王の間
僕は、彼と一緒に城内を歩いていた。
「あの~、ただの傭兵がこんなところにこれるとは思えないんですけど…」
「ん?まあ、そうだね。確かに、普通の傭兵じゃ無理かもね。つまり僕が普通の傭兵じゃないってことかな」
ただの傭兵と、普通の傭兵は何が違うのだろうか…
「名前も教えてくれないんですか?」
「まあ、いずれ分かるよ」
そして、王室の目の前まで来た。
ものすごく強そうな兵隊が両脇に立っている。
「失礼、お二方の荷物を調べさせてもらいます」
2人の兵士が僕の体と彼の体に不審なものがないか調べる。
魔剣と短剣は彼らに預けなければならないらしい。
「では、こちらからどうぞ」
そういうと、1人の兵士が扉を開ける。
「さあ、行こうかヘイへくん」
「ど、どうして僕の名前を…」
僕は彼に1度も自分の名前を言っていない。
それなのに、どうして彼は僕の名前を知っているんだ。
「さあ、どうしてだろう。考えてみたらどうだい」
そういうと彼は面白そうに笑う。
「い、今はこっちの方に集中します」
「ま、それがいいかもね」
僕は生まれて初めて王室に入った。
初めは目がまぶしくて、全く目が開けられなかった。
そして、やっと目が慣れ、初めて国王を見た時に思ったのが
「あれが国王…」だった。
国王は、全身に宝石をまとい、多くの宝石が埋め込まれた王冠を付け、明らかに金で出来ている玉座に足を組みながら座っていた。
「よく来たな、勇者よ」
「!?」
「ゆ、勇者!」
どういうことだ…僕はずっと勇者と一緒に居たのか。
「まぁ、勇者という名の傭兵だよ」
僕は驚きのあまり、言葉を失った、勇者に出会ったら話してみたいことがたくさんあったのに。
「勇者よ、この国は再び魔族からの攻撃を受けた。これはつまり、冷戦の終結。そして、戦争の再開と言う分けじゃ。そこで、お前を呼んだのだ勇者よ。以前の戦いで魔族を倒しきらんかったお前に今度こそ、魔族を殲滅してもらう」
す、すごい、そんなことが出来るのか。
「いやです!」
「!」
「何と申した…わしの聞き間違いじゃなければ、お前は大罪を犯したことになるぞ」
「もう一度はっきりと申し上げます、僕は魔族を傷つけたくありませんし、戦争だってしたくありません。前の戦いで多くの仲間が死に、多くの魔族を傷つけました。僕にはやはり、勇者は向いていないのでしょう」
「何を言うか!きさまは勇者だぞ、ならば人族を守り導かねばならない存在なのだ。しかも、きさまは勇者の中で最も強いと言われているではないか。何か不満でもあるのか、この戦争に勝利すれば、きさまの地位も名誉も金もすべてが揃うのだぞ」
「僕はどれもいりません、ただ好きな人と一緒に暮らしていけるだけで幸せなのです」
「きさま…誰が市民の子を貴族と同じ位まで引き上げ、教育を施し、剣術魔術などの戦闘を教え、今の生活をできるようにしてやってると思ってる!すべてわしの金と時間を使ってやってきたことだ、わしの温をあだで返す気か!」
「確かに、感謝しています。しかし、僕が実際に教わってきたのはあなたではありません」
「ふざけるな…きさま、今すぐにでも打ち首にしてやってもいいんだぞ」
「それはできませんよ、もし僕を今失えば、確実に人類は滅びます。いや、奴隷にされるのかな…」
「グぐぐぐ…」
王様は相当起こっている、何故勇者はわざわざ怒らせるような言い方をするのだろうか。
どうしよう、手紙をわたせる空気じゃないよ…。
「あ、それと王様。この少年、ヘイへくんが王様に渡したいものがあると」
勇者はいきなり僕に話を拭てきた。
「何だ?申してみよ」
このタイミングで振ってくるんですか!
でも、言う機会をもらえたんだ、ちゃんと僕がやらなくちゃ。
「初めまして王様、僕の名前はヘイへと申します。襲撃された街から来ました。魔族軍の仲間という者から手紙を預かりここまで伺いました」
「見せてみよ」
そう言われ、僕は王様を守る兵士に手紙をわたした。
「問題ありません、魔法の類は付与されていないようです」
「うむ…」
そう言って、兵士から手紙を受け取り。
王様はの手紙を読む。
見る見るうちに王様の顔がさらに期限が悪くなっていく。
「ふざけるな、こんなこと許してなるものか。全軍出撃体制を整えろ」
「は!了解いたしました」
「今に見ておれ、人間のなりそこないどもめ…わしの恐ろしさを今一度教えてやる」
そしてこちら側をにらみつける
「勇者よ、きさまは魔族を殺したくないのだったな」
「はい、そうです」
「ならば、人族を助けよ…いや、仲間である兵士たちを助けるのだ。戦闘をするかしないかはお前が決めてよい。だが、できるだけ手を貸せ。貴様には戦闘の援助を行ってもらう」
「了解です王様」
さっきまであんなに怒ってたのに、逆に冷静になっちゃったのかな。
「ヘイへと言ったか」
「は、はい!」
「よく知らせてくれた、ここからは、私たち大人の戦いだ。子供はこの国で待機していなさい」
あれ?この王様さっきと同じ人間かな。
「あ、ありがとうございます。でも、僕には戻らなければならない理由があるのです」
「その理由とは何だ」
「すみません、王様にも言うことが出来ません」
「なぜだ?」
「言えないからです」
「きさま!王の御前であるぞ!」
近くの兵士に怒鳴られる。
「まて!言えぬのならいい。気にするな下がってよいぞ。勇者もだ」
「分かりました」
そう言って僕達は王の間から退出した。
「ヘイヘくんは、戻るんだよね戦場へ?」
「はい、戻ります」
「そうか、じゃあこれを返しておくよ。さっき兵士の人たちが返してくれたんだ」
そう言って勇者さんは僕の魔剣とナイフを返してくれた。
「ありがとうございます」
「ヘイヘくん、君は何のために戦うんだい、僕は大切な人を守るために戦う」
「僕も大切なものを守るためです」
「そうか、なら僕たちはもう戦友だ。必ず生き残るんだよ」
「はい、勿論、生き残って見せます、勇者さんも必ず生き残ってくださいね」
「ああ、僕は勇者だからね、簡単には死なせてもらえないんだよ。前の戦争では助けた命よりも助けられなかった命の方が多いからね。今回の戦いではきっと、助けた命を多くしてみせる。もし僕に何かあったらよろしく頼むよ、ヘイヘ君」
「ぼ、僕にできることなんて何もないですよ、勇者さんが一瞬で倒したオークにすら歯が立たなかったんですから」
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