野盗…
「ラーシュちゃん、まだ嫌な気配を感じる?」
「いえ…いまの人たちで何も感じなくなりました」
「そう…なら警戒を怠らないようにしつつ、私についてきて…」
「はい…」
リーシャはすぐさま野盗たちに接近し、持ってきたロープで手足をきつく縛る。
野盗が紐抜けを行えないよう工夫し、所持している武器をすべて取り上げた。
5人それぞれ違う木へ結び付け、逃げられないようにする。
「これでよし…。運が良ければ誰かに助けてもらえるかもしれないけど…。魔物の餌になるか、動物の餌になるか…そのまま餓死するか…ま、武器を見れば分かるけど…結構な数を殺してるみたいだからね。私も容赦しない…」
野盗5人が所持していた武器は既にボロボロ…、刃こぼれが酷く何も綺麗に切る事は出来ない。
持っていこうと思ったが、武器は重すぎる為…しぶしぶ置いていくことにした。
「リーシャさん…すごいですね…。あっという間にこれだけの人を無力化してしまいました」
「いやいや、野盗に気づいてくれたラーシュちゃんのお陰よ。そのまま進んでたら私たちもきっとただじゃ済まなかったし。ありがとうラーシュちゃん」
「い…いえ、僕なんてただ…嫌な気を感じただけなので…」
「あと少しでベースキャンプだけど、4キロメートル付近に野盗が居るということは…ベースキャンプもあまり安心できない…場所らしいわね。私達は…ベースキャンプに行かず、ここで野宿しましょう」
リーシャとラーシュは落ちていた木々を集め、焚火を起こした。
リーシャたちの周りには野盗たちが木々に縛り付けられている。
森で2人だと魔物に襲われたとき逃げるのは難しいが、7人であれば少しでも助かるチャンスを作れるとリーシャは考えたのだ。
それにプラスして、今までの情報も欲しかったのだ。
「ん…んぅ…な、何だこりゃ…。どうして俺が…縛られてんだ…」
「お目覚めですか…野盗さん」
木々に縛り付けていた野盗の1人が目を覚ました。
「どいうつもりだ…俺を縛り付けやがって…」
「いくつか質問があるわ…。少しでも良いことをすれば神に今までの所業を許して堪えるかもしれないわよ」
「あんたが俺を縛ったのか…ふ…素人が…」
――あれ…抜けねえな、間接を外しても抜けねえ…それなら仕込みナイフで…て仕込みナイフまでねえ…。
「あなたが探してるのは…、この小さなナイフですか…それともこの糸鋸ですか…」
ラーシュは野盗達から奪い取った小物類を見せる。
「な! …あんたら…素人じゃねえな…。この結び方も素人が結んだとは思えね…」
「別にいまその話は関係ないでしょ。私は貴方に質問をするだけ、いい…正直に答えなさい」
「ちっ…」
――どうする、この女のいう事を聞くか…周りを見ても他の4人全員捕まってるしな。情けねえ…、このまま縛られっぱなしだったら…死、まっしぐらだ…。
「他に仲間はいますか?」
「いねえよ…木に縛られてるやつで全員だ…」
「いつ頃から森の中にいましたか?」
「少し前だ、確か…2日ほど前から森に居る…」
「何人殺しましたか…?」
「…まだ誰も殺してねえよ…」
「本当ですか…」
「ああ…森に着いてからは…まだな」
「……そうですか」
リーシャは一度考える。
「分かりました…明日の朝、なにもなければあなた達を開放しましょう。この小さなナイフたちもお返しします」
「いいのかよ…そんな事しちまって…」
「ええ…あなた達がなにもしなければ、いいだけですから。明日の朝までなにもしなければ、私はなにもしません」
「そうかよ…」
リーシャは小さなナイフと糸鋸をその場に起き、焚火の元へ戻る。
――あの女…なめやがって…。俺たちがなにもしない分けねえだろ! 夜明け前だ…夜明け前、一斉に襲い掛かって、なにもかも奪ってやるよ…。
野盗はラーシュとリーシャが寝静まるのを待った。
そして、夜中…自身の目の前に置かれた小さなナイフと糸鋸を何とかしてかき寄せる。
――クッソ…ギリギリ届かない所に置きやがって…。手が届かねえと…持てねえし、靴も脱げねえ…。
何度か目の前に置かれた小さな武器を手に取ろうとするも…ギリギリのところで届かない…、この工程を月が30度傾くほど行ったが…、無意味な時間だった。
――あれ…俺、逃げられなくてね…。他の奴らも…、逃げようとしているのか…誰でもいい…。早く抜け出せ。誰か1人でも抜け出せればこっちのもんだ…。
野盗は周りを見渡すと、他の仲間も悪戦苦闘しているようだった。
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