自殺行為
「そりゃぁ…あれだけの大物と戦って興奮しない冒険者はいないだろ」
「レオンはもう冒険者じゃないけどね」
エジンはレオンに対してやれやれと言った具合で語りかける。
「いいだろ、そこは。元冒険者も冒険者も変わらねえよ」
「いや…変わるでしょ」
「しかし…武器を失ったのはデカいな…。エジン以外は全員タルピドゥを抑え込むために武器を置いてきちまったからな…」
そう、例えボロボロの剣であっても有ると無いでは雲泥の差である。
冒険を生き残れるかは武器の質で変わるとも言われている。
その為、何も持たずに行動するのは、冒険する者達にとって自殺行為と同じなのだ。
「今残っている武器や道具はなんだ…確認しておこう」
「私とラーシュちゃんはそれぞれガタ―ナイフ1本とクリップポイントナイフが1本…縄と薬草が少し…」
「俺たちは、レオンのホローグラインドナイフ1本と仕込みの針や糸鋸が少し…エジンの剣が1本護身用のシースナイフが1本…他の3人はほぼ持ち物無しだ…。さっきのタルピドゥを足止めするために、それぞれの武器を置いてきちまったからだな」
「これはどう考えても…」
「ああ…無謀だな…。もし、またタルピドゥみたいな大物が出現した場合…俺たちに対抗できる手段がもう…無い。俺たちの魔法でダメージを与えられる奴ならいいが…ファイアだけで死ぬ魔物は殆どいない…生き残るのは無理だろう」
「俺…さっきの『スパイラルネット』でほぼ魔力ゼロなんだけど…出し惜しみしてたら駄目だと思って全部の魔力を使っちまった」
「いや…その判断は間違ってなかったと思うぞ。実際『拘束魔法』が無かったら、簡単に回避されていただろうからな」
「それよりどうしようか…。まだ東国まで半分以上も移動距離は残ってる…一回王国へ引き返して武器を調達してきた方がいいのかな…」
「それも一つの手だが…危険は高いな。この場所から王国に無事付けるとも限らない…。実際今大型の動物や魔物に襲われるだけでパーティーが崩壊しかねないからな…」
「そうね…じゃあこれからどうすれば…」
「そこでだ…。そこのガキ…さっき一番最初にタルピドゥに気づいたよな。何か特別な力でも持ってるのか? 俺は全く気付かなかったんだが…」
レオンはラーシュを睨み、ただの子供にしてはやたら足が速かったりと疑いの目で見ていた。
「えっと…ラーシュちゃんはね。ちょっと他の人とは違って感覚が鋭いの。だからよく危険を察知してくれるのよ」
リーシャは慌ててフォローに入り、レオンがラーシュに対する疑いの目を払おうとする。
「それじゃあ…今のところガキのよくわからねえ感覚に頼るしか、生き残る方法は無さそうだな…」
「え…僕が、何かお役に立てるんですか…」
「ああ…今の俺たちにはお前に頼るほかない…。出来るだけ被害を最小限に抑えられる行動をとるには敵の行動を知り、迅速な対応が不可欠。だが…敵に気づけなければ対応もくそもない。はぁ…練習なんてしている暇はない…、一発目から本番だ。こうなっちまったら、勝つか負けるかの二択しかない。だが勝つに限りなく近づけるために武器や魔法があるだけだ。戦闘を避けられるのなら避けた方が今の状況的に効率が良いからな」
「ぼ…僕…そんな大切な仕事…任された覚えありません…。ちょっと前に、大切な人と移動してただ、えで…」
「大丈夫よラーシュちゃんなら、きっと出来るわ。何も全部の敵を探れと言っている分けじゃないの、タルピドゥみたいに強くて大きな生き物だけ感じ取ってくれればいい。小さな生き物たちならきっと今の私達だけでも対処可能だから」
「そう言うこった。ちび助は俺たちの事を気にする必要ねえ、何かあったら一目散に逃げてくれよ。ちび助が食われてる光景なんて見たくねえからな」
パーティーの1人である男がラーシュの頭をガシガシと撫でる。
「わ…分かりました、出来るだけ頑張ってみます…」
リーシャたちは陣形を変更し、ラーシュを中心としたダイアモンド型を作るような陣形になった。
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