ジャスVSブロード
「はぁはぁはぁ…もう始まってる。僕が、戻るまで待てなかったんですか王様…」
この時ジャスは、人族軍が見える位置へ移動していた。
「ハァアアア!」
自身を奮い立たせるため、大声を出し、足へ力を入れる。
強く地面を踏みしめ、走り出し…一気に森を突っ切る。
「勇者様!」
「勇者様が来られたぞ!」
「皆!この戦いは、絶対に勝てる!僕が皆の先頭に立って戦うのだから!」
「ウオオオオオオ!!」
人族軍に加わったジャスは、一声で人族軍の士気を高めた。
「来たか…ジャス…、これで儂の役目も…いや、まだだ。王として最後まで責務を…全うしなければ、成らない」
王は自身の胸を叩き、気合いを入れる。
最後の一瞬まで、闘志を消さぬ誓いを立てたのであった。
「あとは…総司令を倒すだけだ…。総司令が王様と対峙し合った時、僕が切る!」
不毛の大地で両軍は衝突している。
人族軍に、後退の余地は無し。
その時は、国が亡ぶときだ。
魔族軍は後退の余地がある…。
しかし、先ほどの『催眠魔法』を再度、使われてしまったら、どれだけ多くの兵を集めた所で結果同じ事が起こる。
さらに時間を懸ければ懸けるほど、勇者たちの行動が活発化することも懸念されていた。
その為、引くに引けない状態となってしまったのだ。
両軍衝突後、魔族軍が優勢の状態が続き、次第に人族軍の兵士たちが忽ち減っていく。
ブロードは、シモンズ王へ接近するため、全速力で魔馬を走らせていた。
――我々が優勢な様だ…、このまま押し切る…!
「魔族軍の兵士よ!人族軍をこのまま、押し切るのだ!」
「まだだ!まだ踏みとどまれ!我々の心は、まだ折れてはおらぬ!」
人族軍は、魔族軍に押されながらも、何とか地べたに這いつくばりながらも、食らいついている。
「はぁはぁはぁ!」
ジャスは兵士たちの隙間を抜け、シモンズ王の元へ駆けつけた。
「王様!到着しました!」
シモンズ王は、傷を負った目をかっぴらいて命令する。
「ジャスか!よくぞ参った。今こそ勇者の本領を見せるときである。魔族軍の総司令を頼むぞ!」
「はい、お任せください。ここまで長引かせてしまったのは、僕の責任です。しっかりと後始末をするのは、当然の義務なので」
ジャスは、速度を落とすことなく、地面を走り、魔族軍へ突撃する。
「勇者だ!」
「勇者が出たぞ!!ぶっ殺せ!」
「ハァアア!!」
ジャスは、アネモネを使い、魔族兵を切り飛ばす。
――ギリギリ致命傷にならないよう、調整しないと…。
「グハッァ!」
「ギャワ!」
魔族兵は、ジャスによって次々切り飛ばされていく。
「あれは…フ!」
ジャスは、魔馬に乗る魔族が他の魔族兵とは、頭1つ抜けていた為、魔族軍総司令であると考え、一気に首元へ、アネモネを振りかざし、首を切り飛ばそうと試みるも…。
「甘い!」
「クッ!」
ジャスの振りかざしたアネモネは、魔族兵に惜しくも防がれてしまった。
その魔族兵を近くで確認したジャスは、思い出す…。
「貴方は…あの時、総司令を救出した…」
「さすが…勇者、私の姿が見えていましたか。私は、ブロード。元魔族軍総司令ザハード様の代わりとして、現魔族軍総司令を務めております」
ザハードは魔馬から降り、ジャスへ丁寧に挨拶すると。
銀色に輝く剣を構える。
答えるように、ジャスもアネモネを構えた。
「ハア!」
ブロードの銀剣が、心臓部へ一直線に突き出されるも、何とか剣身で受け流す。
「ソラァア!」
ジャスは、ブロードの手首を切りつけようと、アネモネを振るうも、ギリギリで回避されてしまう。
「クソ…当たらないか…。やはり動きが早い…」
ジャスは、先ほどの戦いで魔力をほぼ消費してしまっているため、大きな魔法を放つことが出来ない。
逆にザハードは、今まで出撃しておらず、魔力はまだふんだんに残っている。
実力は、勇者であるジャスの方が上かもしれないが、体力、魔力、の点から考えると、ブロードの方がやや優勢だろう。
だが…ジャスは、ブロードの早業を何とか技量で補い、対処する。
「フ!フ!フ!」
ブロードが、音速にも達する早さの3連撃を、人間の急所である脳天…心臓、首元に突き出す。
「パリィ!フッ…、パリィ!」
ジャスは、回避する場合、又…はじき返す場合をしっかりと把握し対処している。
勇者のスキルをもってしても、ブロードの音速突きを、回避するのは不可能であると悟ったジャスは、自身の少ない体力で、戦うため、音速突きをはじく為に、しっかりと見極める必要があったのだ。
――やはり勇者だな…私の攻撃を全て、受け流すとは…。しかし、見た所…奴は、すでにボロボロだ。ここで私が魔族長年の宿敵である勇者を殺し、完璧な勝利を挙げて見せる!
ブロードは一度後退し、呪文を唱えた。
『ダークスワンパー』
地面に触れると、触れた部分が黒く変色する。
いくつもの変色部位が、放射状に出現していき、ジャスの足場が狭まって行く。
――スワンプ…落とし穴か、地味だが厄介な魔法だな。こちらの行動が取りにくくなる。足元に注意を引かれると…相当面倒だな。
「まだだ…」
さらに、ブロードは銀色の剣身に触れ、自身の黒い鮮血を付着させる。
『ブラッディソード』
銀色だった剣身は、一瞬で黒く変色してしまった。
――何だあの剣…原形を留めていないぞ。
黒い剣身が、風に煽られる焚火の如く揺れている。
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