街の現状
「ここが出口…」
木の格子が設置されており、薄い床板で偽装されていた…。
「これでよく…隠し通せたな…」
そう思いながら僕は格子を外す。
頭を出し周りを確認すると、そこは倉庫の中だった。
周りは大きな木の箱が積み上げられており、穴を隠していた。
「なるほど…倉庫に繋がっていたのか…」
僕は木箱の段差をうまく使い、上までよじ登る。
倉庫には誰もいない。
「よし…フリジアこっちに来ても大丈夫だよ」
一度下まで戻りフリジアの手を取って引っ張り上げる。
「ふぅ…何か嫌な空気ね…。重いというか…肺に詰まるって感じ…」
「確かに…それにこの木箱…いったい何なんだ…」
近くにあった木箱の蓋を開ける。
すると中には…。
「うわ…凄い量の武器が…この箱には剣…こっちには槍が…」
「それじゃあ…ここにある木箱は全部武器だって言うの…」
倉庫の中には数えきれないほどの木箱が積まれており、一箱開けただけで武器が見つかるのだからここにある木箱全て武器であってもおかしくない…。「
とりあえず街の様子を見てすぐ撤退しよう。長居は危険だ」
「そうね…とりあえず現状だけでも記録に残しておきましょう」
音がならないよう静かに歩き、扉に手を掛ける。
数㎝だけ扉を開け、外の様子を確認した。
そこは僕の知る街ではなくなっていた。
「何だこれ…人族が作った建物は既に壊されていたけど…まさか…」
僕の瞳に映ったのは魔族の住む街だった。
行きかうのは人ではなく魔族…今のところ鎧を着た魔族軍しか見かけないが…隣を見ると、ズラッと同じような倉庫が並んでいた。
僕たちの居る場所は恐らくいくつもある倉庫の1つ。
武器や食料を貯蔵しているのだろう。
「すでに人の街は魔族の住む街になってしまっている…。これ以上進むのは危険だ…」
「そうね…引き返した方が良いわ」
僕とフリジアは街の内部に到着して数刻で街を後にした。
この即決が重要になってくるだろう。
長い時間滞在すればその分、見つかる確率が高くなってしまう。
「でも…この道があの倉庫内に作られてるんだから、あの街の中に獣人たちもいるのか…いや、僕たちみたいに偵察要因として数人紛れ込んでいるのかも…」
「急ぎましょう。街がこんな状態なら王都は…」
「うん…急ごう!」
僕たちは入ってきた穴から外へ出る。
「あれだけの数、魔族がいるなんて…」
「でも…人族はまだ居なかったから、きっと拠点なんだよ。まだ負けたって決めつけるのは早すぎる」
フリジアの言う通り、まだニア―タウンだけを見ただけで人族が負けたと判断するには聊か情報が枯渇しすぎている。
僕が逃げ込んできた時でさえ既に魔族に占拠されていたんだ…。
「王都へ急ごう!」
「ええ!」
僕とフリジアはすぐにフィーアさんに連絡用の羽を飛ばし情報を伝える。
「ここから王都まで歩いて20日…くらいかかる、それじゃあ時間が掛かりすぎるよな…。でも走るのも危険だし…」
僕は迷っていた。以前、街から王都までの間を行き来した経験から推測する。歩いた場合相当時間が掛かる。走ればもっと早く付くのは分かるが…どこに敵が潜んでいるか分からない状況で、身勝手な行動は死に直結する…。
「それなら…木の枝を使っていけばいいんじゃない」
「え? 木の枝を…、いやでもそれはフリジアみたいな身体能力の高い者にしかできないでしょ。僕みたいな一般人にはそんな身体能力はないよ…」
事実を考えて、出来るかもわからない奇行をするより、着実に近づける方法で王都まで行ったほうが早く付けるのではないだろうか…。
「ヘイヘ君ならできるよ。大丈夫、コツを掴めばすぐ慣れる。慣れてしまえば地面を走るより格段に移動する速度が上がるはず。例え1~2日練習に当てたとしても、残りの18日以内に王都に付ければ地面を慎重に歩いて危険を回避するより格段に効率が上がると思うの」
フリジアの発言も分かる…。
この僕が本当にできるのだろうか…出来るのだとしたら…。
いや、出来る出来ないじゃなくもうやるしかないんだ。
何のために僕はメイを置いてまでエルフ国を出てきたと思っている。
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