仕事
「はぁ、今日は初日とはいえ…こってりと絞られたな」
工房にて
「そうじゃない、さっき見てただろ!」
「はい!すみません」
――ずっとこんな感じでエルツさんの足手まといにしかならなかった。
「ナイフ1本も作れなかったな…」
そう思うと同時に、僕は顔を両手でたたいた。
「まだ1日目じゃないか。いつかエルツさんにも認めてもらえるように頑張ろう。それにしても…このナイフはうれしかったな」
ナイフを月に照らすと、漆黒の鉄色が月の光を反射して輝いて見える。
「僕もいつかこんな武器をつくれる日が来るのかな…」
ナイフをしまおうとしたが夜中だったので視界が悪く、うまくしまうことができずにナイフが地面に落ちてしまった。
「しまった!」
すぐさま拾おうと思い、身をかがめると…ナイフが地面に突き刺さっているのが見えた。
「!」
僕は目を疑う。
初めて見た時何が起こったのか理解できなかった。
「す、すごい…地面にナイフが突き刺さっている。こんなこと起きるか普通…」
驚きと恐怖が入り乱れる中、すぐにナイフを地面から抜き取り、すぐさま鞘にしまい家まで帰宅した。
エルツさんのところで働きだして1か月がたった。
――いまだに怒鳴られてばかりだけど、あの時よりかは幾分ましにはなったと思う。
「ヘイへ、今日はお前が働きだして1か月たったということで、ほら」
そういうと、エルツさんは、金貨2枚を直に渡してきた。
「ちょ、エルツさんいきなりそんな大金渡さないで下さいよ!」
――1か月長かったようで短かったような気がする。それに…ほんとに金貨2枚もらうことができた。でも、ずっと足手まといだった僕が報酬をもらってもいいのだろうか…。
「あの、僕ずっと足手まといだったと思うんですけど、本当にもらってもいいんですか?」
「確かにずっと足手まといだったな。だが、きっとお前は成長するだろうと思った。ドワーフは未来に投資するのが好きな種族なんだよ」
と物調ずらに似合わない笑顔を見せながらエルツさんは言った。
「投資ですか…分かりました。僕はいつかこの金貨以上の働きをして見せます」
「その意気だな」
――でも、いったいこの金貨はどこから出てきたんだろうか。実際、エルツさんの店にやってきたのは、初日に見た態度の悪い男だけだ。本人に聞くのはあまり良くないよな…。
「ありがとうございました、来月はもっと成長できるように頑張ります」
――今はまだエルツさんの足手まといかもしれないけど、いつかしっかりとした補助ができるようになりたいな。
「それじゃあ、この依頼報告書と依頼延長報告書をギルドに出してきてくれ」
「分かりました」
――ギルドか、1か月ぶりだな。
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