東国へ避難…
すると、リーシャたちの目の前を一人の男性が駆けて行った。
「ど、どうかしたんですか?」
「なにしてんだ、あんたら! 早く東国へ逃げないとだめだろ!」
リーシャたちはいきなり東国へ逃げろと言われ、混乱してしまう。
「東国に…何故ですか?」
「おいおい。さっきの放送聞いてなかったのか? 女、子供は東国へ逃げろって言ってただろ。冒険者達は、準備を整えて戦場に向う。今、戦場が結構やばい状況らしいんだよ。だが…この戦争で手柄を立てれば、冒険者ランクを一気に上げられる。それに名誉、金も手に入るんだ…」
「そうなんですか…分かりました。教えて頂いてありがとうございます…」
「ああ、さっさと逃げな。2人とも」
ラーシュちゃんはリーシャの背後に隠れていたが、男性には獣人だと気づかれることはなかった。
「僕…。獣人だって気づかれませんでした…」
まぁほぼ
「ほらね、気づかれなかったでしょ。避難場所に避難…まぁほぼ閉じ込められていたときだって、誰にも気づかれていなかったんだから、そんなにびくびくしなくても大丈夫よ」
「い…いえ、いつ魔法が解けるか分かりませんし…。用心に越したことはないです…」
ラーシュはフードをさらに深く被る。
「私達も東国に早く逃げなきゃ…。でもその前に準備しないと。食料も武器も無い状態で東国に向ったら、私達の命が危険だわ。水すら一滴も残ってないし…。まずは食料と水分、出来れば薬草とか武器も欲しいわね…」
――そうだ…、焦って行動して東国へ着くまでに私達が倒れたら意味ない。男性は『戦場が押されてる』って言ってたけど…きっと大丈夫。ジャスならきっと何とかしてくれる…。だって勇者だもん。
「ラーシュちゃん、私から離れたら駄目よ。2人一緒に行動しましょ」
「はい、僕も出来るだけ必要な物を探します。僕の鼻は利きにくいですが、普通の人よりかはまだ優れているはずです。食料は僕が見つけますから、他はリーシャさんにお願いします」
「ええ、任せといて。食料の方は頼んだわよ」
「はい、頑張ります!」
リーシャとラーシュは出来るだけ離れないよう行動しつつ、王国から東国へ移動する際に必要な物を出来るだけかき集める。
「王国から…東国までの距離は…ざっと30キロメートル…あまり歩いて向かう距離じゃないけど。しかたがない…。馬を見つけられたらラッキーなんだけど…そんなラッキーなことは無いしな」
――30キロメートルを私とラーシュちゃんだけで進めるか…すごく怪しい…。王国と東国の間には大きな森がある。ほとんどの国境付近に森は存在しているが東国の森は独特、嫌な雰囲気を放っていることで有名なんだとか。多種多様な動物、魔物が生息しており、いつ襲われてもおかしくない。その為、武器、薬草、食料が必要になってくるというわけだ…。
「ラーシュちゃん…そっちは何か見つけた?」
「いえ…まだ何も…」
家屋に入り何かないか探しているのだが…王国の人たちも東国に逃げたのだとしたら、それ相応の準備をして出発したのだろう、全く何も見つからない。
パンや小型ナイフすら見つからず…唯々時間だけが過ぎていった。
「一か八か市場に向ってみよう。もしかしたら何か残って居るかもしれない」
「わ、分かりました」
リーシャは何とか昔の記憶をたどりながら、市場までの道を少しずつ進んでいく。
強風は『こっちに来るんじゃない!』と言うように、リーシャたちへ強く吹いている。
しかし、リーシャ達は立ち止まる分けには行かない。
何としてでも生き延びなければならないのだ。
生き延びなければならないと思うだけで、2人の足に力は入る。
強風を耐え続け市場にようやく到着したリーシャ達は、ほっと胸を撫で下ろした。
「見てください、リーシャさん。干し肉が地面に落ちてました。大分…砂塗れですが、砂を落とせば食べられなくはないと思います」
「そうね…あまり贅沢は言ってられないもの。。食べられる物があるだけありがたいわ」
その後も小型ナイフ、ロープ、少量の薬草を手に入れ収穫は良好だった。
「よし…最低限の物はそろった。ラーシュちゃん東国に向おう。途中は危険な森を通ることになるけど…きっと生き残れるはずだから…」
「はい、大丈夫です! 僕はリーシャさんにちゃんとついていきます。可能なら魔物の臭いを嗅ぎ分けられるよう努力します。少しでもリーシャさんのお役に立ちたいですから!」
――ラーシュちゃんはこんな状況だというのに、まだ他の人の心配が出来るのね。なんていい子なのかしら…。ヘイヘ君…早く迎えに来てあげて…。
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