ワイルドボアの調理
「あったあった…ちょうどいい大きさの薪だな、乾燥して使いやすそうだ。何か木の実でもあれば彩りも綺麗になると思うんだけどな…。あ…これ」
そこで見つけたのは少し前に、ラーシュ君と食べた木の実だった。
あの時はまだ、獣人族を疑っていた時だった為、ラーシュ君すら僕は少し疑っていたのかもしれない…。
今になってもずっとラーシュ君のことが気になって仕方ない。
「きっと…大丈夫だよね。アランさんとミーナが迎えに行っているはず…」
あの2人なら大丈夫だと何度言い聞かせても、心のもやもやが、晴れない。
いついかなる時もラーシュ君を忘れられないのだ。
僕は少し木の実を積み、薪と一緒に持ってフリジアの元へ戻った。
「どうやってこの肉を調理しようか…」
「え、そのまま丸焼きにするんじゃないの?」
「フリジアは時々大分豪快なんだね…」
「だって、肉なら丸焼きにするのが一番楽で美味しいでしょ」
「確かに分からなくもないけど、あんまり森の中で何かを焼くってのは危険なんじゃないかと思う。他の魔物や動物をおびき寄せてしまうかもしれない」
「そう、ならどうやって調理するの?」
「蒸し焼きにしようと思う」
「蒸し焼き…どうやって」
薪に火を付け焚火を作る。
その中に適度な大きさの石を投入。
石が赤っぽくなってきたら取り出し、先ほど開けておいた穴の中に敷き詰める。
その上から土を被せて…草で床を作る。
その上に大きめの葉でくるんだワイルドボワの肉を置いて…また上から草で蓋をする。
「へぇ…これで蒸し焼きになるの? 普通に焼いたほうが早いと思うけど」
「まぁ、たまにはこういった食べ方も試してみないと、食に飽きてきそうだから…」
「人族って無駄に食に厳しかったり、手を込んだりするよね。私達エルフとは大違い」
「確かに、エルフは取ってきたものを鍋に入れ込んで煮込むと言ったお手軽料理が多いかもね」
「そうそう、味も薄々だし、野菜ばっかりだし、おまけに1日一食だなんて…ホント変わってるよね。私は味の濃い料理が食べたいし、お肉も食べたい、1日3色は食べないとお腹が空いてきちゃう。つくづく変わってるよ…私も…」
フリジアは足を抱え込むように座り、ブツブツとそんなことを言っている。
「大丈夫だよフリジア、別に変ってないさ。フリジアはフリジアなんだよ。周りが違っていてもそれが心地いいと感じないのなら自分の感覚に従ってみても良いと思うんだ。フリジアも生きたいように生きた方が良いよ。こんな世の中だしいつ終わってしまうか分からないんだから」
「そうね…死ぬときああしてればよかったなんて思いたくないしね。良し! いっぱいお肉食べるぞ、もう今晩で3食分食べちゃう勢いなんだから!」
フリジアは立ち上がり、夜空に浮かぶ星に手を翳す。
「何をしているの?」
「これはね、ちょっとした御まじない。星に願うと叶うって言う。中々適当な感じなんだけど…でも、願うって大事だと思うの。願えば自分の頭に残る、そうすればそれに向っていこうって体が勝手に動こうとしてくれる…そんな気がするの」
「へ~、それで今は何を願っているの?」
「内緒。願い事は誰にも言わない、そうした方が効果的なんだって。でも夢は話した方がいいんだって。」
「そうなんだ…」
焚火もだいぶ弱まってきた。
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