王国に潜入
「それじゃあ、僕が見張りをするからフリジアは先に寝ていていいよ」
「分かった。少ししたら交代するから」
フリジアは木の枝に座り幹に体を預け、眠りだした。
僕は、見張りをやると言いつつも実際は回りが暗すぎてほぼ見えないので音による警戒を行う。
耳を澄ませ、足音が聞こえないかを常時確認するのだ。
――足音らしき音は何も聞こえない。
唯一聞こえるのは風邪によって揺れる草木がすれる音くらい。
動物や魔物がこの森の中にどれだけの数がいるのだろうか。
広い広い森中で僕たち二人と遭遇するなんて運がいいのか悪いのか……。
魔物だって僕たちと会わずにただこの森で生活している分には決して構わない。
好きな様に生きともらっていい。
僕たちに認識できないところで人を襲ったとしても認識されていないのだから脅威として感じる必要はない。
どうかこのまま僕達が魔物たちの認識の範囲外であることを願う。
☆☆☆☆
「ヘイヘ君、そろそろ出発の時間だよ。光が差してきたし、今のうちに進んじゃおう」
大地の裂け目から眩い光を放つその物体は時間の流れを無理やり経過させる。
「ん……。あぁ、もう朝か。それじゃあ出発しよう」
僕達は時間は掛かったが確実に移動していった。
残りあと半日で王都が視野に入ってくるところまで移動したところだ。
「ヘイヘ君、ちょっと待って。この先に何かいるみたい。あれは魔族かも……」
フリジアが指さす方向には丸太に腰を掛ける魔族の姿があった。
どうやら睡眠の途中らしい。
「ここに魔族がいると言うことは王都均衡まで魔族が入り込んでいるということ」
――ここまで魔族が着ているのか。それじゃあ人族はいったいどうなったんだ。
「ヘイヘ君、出来るだけ気づかれないように行こう。魔族をいちいち相手していくのは大変だと思うからさ」
「そ、そうだね。出来るだけ戦わない方が安全だよ」
僕たちは木の枝を移動して魔族の頭上を素早く通り抜けていく。
その後も、森を巡回する魔族兵が増えだした。
「魔族兵がさらに増えてきたな。この状況は……、信じたくないけど王都が……」
「まだ分からないよ。この眼で見ていない出来事は真実かどうか判断出来ないでしょ。何事も推測だけで動いてたらいつか動けない時が来ちゃうよ」
フリジアも王都の現状を察していると思うが、僕を突き動かすために背中を押してくれる。
「フリジア……。そうだね、まだ自分の眼で確かめてないから事実が確定してない。この眼で見るまでは、推測なんて信じないぞ」
僕達は魔族兵に気づかれないよう、木の上を素早く通過してく。
風のように狭い抜け道を通り、僕達は王都が視野に入る所まで来た。
「王都はすぐそこだ。問題はどうやって中まで入るかだけど……、フリジア、何か作戦はある?」
「ん~、あの壁くらいだったら魔法で何とか浮かせられそうだけど壁上にも魔族兵はいるよね。今回も地面から行けたらいいんだけど、これだけ魔族兵がいるんじゃ、移動している間先に気づかれてるかもしれない」
「とりあえず、王都の近くまで進んでみよう。何か分かるかもしれない」
「分かった」
王都、門付近。
「あの荷馬車はなんだろう。何が載っているんだ……」
門を出入りするのは魔馬と呼ばれる魔族御用達の魔獣で馬と似た体格を持ち、魔力で動く為、餌などの食料を与える必要はない。
代わりに魔力を与えてやればいくらでも走るのだという。
魔力量の多い魔族にとっては相性のいい魔獣だ。
「それにしてもあの荷台の数、尋常じゃないな」
王国内に入る為、僕達が荷馬車を利用しない手はなかった。
「下から見ても壁上に魔族がやっぱり大勢いる。こうなったら、正面突破か魔族に装うとか、しか王都内に入る方法がないかな」
僕の嗜好は少し固まっていた。
「いや、比較的安全に中に入る方法があるよ」
フリジアは何かを思いついたらしい。
「え……。いったいどうしたらいいの?」
「あの荷馬車の下に潜り込んで王都内まで運んでもらうんだよ。王都内の情報が手に入ったら荷馬車が出ていくと同時に同じようにして王都から脱出すればいい。こっちの方が比較的安全だと思う」
