野盗と共闘
「ちょっとした拘束魔法です。私やラーシュちゃんに危害を加えようとした瞬間、あなた達の体は硬直して動けなくなります。あ…、この魔法は私が生きている限り永続しますので…もう一生あなた達は私とラーシュちゃんに手出し出来なくなりましたよ。それに…」
リーシャはナイフを再度野盗の首元へと持って行く。
「危害を加えようとしたら…こうやって、返り討ちにしますよ…」
野盗の額からは冷や汗が止まらない。
自分の命を握られている感覚…。
「逃げたければ…逃げてもらっても構いません…どうしますか?」
「報酬は…報酬はなんだ…」
「そうですね…言うなれば…、あなた達の命…でしょうか」
「ふざけやがって…リスクしかねえじゃねえか…」
「別にいいんですよ? もう一度、あなた達を木へ貼り付けにしても…。動けないあなた達をなぶり殺しにしても…いいんですよ?」
この世の物とは思えない形相で語りかけるリーシャ…
「クソ…分かったよ…、やりゃあいいんだろやりゃあ!」
「ありがとうございます。交渉成立ですね!」
――ふ~、中々凝った芝居だったんじゃないかしら。私が人殺しなんてするわけないのに…。
「リ…リーシャさん…そんな怖い人だったんですか…」
ラーシュはリーシャから2、3メートル距離をとった。
――え!ちょっと、ラーシュちゃんそんなに引かないで…演技、演技だから!
リーシャは初めに縛っていた野盗の4人を解放した。
先ほどの光景を見ていた為か、私達に攻撃してくる者はいなかった。
そう考えると、決して頭の悪い人たちではないのだろう。
「それで、具体的に俺らは何をすればいいんだ?」
「簡単に言えば、私達を安全に東国まで送り届けてくだされば依頼終了です。その後はどこにでも好きな所へ行ってください」
「そうかよ…。で、俺らの武器はどこにある」
「こちらに纏めて置いてありますよ」
リーシャは取り上げた武器の置いてある場所まで野盗達を案内し、5人それぞれが自身の武器を取り付けた。
「フゥッ!!」
一人の野盗がリーシャの首元に向って剣を振りかざすが、首から数センチメートル離れた所で静止する。
「何だこりゃあ…マジで固まるじゃねえか…。リーダーがふざけてたわけじゃねえんだな…」
男は剣を下し、綺麗な円の軌跡を描きながら鞘に戻す。
「さてと…5人いますから2人は私たちの護衛。もう3人はあたりの偵察に行ってもらいましょうか。私たちの護衛は私に切りかかったそこの2人、残りの3人は私たちが進む先に敵が居ないかを探ってきてください」
「逃げても知らねえぞ…」
「それならそれで構いませんけど…1人で生きて行けるほどこの世界は甘くないんじゃないですかね。それにこれからもずっと野盗生活を続ける気ですか?」
「チッ! 分かったよ、やりゃあいいんだろ」
リーシャから役割を聞いた野盗の3人はそれぞれ違う方向へ向かっていき、数10メートル先に息をひそめて辺りを窺う。
「では行きましょう。今日は15キロメートル付近まで向かいたいと思います。これだけいれば魔物も襲ってくることは少ないでしょうし、敵も見つけやすくなりました」
リーシャたちはでこぼこ道を出て、踏み慣らされた道へと戻る。
ベースキャンプには人影1つ無い。
「東国に向っていた人は私たち以外にはないかったのですか?」
「そうだ、俺たちが待ち伏せしてから通りかかったのはあんたらだけだよ。どうやらとっくに先を越されちまったみたいだ」
「名前を聞いた方がいいですかね?」
「いや…別に知らなくてもいいだろ」
「知らないと助けを呼べないじゃないですか。私の名前はリーシャ、特技はちょっとした治癒魔法が出来ます」
「聞いてもないのに、勝手にしゃべりやがって…。俺の名前はレオン、元疾風隊のリーダーだった男だ。特技…ちょっとした剣劇と、隠し細工…だな…。こっちの男はエジン、副リーダーをやってた、まぁよく失敗する奴だが…大きな失敗はしないから気にしないでくれ。残りの3人もおいおい説明する」
「えっと…僕の名前はラーシュと言います…初めまして」
まだ相手を信用してもいいのか決めあぐねているラーシュだったが、今の自分だけではきっとリーシャの足手まといにしかならないと分かっていたので、危険だとしてもこの話に乗っかった。
「そいつはあんたのガキか? それにしちゃあ…似てねえが」
「私たちは親と子の関係ではないですよ、同じ境遇のおともだちってところですね」
「そうかい…ある程度理解した」
ベースキャンプ内を捜索したが特に何もなくもぬけの殻だった為、そのまま東国に向う。
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