反復練習
移動させるのは話が別で、重くなった魔力を何とか押し出して移動させている感覚なのだ。
「グググ…」
「魔力を移動させる時は出来るだけ滑らかに行わなければならない。初めは魔力の流れが凄く遅いけど、繰り返すうちに早く流れるようになるから、それまで反復練習ね。言うなれば柔軟と同じ、最初は固い筋肉でも、何度もほぐしていればよく伸びるしなやかな筋肉になる。魔回路も魔力を何度も何度も流していけば、送る工程が早くなるの。道をある程度整備すれば馬車が早くなるのと一緒で、格段に魔力が使いやすくなる」
「そう…言われても…はぁはぁ…」
僕の魔力は膝まで到達した。
「ん~だいぶ減ったね…50%くらいかな…それじゃあ最後の足裏まで行ってみよう」
「これ…足裏だと…感覚が難しいな。手と全然違う」
「人は無意識に体を使っているからね。実際、2足歩行をできる動物はいないよ。魔物はよく2足歩行しているけど、あれはほぼ魔力で維持している状態だから。私達みたいに魔力を使わないで維持するのは凄く難しいの。魔力操作で大事なのは今まで無意識で行ってきた工程に意識を向けて行う…。この行動に慣れてきたら、また無意識に戻す。これを繰り返してどんな状況でもすぐ耐用できる体になっていく」
「はぁはぁはぁ…そうなんだ…」
「うん…10%くらいだね。足裏には少なくても80%くらいの魔力を溜めたいから、もっと練習あるのみだね。それじゃあもう一回魔力を溜めなおすところから始めようか。溜まり過ぎたら魔剣に魔力を溜めて、もう一回、何度も何度も反復練習を繰り返すよ!」
「ううぇ‥‥」
その日は魔力操作の繰り返し…。
何度も何度も魔力を掌に集めては足裏まで持って行く。
逆に足裏から掌まで魔力を移動させたりもした。
1日目はそれで終わってしまった。
朝から晩まで魔力回路なるものを酷使し続け、僕の体は限界をとっくに超えていた。
「はぁはぁ…痛つつ、もう腕が上がらないよ…足も震えているし」
「ちゃんと魔力が体に馴染んで来ている証拠だよ。もし体が痛くなってなかったら明日も同じ工程を繰り返さなきゃいけなかった。ヘイヘ君は今日の練習をまじめにやっていたから痛みが出ているんだよ」
「そうなんだ…それなら良いんだけど。これじゃあ、明日に痛みの影響が残っちゃうんじゃないか」
「魔回路は、使えば使うほど強くなっていくから。今ヘイヘ君の体中で魔力によって傷つき伸びて行った魔回路は強くそして柔軟な軟らかさになるよう修復されている所だよ」
「そうなのか…それにしても、中々に痛いな…筋肉痛の比じゃないぞ」
「そりゃあ、初めてちゃんと魔回路を酷使したんだから当たり前だよ。今度からは痛みが出にくくなって行くはずだから、酷使しても体に異変が起こらないくらいになったら相当が鍛えられていると考えてもらって良いよ」
「そうなんだ。フリジアもこんな経験したの?」
「そりゃあ、私だって通った道だよ。教えてくれたのはお父さんだったけど、ヘイヘ君みたいにうまくできなかった」
「え…僕って上手いの? そんな感じ全くないと思ってたけど」
「上手いでしょ、だって初めて意識してやってそれだけ疲れるくらい頑張ってたんだから。頑張れるのも才能なんだよ」
「はぁ…。そういうものなのか…」
「そういうものなんだよ。魔力がもっとうまく使えるようになれば、戦闘の幅も広がるし、疲れにくい体になって全力を維持しやすくなる。体の補強や感覚の増幅など色々な使い方が出来るようになるはずだよ」
「今の僕からは全く想像もできないな…。今は溜めると止める…くらいしかできないから。そんな応用が出来るようになるには、相当時間が掛かるんだろうな…」
僕は焚火に薪を加えながら、呟く。
「はぁ…もう少し早く練習をしていれば…。もっと早く王国へ迎えたのに…」
「遅かれ早かれ、これから必要になってくる技術なんだから今、これだけ早く練習できて幸運だって思わないと。なんでもそう、過去をどれだけ悔やんでも取り返しはつかない。あの時ああしていれば…何て今悩んでも仕方無いの。それなら今動きだして少しずつ未来を良い方向に持って行かなきゃいけない。だからヘイヘ君が遅すぎたなんてまだ決めつけるのは早いよ」
フリジアは真剣なまなざしで答える。
「それもそうか…、じゃあ僕も将来後悔しないように今頑張らないといけないんだ…」
「その意気だね。さ! ヘイヘ君は眠ってていいよ。今日は私が火の番をしているから」
「ならお言葉に甘えて…少し眠らせてもらうよ」
ヘイへは地面に寝転がり、睡眠をとる。
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