「そうだね。なら僕が行くよ。フリジアに危険なことをさせるわけにはいかないよ」
「何言ってるの、私も行くに決まってるでしょ。ヘイヘ君を一人で行かせないために私は国を出てきたんだから」
「フリジア……。ありがとう。よしやろう、二人で王国内に侵入するんだ」
「うん、そうこなくっちゃ」
僕とフリジアは森の動物みたく木々の陰に隠れたり、茂みに隠れたりしながら荷馬車の道脇にまで到着する。
「それじゃあ、私が手本を見せるから、同じようにやってみて」
「う、うん。分かった」
王都に向う荷馬車が一台、結構早い速度で向かってくる。
「三、二、一、ふ!」
フリジアは一拍の遅れもなく荷馬車の下に潜り込むと自身の手で荷馬車の底にしっかりとしがみ付く。
「よし、僕も行くぞ」
僕は続いて走ってくる荷馬車に狙いを定め、心を落ち着かせる。
――あの車輪に潰されたら終わりだ。一秒でも出る瞬間を間違えれば潰されるぞ。
死を感じた時、いつもの頭痛が僕を襲った。
「痛っつ。何だ。鈍い頭痛だな……。前よりもだいぶ弱い。これくらいなら心配する必要もないな」
地面を削りながら力強く迫ってくる荷馬車がもうすぐ僕の真横を通る。
――大丈夫、大丈夫、大丈夫。よし、行くぞ。三、二、一、ふ!
僕は地面を転がりながら荷馬車の車輪と本体の空間に何とか潜り込むことに成功した。
手で持てる場所にすぐさま捕まり、足を木の棒に引っかける。
僕は手の平に魔力を溜め、出来るだけ離れないよう固定した。
――よし。第一段階は成功だ。このまま何事もなく王国の中に入ってくれ。
僕の前を進むフリジアが隠れている荷馬車は門に差し掛かる。
僕はその後ろで待機し、フリジアの無事を祈った。
前の荷馬車は次第に移動していき、フリジアは王国内に無事侵入することが出来た。
――あとは僕が王国中に入るだけだ。
「この中身はなんだ?」
魔族らしき声が荷馬車の外から聞こえる。
「魔族国からの派遣物資です。食料と回復薬などをお持ちしました」
「そうか、なら見せてもらうぞ」
「はい、どうぞご自由優に」
――早く終わってくれ。早く終わってくれ。
何とも耐えがたい緊張感が続く。
――下を覗かれたらいっかんの終わりなんだ。
門に立っていた魔族は僕のすぐ横を通って行く。
その為、足物がとてもよく見える。
「食いもんに薬草、ポーション。よし、それしかないな。行っていいぞ、王宮の厩舎付近に移動しろ」
「分かりました」
緊張が解かれ一瞬で疲労が蓄積したことに僕は気づく。
荷馬車は王国の中に入って行き、魔族の証言からするに王宮付近にある厩舎にまで移動するらしい。
きっとそこで荷物を下すのだろう。
――このまま下にいてもいずれ気づかれる。僕が先にどこかへ隠れないと。
僕は退避する場所を探していると、地面に矢印がうっすらと書かれているのに気づく。
――この矢印はもしかしてフリジアの書いた印か。
僕は矢印の方向を見ると、民家が多く並ぶ住宅街だった。
このまま進み続けると移動する好機を逃してしまう。
僕はその矢印が真下にきた瞬間、矢印の方向へ腕の力を使い移動した。
車輪に体を潰されそうになりながらも脱出し、人気のない住宅街へ思いっきり走った。後方には荷馬車はおらず、気づかれていないはずだ。
「はぁはぁはぁ、フリジア。どこだ……」
僕は自分の体を民家と民家の隙間に隠し、辺りからは目視できない位置にとりあえず避難した。
「それにしても、ここはどこなんだ。姿かたちは王都だけど人族が一人もいない。もしかしたらもう魔族に占領されたのか。確かに荷馬車に乗ってたのも観察してたのもどっちも魔族だった。じゃあ、王宮は魔族に本当に支配されたってことなのか……」
僕は力なく座り込んだ。
少し間が開き、足元に矢が飛んできた。
僕は矢の飛んできた方向を見るとフリジアがいた。
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