東国へ入国
「これだけの人が流れ込んでくるとは…いささかどうしたものか…」
「ソン様、次々と王国から大勢の避難民が押し寄せてきております。どういたしますか?」
「そりゃあ…まぁ、見捨てる分けにも行かないから、受け入れるしかないでしょ…」
「分かりました、では王国からの避難民を受け入れる態勢を整えます」
「ああ、よろしく頼むよ」
「は!」
一人の女性はその部屋から出て行った。
「ああ…どうして私がこんな事を…父上がいきなり倒れたと思ったら、すぐ私に王位を継承し…この国の王に就任させられてしまった。その矢先…戦争が起こって我が国のも火の粉が散ってきている…。この私が何とか出来るものなのか…まだまだ知識不足が否めないこんな私に…」
東国王ソン・マサシ、彼はかつて王国内で国の特産品であるお米を使ったお握りを売りながら社会勉強をしていた。しかし、前国王の体調がすぐれないことから、王位を受け継ぎ王となってしまった。
ソン自身それほど王の器ではないと自覚しているのだが…前国王の息子である以上、色々と責任が付きまとう。
ソンも国王になる前はとても充実した日々だったのだが…国王に就任してからは休む暇もなく働き、好きでもないことをやらされ気が参ってしまっていたのだ。
「いったいこれだけの数、よくここまでたどり着けたよな。俺たちは結構危ない目に合ってきたって言うのに」
「そうだな…多分移動していた数の違いで判断されたんだろう。ゴブリンたちも数が多く危険な相手だと知っていたら近づいたりしないだろう」
「じゃあ…タルピドゥには襲われなかったんですかね」
「タルピドゥはきっと縄張りを脅かされたから怒っていたんだ。あの道が丁度タルピドゥの縄張りを避けるように作られていたんだよ。俺の考えだけどな」
「だが…山賊にも合わなかったし…野盗にも出会わなかったぞ? さすがにどこかに潜んでるんじゃないか?」
「そうだな、確かに野盗や山賊が居たかもしれない。しかし、そいつらは少数で行動していたはずだ、それに俺たちと同じように道を外しているはず…」
「そうか…ゴブリンやタルピドゥに遣られた…可能性があるんですね」
「なるほどな…確かにそれならつじつまは通る…」
「山賊も野盗も実際は冒険者の端くれ…又は金のない農民や国を追われた他国の民などが金欲しさに人を襲い、金品を奪うと言った所業を繰り返している奴らだ。実力者は冒険者で十分成功するため、山賊や野盗になるような奴らは大体、冒険者として失敗している場合が多い。俺たちもその道に一歩入りかけたがな…」
「ああ…あの時は相当精神がすり減ってたからな、正常な判断が難しかったんだよ」
「あの時、この2人が止めてくれなかったら俺たちもどうなっていたか分からないな」
5人はリーシャたちの方を見る。
「いきなりなんですか、貸し困っちゃって…私たちもよかったですよ、何とかここまで運んでもらえて。ホントに助かりましたから」
リーシャは感謝の言葉を述べるとともに一礼をする。
ラーシュもそれを見て一礼した。
「おいおい、依頼主がそんな貸し困らないでくれよ。それにまだ依頼は終わってねえぞ。あの国の中に入ってやっと依頼達成だ」
濡れた髪をかき上げ、レオンは笑う。
「そうですねまだ依頼は達成されていません。最後まで気を引き締めていきましょう。何があるか分かりませから」
「ああ、そうだな…油断が一番危険な行為だ。例え国がそこにあったとしても中に入るまではまだ安心できない」
「そうだな、必要になればまた剣を抜く可能性があるってことか…」
「ああ、出来ればもうこの剣は抜きたくないがな」
しかし…いくら待っても東国が難民を国内に入れるそぶりが見えない。
「おいおい…早くしてくれよ…こちとらずぶ濡れなんだぞ…。他の難民でさえ震えてるってのに…夜になり一気に気温が低下する」
濡れていた人々は気温の低下と共に体温まで低下し続け、行動が不能になってしまう。
特に子供やお年寄りは体力のある大人とは違い、比較的体力が少ない。
その為か、次第に倒れていく難民の姿が増えだした。
こうなってしまえば、難民の行動は1つしかなく、東国に怒鳴り込むと言った行動に出ていく。
初めは音信不通だったが、次第に門が開いていき、ようやく数人ずつだが東国に入れてもらえるようになった。
どうやら東国は難民を受け入れるための準備を行っていたらしい。
何もない状態で受け入れてしまった場合、国内で混乱が巻き起こるのは容易に考え付く。
施設や食料の確保などによって時間が掛かってしまったらしい。
警戒していたゴブリンやタルピドゥの姿は無く、何とかリーシャたちも東国へ入れた。
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