戦場の死人
「少し先だけど、鎧を着た人影が見えた…」
「ほんと…。それじゃあ…僕たちは戦争している場所に付いてしまったってこと」
「そうかもしれない…でも、あまりにも静かすぎない…。 戦争ならもっと爆撃音とか、魔法の振動とか、雄叫びとかが聞こえる物なんじゃないの?」
言われてみればそうだ…魔族軍と戦っているんだったらきっとすごい激しさを増しているはず…それなのに、ここまで何もないと言う事は…やっぱりそうなのか。
1番最悪な結果が頭をよぎる。
「でも、まだ決まったわけじゃない。…王都に急ごう。それとその兵士さんにも話を聞いてみよう」
「ええ、そうね」
フリジアの言った通り、少し先に鎧を着た人が木に隠れるようにしてもたれ掛かっていた。
しかし…その人は隠れていたわけではなかった。
「ヘイヘ君…この人…」
僕はその兵隊さんの首元へ指をあてる…。
すっと立ち上がり僕は首を振った。
「亡くなってる…それに亡くなってから大分時間が経っいるように見えるよ」
人の死体を見たのはここが初めてじゃない…。
でも…なぜ僕はこんなに冷静でいられるのだろうか…。
赤の他人だからか…それとも何かほかの理由があるのだろうか。
「外相を受けた形跡はない。…攻撃による損傷が死因じゃないはず…。魔族の魔法か何かかな…」
「でも、攻撃魔法を使ったにしてもどこかしら外傷は見つかるはずだよ。人って案外丈夫だから大きな傷でも与えないと死なないでしょ?」
フリジアの言っている話も確かだ…
「この人は外傷もなく殺された…又は持病の発作によって亡くなってしまったのかも知れない…。とりあえず、埋めてあげよう…」
「そうね…こんな所じゃ、安らかに眠れないもんね…」
フリジアは地面に1人分埋められるくらいの楕円形に魔法で地面を削る。
僕が鎧を着た人をズルズルと移動させ、穴に寝ころばせた。
上から土で覆いかぶせ地面に埋めた。
フリジアと僕は両手を合わせ、祈り…魂が天に向かっていくよう願った。
「ここからきっと…まだまだ人が居るかもしれない。出来るだけ埋めてあげたいけど…このままじゃ時間がいくらあっても足りなくなる。見境を付けて行こう…」
「そうだね…」
僕たちは王都までの直線距離を移動せず、弧を描くように旋回しながら、王都を目指した。
理由としては直線上でまだ戦闘が行われていると考えたからである。
「フリジア、今日はここで休もう…」
「そうだね。周りも開けているし敵を見つけやすそう…」
フリジアは、人の死体を見てから少し様子がおかしい…。
「大丈夫、フリジア。何か体調がよくなさそうだけど?」
「え?あ、ああ…そう見えちゃってた、全然大丈夫だよ。ピンピンしてる…けど、確かにちょっと体調が良くないかも…」
「それなら言ってくれれば、休めたのに…」
「ううん…そう言うのじゃなくて…、あの兵隊さんを見たら、こんな風に人って死んじゃうんだ…って思ったら怖くなっちゃって…」
フリジア達エルフは寿命が長い生き物だ…。
きっと人の死を見たのは初めてだったのかもしれない。
「大丈夫、僕は死なないから。何があっても生き残って見せるよ。フリジアが大人になるまでは僕も生きていられないだろうけど…、でもそんな簡単に死ぬつもりは全くない。だから心配しなくて大丈夫。フリジアの一番近くにいる人間は絶対に死なない」
「はは…何それ、カッコつけてるつもり?」
「言ったことは自分が一番近くで聞いているんだろ? だから心に刻まれる。きっと大丈夫だって思えればそれだけで十分」
フリジアは少し笑って言った
「ありがとう…」
そして吹っ切れたように元気になった。
――今夜はゆっくり休んで明日…出来るだけ王都に近づきたいな…。生きている人がいたら保護していこう。怪我している人がいたら手当をしてあげよう。魔族がいたら拘束して情報を聞き出そう…。
出来そうなことを頭に思い浮かべ、想像する。
想像できることは実現可能だとよく言うもんだが…、出来ることなら良い想像が実現してほしいと願う。
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