ジャスVSブロード3
――戦いとは流れだ…流れを掴むのか、捕まれるのか…。また、奪うのか…奪われるのか…。戦いとは流れによって、既に勝敗が決まっている。私は勇者に流れを取られてしまった。今は、勇者の戦いが流れている。それならば…奪い返すまで!
「く!魔弾か!」
ジャスは、空中で態勢を翻し、何とか魔弾を回避する。
「な…何処に行った…」
地面に着地したジャスは、ブロードの姿を見失ってしまった。
――何処に行った…、きっと近くに居るはずだ。
そう思ったのもつかの間、地面から両腕が出現しジャスの両足を掴んだ。
ジャスの両足は、地面に引きずり込まれていく。
「く…このままだとさっきの状況に逆戻りだ」
地面に引きずり込まれている間に、ジャスの拳が光る。
光る拳が硬い地面を一瞬で粉砕し、腰まで埋まってしまった体を地上へ戻す。
地面から這い出てきた、ザハードは『そんな馬鹿な…』と言った顔でジャスを見ていた。
――ブロードも…僕と同じで、きつくなってきたのかな…。
剣劇によって両者の体に付けられた、無数の傷口から鮮血が流れ出し、服はボロボロになっている。
「はぁはぁはぁ…」
「はぁはぁはぁ…大分辛くなってきましたか…。息が上がっていますよ」
「そっくりそのまま、言い返させてさせてもらうよ…」
両者ともに限界…と言った所だろう。
ジャスは魔力、ブロードは肉体…、何方も体が悲鳴を上げ始めていた。
――グ…魔力枯渇のせいか…、視界が揺らぐ…。
――次が最後の攻撃になるだろう…。既に内臓がいくつか潰れている…。動けなくなるのも時間の問題だ。
両者ともに向き合い、そして…踏み込んだ!
一斉に互いの間を埋め、切りつける。
ブロードは左腕方向から、ジャスは右腕方向から、今出せる全力の一撃を繰り出す。
剣身と剣身の衝突による爆風はすさまじく、辺り一面の木々草花を吹き飛ばし周りを遮るものは、何もなくなった。
互いの力は互角、どちらが先に切りつけるのか…、薙ぎ払うのか…。
互いの剣先は、目の前で犇めき合っている。
先に大きく動いたのは、ブロードだった。
一瞬で剣身を闇に染め、原形を替える。
ジャスの剣を遮るものが無くなり、力を入れていたジャスは体勢を崩した。
そのチャンスを狙っていたと言わんばかりに、闇に染まった剣身が一瞬で元の銀剣へと戻る。
体制を崩したジャスの首元に斬撃が飛ぶ。
しかし、ブロードは自分の体がズレていることに気が付いた。
――く!足をやられたか…。
ジャスは体勢を崩しながらも、そのままブロードの左足を切断していたのだ。
これによってブロードの攻撃はジャスからズレる。
ジャスは一瞬で態勢を整え、光る剣身をブロードの心臓へと刺し込んだ。
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