1段階目を突破した後、さらに数時間かけると。
魔石が2段階目になった。
「よし、あと少しだ!」
僕は今までにないくらい集中し、やっとの思いで魔石を3段階目にすることが出来た。
「これで…良し」
――少し…いや、大分疲れたが、走れなくはない…
魔石を事前に作っておいた装置の下に置く。
この装置というのが、長い紐を大きな石に括り付け木に引っ掛ける。
長い紐の反対側にバケツを括り付け水と石を入れる。
大きな岩の重さよりバケツの中身を少し重くしておく。
そして、ナイフでバケツに小さな穴をあけ、僕は全速力で走り出した。
全速力で走り、何とか最も近い門の前の茂みに身を隠すことが出来た。
「あとは…待つだけだ…」
バケツに穴をあけたことにより、バケツの水が少しずつ漏れ出すことによって、大きな石の方が重くなる。
大きな石は少しずつ魔石に向って落ちていく。
――集中するんだ…チャンスは1回だけ。あの魔族が爆発を確認しに行ったとき、僕はあの門を潜り街に入る。
――あの魔族が爆発を確認しに行く保証はない…だが、このまま指をくわえて何もしないわけにはいかないんだ。
僕は今できることを精一杯する、それが今の僕に勇逸できること…
そして、その時が来た。
バケツの水が少なくなっていき、大きな岩の方が重くなっていく…大きな岩が魔石に触れた。
その瞬間、魔石に亀裂が入り大爆発を起こす。
強烈な爆風と爆音が僕の耳に入ってくる。
――来た!
「な、何だ、あの爆発は、攻撃されたのか!」
入口に立っていた魔族は持ち場を離れ、爆発箇所を確認しに行く。
――よし!今だ…
僕は魔族が走っていくのと同時に走り出す。
何とか門を潜り、街の中に入ることが出来た。
魔族が確認しに行くかは賭けだったが…どうにかその賭けに勝てたらしい。
「よし…何とか街の中に入ることが出来たぞ。今すぐメイのもとに戻らないと」
僕は地上に出たギルド後を目指したが、そこにはギルドに似た建物が立っていた。
――確か、あそこに入口があったはず…でも、まさかもう建物が立っているなんて、魔族が作ったのか
僕は魔族に見つかる可能性があるため、違う入口を探すことにした。
街を慎重に進んでいると…案外早く見つけることが出来た。
「――この穴…誰かが下から突き破ったみたいな形をしている、きっと獣人族がやったんだ」
その穴から中に入ろうと試みることにした。
穴からは光が見えるつまり、中に誰かがいた又はいる可能性がある
「どれだけ深いか分からない、気を付けて行こう」
穴から石を落とし、高さを確認する石を落としてからすぐ音が聞こえた。
しかも、中には誰もいないのか、その音に反応して出てくる者もいなかった。
「これなら…下りられそうだ」
ロープを近くの柱にくくりつけ穴に卸す。
「よし、行くぞ!」
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