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Re:フレンドワーズ ~家名すらない少年、ディストピアで生きていく~  作者: コヨコヨ
ヘイヘ&フリジア:調査偏

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クレーターと折れた剣

 僕は朝日と共に目覚め、出発する方向を確認する。


「フリジア、水と食料を確保しに行こう。そうしないと僕たちが体力不足になってしまう」


「そうだね。進むことに気を取られすぎて食料のことを全く意識してなかった」


 僕達はすでに食料は食べつくしてしまったし、水も飲んでしまった。


 お腹がすくと思考が出来なくなるので早急に食料を見つけないといけない。


 だが、見つかるのは魔物ばかり。


 魔物からは魔石とドロップアイテムしか手に入らない。


 ドロップアイテムは魔物を倒せば毎回手に入るわけではないが、今探しているのは動物の方だ。


 でも一向に見つからない。


 あいにく川の位置は何となく覚えていたので、水の確保は出来た。


 川があるのなら、魚を捕まえればいいのではないかと考え、川の中をのぞくも何もいない。


「この川に魚はいるのかな?」


 フリジアは疑いの目を川に向ける。


「どうだろう、綺麗な川だからいると思うけど……」


 僕達は魚も結局見つけられなかった。


 仕方がないので木の実で空腹を紛わせながら進む。


 王都まで残り三分の一程度に差し掛かったころ。


「何だよ……、これ」


 そこには遠目からでも分かるほど大きなクレーターが出来ていた。


 僕は訳も分からず、走りだす。


「はぁはぁはぁ……!!」


 近くで見ると更に大きい。


 何かに抉られたような、形。


 また強烈な爆風によって吹き飛ばされたのではないかと思うほどの土砂。


 目の前に広がる森の一帯の木々が軒並み吹き飛ばされいる。


 ひっくり返っている木、根元から折れている木、根っこごと吹き飛ばされている木。


 僕は無意識に、クレーターの中央へ向かった。


「何もない。誰もいない。いったい何でこんな大きなクレーターが森の中にあるんだ」


 クレーターの側面部分だけでも相当高い。


 地面の色が変わり黒赤茶と言った色が幾層にも連なって見える。


 僕は足裏で傾斜を滑りながら、移動して何とかクレーターの真下へと到着する。


 中心まで結構な距離があり、思いっきり走った。


 そこにあったのは一本の剣身が銀色の剣だった。


「この剣。僕には見覚えがある。でも……嘘だ。そんな訳ない」


 僕は恐る恐る地面に突き刺さっている剣の柄を握り、柄の上部を覗き見る。


 僕はその場に膝から崩れ落ちた。


 何かを察した。


 脳裏に嫌な想像をてしまうほど衝撃が強かったのだ。


「エルツさん武器。いや、この剣は僕の作った武器。しかもミーナに手渡した一振りだ……」


――僕にしか分からないかもしれないけど柄のあたりに僕の名前と本数番号が彫ってある。本数番号001。初めて真剣に相手のことを思いながら作った剣。見間違えるわけがない。


「何でお前がここにいるんだよ。お前はミーナの所にいないと……、おかしいだろ」


 柄をぐっと握り、剣を地面から引き抜く。


「!!」


 引き抜いた部分からその先に有るはずの剣身がなくなっていた。


 つまり、折れていたのだ。


「そんな。そんな……、もしかして僕のせいで……」


 最悪の光景が脳裏によぎる。


 だが、辺りを見回しても血痕の跡や残骸などは見当たらない。


「このクレーターができる時に吹き飛んだのか。いや、この剣がここに突き刺さっていたと言う事はクレーターができた後に突き刺さったに違いない。僕の作った剣がこのクレーターを作った威力を耐えられるとも思えない。それじゃあミーナは……。


