東国に向う:森の中
――今日の5キロメートル付近までを目標にしよう…。確か目標あたりにギルドのベースキャンプがあったはず。ベースキャンプまで行ければ夜に襲われる心配をしなくていい…。でも、森の中を進むのは普通に走る事よりもずっと難しい。平地の5キロメートルと森、山、地面の安定していない場所になると体感的に3倍は違う。5キロメートルならば15キロメートルと同等の体力を消耗するだろう…。
さらにただ急げばよいというものではない。危険な動物や魔物がいる中を警戒しながら進まなければならないのだ。そうなると…実際の時間より2倍は伸びてしまう…。できれば暗くなる前に到着したいけど…難しいかな…。
「ラーシュちゃん大丈夫? 疲れてない?」
「はい、大丈夫です。まだ歩けますよ」
人の姿になっているラーシュは、獣人特有の体力を失っている状態にある。
その為、無理して体を動かせば一気に体へ疲労が蓄積されてしまう。
子供の体には少しの疲労でも十分移動困難になる。
ラーシュが移動困難な状態に陥らないかリーシャはずっと心配だった。
東国までの道は一応作られている。
しかし…道に沿って進むのは余り得策ではない。
こういった事態のとき最も気を付けたいのは野盗の襲撃だ。
野盗は落ちぶれた冒険家、犯罪に手を染めた市民、戦争で故郷を追われた住民達などからなる組織の様なものだ。
王国でも問題となっており、外を移動する際は冒険家の護衛、またはパーティーの結成が必要不可欠になていった。
商人や物を運ぶ仕事をしている人は特に狙われやすく、出来るだけ金目の物を隠しながら移動しなければならない。
子供の多くは攫われ、他国の奴隷として売られるというのはよくあることだ。
万が一他国に売られた場合、ほぼ取り返すのは不可能である。
リーシャは考え事をしていると、後ろから何かに引っ張られた。
「な…なんだラーシュちゃんか、どうしたの?」
「この先…なにか嫌な気配を感じます。なぜか分かりませんけど…肌でそう感じるんです」
「そうなの…分かったわ。少し道を外れてゆっくり進みましょう」
リーシャ達は道からそれていき、森の中にスッと入って行く。
すると…道を挟むように、野盗らしき姿をリーシャは発見した。
「ほんとにいた…」
今の地点はちょうど4キロメートル付近、あと少しでベースキャンプといったところだ。
――ベースキャンプまであと少し、という心理状況を利用して判断を鈍らせ一番油断しやすい、4キロメートル付近に待ち伏せしてるってわけね。
「ここから見えるのは二人…まだどこかに仲間が隠れているかもしれないわね」
――でも…まずあの二人だけでも無力化しておきたいわ。
「どうするんですか…近づいて首を掻っ切る…とかするんですか?」
「そんな危険なことはしないわよ。まぁ…見てて」
リーシャは野盗に指を刺し、呪文を唱えた。
「『スリープ』」
すると、地面に魔法陣が浮き上がり野盗達は眠りについてしまった。
「仲間がいれば、なにが起こったか知りたいはず…」
リーシャの読み通り、仲間になにが起こったか知るため他の野盗は眠ってしまった野盗へ集まってきた。
「三人…先ほどの二人と合わせて五人…ちょうどパーティーの最適人数ね」
リーシャはもう一度野盗に指を向けると呪文を唱える。
野盗たちはその場で倒れ、眠りについてしまった。
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