東国へ続く門までの道
「ええ…期待しているわ。急ぎましょう」
リーシャはラーシュの手を握り、東国へ続く門を探していた。
その時…耳の鼓膜が破れたと錯覚するほどの爆発音が聞こえた。
リーシャは爆発音で鼓膜が破れ、音を拾えなくなったと錯覚し何度も声を出し続けた…。
すると、自分の声は耳からちゃんと聞こえることに気づき、鼓膜は破れていないと確認する。
「な…何だったんでしょうか…」
「分からないわ…。でもきっと戦っているのよ。私達を守るために…」
――そうだ…きっと死に物狂いで戦っているに違いない。だから私は何が何でも、生き残らなければならない。ジャスの帰ってくる場所を守るために…。
リーシャは麻袋に砂だらけの食料、少量の薬草を入れ、胸元に小型ナイフを忍ばせる。
麻袋を肩に担いぎ、リーシャは立ち上がる。
麻袋はリーシャにとって少し重い持ち物だった…。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。
子供のラーシュに持たせるわけにも行かず、リーシャ自身が麻袋を持つ事にしたのだ。
リーシャの見つけた中型ナイフを右手に持ち、ラーシュは辺りを警戒する。
「まだ、警戒するには早いんじゃないの? 森に着いてからでも…」
「いえ、知り合いのお姉さんから。『常に警戒を怠るな』と言われていましたから…。出来るだけ警戒しておこうかと…思いまして」
「そうなんだ、確かに警戒することも大切だけど…無理しないでね」
「はい…」
王国内にはもう既に、人影は見えない…。
――もう王国民は東国に避難したのかな。それともまだ王国の避難施設に居るのかもしれない…。でも…私の直感が…『ここに居たら駄目だ』と言っている。
リーシャ達は駆け足で門まで走っていると、地面に倒れている少女と少女を庇うように倒れている大人の女性を発見した。
リーシャはすぐさま2人に駆け寄り、意識の確認をする。
しかし…すでに、こと切れていた。
「所々に靴裏で踏まれた形跡…。きっと大勢で逃げるているとき、多くの人が気づかずに2人を踏みつけてしまったのね…。可哀そうに…。埋めてあげたいけど…そんな時間は無いの。許して頂戴ね…」
リーシャは両手を合わせ、簡単に祈りを捧げる。
――どうか、2人の魂が天高く舞い上がれることを…。
ラーシュもリーシャと同じように手を合わせ祈ってくれていた。
「よし、行きましょう。…ここでとどまって居たらいつまでたってもたどり着けないわ」
「はい…急ぎましょう」
走れば走るほど靴は汚れていき、服も飛び跳ねた泥のせいで白さを失っていく。
「王国ってこんなに広かったかな…。…まだ東国へ繋がる門が見えてこないんだけど…」
リーシャ達は走り出してから数刻経っていた。
門がそろそろ見えてきてもいいころだが、大きな建物に遮られ遠くを見渡せない。
――道はあって居るはず…、地面に人の通った足跡がくっきりと残っている。
「リーシャさん、見てください! 門が見えてきましたよ」
ラーシュの指さす方向には確かに門が見えた。
「やっとスタートラインまで来たわ。…ここに来るまでに、大分体力を使ってしまったわね…」
「はい…僕もちょっと疲れました…。でも止まっている暇は無いんですよね…」
「そうね…出来るだけ早く東国に着きたいもの。…よし! もう一踏ん張りと行きましょうか」
屈伸をして足の疲労を少し和らげ、腕肩腰を入念に回し疲労が残りにくくする。
「リーシャさん何してるんですか?」
「えっとね、体を動かしているの。こうやって筋肉をほぐすと疲労が溜まりにくくなるのよ」
「そうなんですか…僕もやっておいた方が良いですね」
ラーシュはリーシャの動きを見よう見まねで同じことをする。
2人は体をしっかりとほぐし、準備完了だ。
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