うまくいかない
「この魔剣…僕が使ってもいいのかな…誰かほかに持ち主がいたんじゃ…。それでもし、僕が使っているのを見て盗んだ! とか言われないだろうか…」
ブラックレイリーの剣身を見るに、僕より相当大きい人が使っていたのだろう。
なぜ大樹に刺さっていたのかはいまだに不明だが…。
このままずっと魔法の袋内に眠らせて置くのも、魔剣が可哀そうなので持ち主が現れた時に返せばいいから、少しだけ僕たちの手助けをしてもらおう…。
自分の血を使って剣の長さを調節し、理想な長さを体現する。
持ちやすくなったブラックレイリーを左手で持ち、エルツさんにもらった魔剣を右手で持つ。
エルツさんから貰った魔剣は鉄の色に輝いており、凄くシンプルながら鉄をも容易く切断する切れ味が特徴的、魔石を使えば魔法効果を得られる。
右手と左手でほぼ同じ大きさの剣を持つと分かるが、何となく今の自分にはまだ早いと考えられるようになってしまった。
カッコつけて2本の魔剣を振ってみるものの、あまりにも上手く使えないのでそれぞれの用途で使う方向で行こう。
僕がブラックレイリーをしまうと安心したかのようにフリジアが話しかけてきた。
「それじゃあ今日は、木の上に行ってみようか。地上でやるのと木の上でやるのとでは全く違う感覚になっていると思うから。しっかりと木の上でもできるように体をしておかないと」
フリジアに連れていかれ、深い森の中にやってきた。
「それじゃあ、まずはこの木の上で魔力操作を行ってもらおうかな」
――結構な高さの木だ…ここから落ちたら普通に骨折…頭から落ちたら首の骨が折れて死ぬだろうな…
「分かった…」
フリジアに言われた通り木の上に行き枝の上に立つ。
意識を集中し、昨日と同じ工程を繰り返す。
――あ…確かに昨日よりもすごくやりづらい。
せっかくあそこまで教えてもらっていたとしても、今日上手く行かないと…昨日やった練習が無駄になってしまう。
何度やっても…全く上手く行かない。
「ごめんフリジア…全然うまく行かないよ…。昨日やった練習が無駄だったみたいに…」
僕は珍しく弱音を吐いてしまった…。
出来るだけ吐かないようにしていたのだが…不意に零してしまったのだ。
「そんなことないよ、無駄な練習は一個もない。無駄なことなんてこの世界中探してもないんだよ。何事なのは、一生懸命取り組んでいたらきっと大きな力になるって信じる心だと私は思うんだ。だからヘイヘ君もできるって信じなきゃ」
フリジアに励まされながら、何とか魔力を動かし続けた。
その日の終わり後には体中の節々に過度な痛み…全身の疲労感が残りった。
それでも…、魔力操作が上手くいかず、たった一日しか練習してないのに…勝手に自信を無くし、自暴自棄になり今日1日の練習が全く自身の力になったような気がしなかった。
ただ時間だけが過ぎてしまったかのように感じる。
「はぁ…今日はあまりうまくいかなかったな…明日にはもう出発したいって言うのに…」
本来なら3日ほどで修得して王都まで一気に向かうつもりだったのだが…いまだに感覚を掴めないでいる。
実際のところもっと時間を懸けて学ぶのが普通なんだろうが…僕にそんな時間は無い。
「それなら…明日には移動しながらの練習に替えていこうか、そうした方が少しずつでも進めるだろうし」
フリジアからの提案だった…。
僕に見かねたわけではなく、僕の不安を少しでも解消しようと考えてくれたのだろう。
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