ジャスVSブロード2
「参る…」
――集中しろ…さっきまでとは一味違う攻撃が来るだろう…。
「フ!」
「グワァ!」
――何だ今の…、剣身が伸びた。
ジャスとブロードの間は約10m。
その間を瞬きする暇もなくブロードの剣身がジャスへと届いたのだ。
「フゥッ!」
――次は左下から右上に薙ぎ払う斬撃…。やはり、剣身が伸びている…。この距離が息つく暇の無い攻撃範囲になるなんて。僕が攻撃を与えるためには、自ら奴に近づかないと。アネモネの剣撃は、闇雲に突っ込んでも絶対奴まで届かない。魔法で牽制しようにも魔力がもう無いしな…。一か八かの賭けはしたくないけど、そうも言ってられない状況だ。
ジャスはその場から一気に加速し、ブロードとの距離を詰める。
「落とし穴の位置は覚えた…、もう気にする必要はない!」
――耐用が速いな…さすが勇者と言うべきか。だが…そう簡単に回避できると思うなよ。
ブロードは揺れる剣身を『ダークワンバー』へ向け一直線に伸ばす。
――僕の方じゃなくて…そっちに…な! マズイ!
ジャスを囲むようにして存在している黒い穴…、いったい何個あるのか分からないが、すべての穴から無数の剣身が姿を現す。
回避の難しい攻撃をアネモネで切り裂こうとするも、意志を持っているのか剣撃を回避してきたのだ。
「マジかよ!」
驚くのもつかの間、全身に痛み…不快感…体中に鉛でも入ったのではないかと思うほど、切り裂かれた部位が重い…。
無数の剣身がジャスの間接部位を動かない様、固定している。
その為、全く身動きが取れない。
「『ソードプリズン』どうやら決ったようですね…。どうです?身動きが取れないでしょう。このまま一気に行かせて貰いますよ!」
ブロードの右手はジャスを固定するため、塞がっている。
余っている左手をジャスの方向に向け魔法を放った。
『ダークショット』
指先から黒い球が発射され、ジャスの右頬を一皮掠める。
拘束されていない、首を後方に向けると。
小さな魔石ほどの大きさにも関わらず、地面を抉り、土が黒く変色していた。
「外しましたか…。やはり魔法は、難しいですね。どうやら私は剣の方が向いてるようです。次は外しませんよ。貴方の頭と胴体が離れ離れになる時間も残りわずかです」
――ヤバイな…。この状況じゃ…動こうにも無数の剣身が邪魔で抜け出せない。…たとえ抜け出したとしても、体が重くて真面に移動出来ないぞ。
「では…これにてチェックメイトです!」
ブロードの左手から、先ほどよりも大きな黒い球体が、ジャス目掛けて音も無く発射される。
――魔弾の軌道を見る限り、今回は確実に当たるだろう…。クソ! こんな所で終われるか!
何か考えろ、この状況を変えられる一手が欲しい。ほんの小さな隙間を潜り抜ける覚悟なら、既に持っている! 神よ!
ジャスが神に祈った時…。
今まで、一度も感じた事の無い爆風と地面の揺れが発生した。
ジャス達は、一瞬なにが起こったか理解できず、目を細める。
しかし、爆風と地面の揺れによって身を固定していた、ブロードの剣身が解かれた。
『ダークショット』も爆風により、軌道がズレ左方向へ流れていく…。
――好機だ! 今しかない!
ジャスは右手に持っている『アネモネ』を自身の左肩へ刺しこんだ。
すると体の重みが解消され、元の状態に戻った。
――やはり闇の魔力が体内の魔力循環を狂わせていたのか。これなら動ける!
「まさか、このような事態になるとは…。しかし、もう一度勇者を拘束すればいいだけの話だ」
ブロードもすぐさま体制を整え、ジャスの攻撃に備える。
ジャスは地面を強く蹴りつけ、全速力を出しただひたすら走った。
落とし穴の位置は先ほどの位置と変わっていない為、嵌る事無く突破した。
「ハァアアアア!」
ジャスは全く速度を落とさず、身構えているブロードに向ってアネモネを振りかざした。
黒剣と光剣がぶつかり合い、火花と魔力が飛散する。
――体格は私と、全く違うにも拘らず、これほどのパワーがあるとは…。メルザード以上か…。
「オラァ!!!」
「クッ!」
ブロードは弾き飛ばされ空中を舞う。
ジャスは逃がすべく跳躍し、ブロードの頭上から剣を振りかざした。
間一髪で斬撃を防ぐブロードだが、ジャスの一撃は余りにも重く、地面に突き落とされる。
ブロードは高所からの急降下によって、一撃の重さと重なり合い、地面へ勢い良く叩きつけられた。
「グァハ!!」
衝突した勢いがそのまま自身の肉体に直接響く。
衝撃が全身まで広がり身動きすることが出来ない。
しかし、その間にもジャスは空中から急降下してくる。
ブロードは激痛に耐えながら魔弾を放ち、少しでも着地のタイミングをずらす。
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