「ヘイヘ君! どうしたの!」


 フリジアは僕のもとまで走ってきた。


「周りから丸見えだからここは危険だよ。魔物が襲ってきても逃げにくし……。って、その剣は?」


 僕が折れた剣をまじまじと見続けているからフリジアは気になったのか聞いてきた。


「これは僕がうった剣なんだ……」


「え。そうなの」


「大切な相手がこの剣で自分の命を守れるようにって……、思いを込めてうったのにこのありさまだ……」


 剣身は折れ、既にひびが何本も入っている。


 僕の眼からしたたる雫が折れた剣身に掛かり、罅に浸透していった。


 幾度となくしたたる雫が剣身の罅を埋めていきしだいにあふれ出す。


 銀色の剣身に無色透明な雫が溜まり、堪えきれなくなった雫が一筋の道となって地面に落ちて行く。


「ヘイヘ君、立って。王都に早く向かうよ。ここでくよくよしていても時間は経っていく一方なんだからさ」


 フリジアは僕の腕を持ち、引っ張ってくれるも僕は立ち上がれない。


『パンッ!』


 フリジアは僕の胸ぐらを掴み、平手打ちを一発食らわせてきた。


「!!」


 僕はいきなりの出来事に理解できず、困惑する。


「早く立ちなさい! ヘイヘ君にはやらないといけない仕事があるでしょ! それを忘れて、何でこんな所で膝を地面につけながら止まってるの。ヘイヘ君が何を思っているかは知らない。でも、その相手が死んだかどうかなんてまだ分からないでしょ!」


「そ、それはそうだけど……」


「大丈夫。きっとその相手は生きてる。そう思うことにしようよ。今ここで立ち止まっているよりも、先に進んだほうがその人に会える可能性だって出てくるんだから」


「フリジア……」


――そうだ。僕がここで立ち止まっていて何になるっているんだ。先に進まないとミーナが生きていたとしても僕がここにいる限り会えないぞ。


 僕は眼に溜まった涙を腕の服で一気に拭き取り、眼の下が赤く腫れてしまったかのような熱身を帯びているのを感じ、自身の頬を思いっきり叩く。


 頬には手形が残ったのか、ジンジンとした痛みが伝わってきた。


――頬が痛い。でも吹っ切れた。これで先に進める。


 そう思った時。


「痛っ!」


 頭痛がしたのだ。


 鈍くそして重い痛みが僕を襲う。


 痛みはすぐ引いたものの頭痛の後は何か嫌な事が起こる前ぶれであると勝手に思い込んでいた為、僕はその場で身構える。


「どうしたの、ヘイヘ君?」


「いや何か嫌なことが起りそうな気がして……」


 僕は周りを見回すが何もいない。


――思い過ごしか。それならいいんだけど。


「フリジア、王都に行こう」


「うん、急ごう」


 僕たちはフリジアの魔法でクレーターから脱出し、王都までの道を走っていく。


 走っていると道には人の死体が何体も転がっていた。


「ごめんなさい……」


 この数の死体を埋めるには時間がなかった。


 僕は仕方なく見ないふりをして走る。


 地面が走りにくい場合は木の上に移動し、飛び移りながら移動した。


「被害がどんどんと酷くなって行ってる。人の死体も増えてきた……」


「それなのにまだ戦いの音が聞こえないのは少し不自然だよね」


「ここからはもっと慎重に進んで行こう。何が潜んでいるか分からない」


「そうだね。周りに目を向けていないと後ろから、グサリ! 何てことがあるかもしれないし」


 僕たちは死体が増えだしたあたりから慎重に行動した。


 足跡すら残さないよう、細心の注意を払い、王都まで進んでいく。


 クレーターから少し進んだころ。日が落ちて暗くなってきた。


「今日はここで野宿しよう。これ以上暗くなったら、魔物も増えるし僕達も動きにくくなる。残りの距離を考えて、今の速度なら後二日で王都につけると思う」


「分かった。体力を少しでも回復できるように、早めに休もう」


 今、フリジアと僕は高い木の上で待機している。


 ざっと十五メートルくらいの木の上ならば、地面を歩く魔物と遭遇する可能性はない。


 万が一、魔族が通ったとしても、木の上にいる僕たちを闇夜で見つけるのは困難だと思う。

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