森の中の戦闘
「まさかここ一帯に三種族が揃うなんて、珍しい日もあるんですね。この時代に他種族の方と協力関係が築けるなんて思っていませんでした」
「本当は誰とでも協力関係になれるはずなんだ。誰か一人でも拒むものが居ると、その拒む心が伝染してしまう時があるんだよ。残り一〇キロメートル以上。この一〇キロメートルの間にどんな敵が待っているかわからない。もしかしたら見方が居るかもしれない。少しずつ進むのが良いけど、そんな時間もないから出来るだけ行ける所まで進む。そう言った感じで良いかな」
「うん、良いんじゃない。最悪また魔族との戦闘も考慮に入れておかないと」
「魔族軍は手ごわいと聞きました。一筋縄ではうまくいかないかと思います」
「もう、一筋の縄じゃないよ。ここに居るみんなが持っている一筋の縄を合わせれば太くて長い縄が出来るのだから」
「そうですね、どれだけ編み込めるかも重要になってくると思いますし、今日は雑談と言う事で。今から情報の交換と行きましょう」
「そうですね。僕たちの知っていることが役に立つかどうかわかりませんけど。少しでも何か糸口になればきっと手繰り寄せられます」
僕とフリジア、ウルさんとユアンさん、メルルさんで話し合いを行い、色々な情報が手に入った。
まず、獣人国内部の状況が悪いらしい。どうやらアランさんが居ないといざこざが起こってしまっているらしい。
今の所はまだ魔族に感づかれていないと言うが時間の問題らしい。獣国が二つに分かれるかもしれないと言われたが、よくわからなかった。
最後にウルさんは僕を殴りつけてしまい申し訳なかったと謝罪してくれた。僕は外傷もなかったため、そこまで気にしないでもらいたく「問題ない」と答えた。
その夜、僕たちは野宿で過ごした。久々に安心して眠れた気がする。
二人だと夜の見張りが十分に行えないのが難点だ。その点、動きやすさは良い。でも、五人だと見張りは移動が大分楽になる。
冒険では楽になった方が、都合がいいためパーティーを作る者が多い。どうせ作るのならば信頼できる相手と作った方が、その後の人生に役立つ。胃は僕は初めてこれだけの人数でパーティーを組んでいるがとてもやりやすい、食事の担当見張り担当所持物の手入れ担当など、役割を分散できるのもいい点だと考えられる。
「ふぁ~あぁ、おはようございます、ウルさん……」
僕は硬い地面から身を起こし、両手を空に向って持ち上げて背中残りを解す。
「はい、おはようございます、今日もい天気で良かったですね。晴れてた方がより長く前に進めます」
「そうですね。このまま行けば、あと二日くらいで東国に到着しそうな雰囲気はありますよね」
「ただ、森の魔物に注意しなければ成りません。もっと言えば魔族にも気を付けなければ……」
「警戒できるものにはほぼすべてに警戒した方が、安全度の向上に繋がりますもんね……」
僕たちは自分たちの荷物を手に持って調べ、持ち物が問題なくあるか確かめる。
「良し、全部あります。大丈夫です」
「こっちも大丈夫。そのまま行けるよ」
「私達も大丈夫です」
野宿が出来た場所から離れるのは少し名残惜しが、進まなければならない。僕たちのパーティーが東国に行かなければ、東国が王国と同じ道をたどってしまう。そんな羽目になったら人族がどうなってしまうか……。考えたくもない。
「では東国まで向かいます、出来るだけヘイヘさんとフリジアさんも追いつけるぐらいの速度で走ろうと心掛けますので、頑張ってついて来てください、魔物が出た場合その都度対処します」
「はいっ!」
「この森で主に危険な魔物は二種類。団体のゴブリンとタルピドゥです。この二種類には特に気を付けて移動しなければ全滅しかねませんから早めの対処が必要です。感知するのは私達が得意なので任せてください、前衛も張れます」
「わかりました、前衛はウルさんたちに任せます。僕とフリジアはウルさんたちの援護に回りたいと思いますので、そのつもりでお願いします」
「はい、それで問題ありません。では出発しましょう」
僕たちは静まり返った森の中を東国に向って進む。危険な場所はゆっくりとの歩き、安全な場所ではありえないほど早く、緩急を付けながら行動していくと、あっという間に一五キロメートル地点を超え、二〇キロメートル付近に到達しようとしていた。
「よし、ここまで何も見かけずに到達できた。このままこれば東国まで無事に到着できるはず……」
「確かに…。今のところ何の魔物にも遭遇していませんね。でも、逆に心配ですね。普通なら森を歩いていれば一体から二体ほどの魔物と出会うはずなんですがね。運が良いと言えばそれまでですが……。私達の警戒網にも引っ掛かりませんし。どうなっているのでしょうか」
ウルさんは少し考え込んでいたが答えは出なかったようだ。
僕たちのパーティーは前にウルさん、次に僕とフリジア、その後方にユアンとメルルが続くような陣形を取っている。
いつどこから襲われたとしても、即座に耐用できる陣形であり、崩さず進まなければならない。
僕だけ遅れてしまうと周りの皆に迷惑をかけてしまうため、どうしても無理してしまうのか、体が重く感じてきた。疲れが大分溜まり体力が削られている。そんな矢先だった……。
「父さん、何かいるよ!」
ユアンが何かに気づいたらしくウルさんに大声で話しかける。
「ああ……、何かいるみたいだ。だが、このまま突っ切る」
ウルさんは更に移動速度を上げ、攻撃を受ける前に即対応する。だが、相手も生きるために必死なのか、中々引いてくれないらしい。
「なかなかまけないな。あちらにも何か策略があるのか……」
どうやらこのままでは逃げきれないらしい。それなら、少しでも有利な状況を作らなければならない。
「今から戦闘が行いやすい場所まで移動します。私達は何者かに狙われているようです。敵の姿は確認できませんがにおいや動きがわからない。おそらく森に上手く溶け込むのが得意な相当手練れのゴブリン、またはホムゴブリン。その両方か……。なんにせよ戦闘は避けられないみたいなので身を引き締めていきましょう。運よく逃げきれればそのまま休憩に入ります」
「わかりました……」
――戦闘か。僕について行けるだろうか。足手まといになるようだったら動かないようにしていた方がパーティーのためになるかもしれない。でも、囮くらいにならなれるか。そのまま、出来る限り引き付けて回りの皆が倒してくれるのを祈るという手もある。たとえ弱くても作戦は無限にあるんだ。
初めに攻撃してきたのは森中に潜む敵かららだった。
「な!」
地面に矢を放たれ、警戒度が増す。一発放たれたと思いきや即座に二射、三射と放たれてくる。全体の移動速度を上げ、攻撃を回避しているが、それでも敵らしき存在はまだ追い続けてくる。




