Sランク冒険者:ジャスVSケイジュ6
ジャスに時間は、残されていなかった。
既に3分の1の兵士が戦死し…残っている兵士達もボロボロだ。
ケイジュを無視して魔族軍総司令を狙いに行こうとすると、地面に展開された魔法陣が森中の木々を動かし、ジャスの行動を阻む。
まるで巨大な牢獄だ。
移動しても移動しても…常に行動が阻まれる…。
地面を切りつけようが、巨大すぎる魔法陣が破壊されることは無く、即座に再生してしまう…。
こうなった以上…魔法陣を一気に破壊するしか…。
「僕の魔力量は、元々少ない…。ただ勇者のスキルによって魔力量が上乗せされている状態だ。ザハードに傷を負わされた際、傷を回復するため多くの魔力を消費してしまった…。多少回復したが、先ほどからの攻防によって、大分魔力の消費が激しい。このままだと、魔族軍総司令を倒す魔力が枯渇する可能性が高い。だが…このままケイジュを頬って置くことも出来ない。なら…」
ジャスは、地面を力強く踏み込み、数10メートル跳躍する。
さらに空気を強く蹴り上げ、さらに上昇…。
雲にまで手が届きそうなほど上昇したのち、アネモネの剣先を真下に向け、頭から地面へと落ちてゆく。
その際、空中に跳躍の魔法陣で足場を作り、急降下しながら…さらに加速する。
跳躍の魔法陣、落下する際の重力加速によって、速度が上昇し、ジャスの視界は1本の線になっていく。
まるで、ジャスの体が1本の矢であるかのように、空気中を穿ちながら、その身を投じる。
周りから、どう見られているのか、いや…誰も見ていないかもしれない。
地面から約2000 m付近へ達した時…100 m措きに自身の体が加速する魔法陣を展開する。
魔法陣を通過するたびに、さらに速度を上昇させ、加速度は倍々になって行く…。
既に、ジャス自身では止まれない。
『アネモネ』の剣先に、小さな魔法陣を展開させた。
この魔法陣は、地面に展開されている魔法陣を、打ち消すための起爆剤である。
音も、視界も、生身の人間なら到底…生きて居られない速度。
ジャスの体は既に、感覚がマヒしており、速度がゆっくり感じる。
剣先が少しズレるだけで、上手く行かないだろう…。
体感では、数10秒…、実際は1秒にも満たない…速度で落下していた…。
そして『アネモネ』は、地面に展開されている巨大な魔法陣と衝突する。
衝突した瞬間…ジャスは全身に掛かっている運動エネルギーを全て剣先の小さな魔法陣へと流し込んだ。
ジャスの残り魔力量だけでは、巨大な魔法陣を破壊する事自体、できなかっただろう…。
しかし、ジャスは考えた…。
魔力が無いのであれば…、ここら一帯を吹き飛ばすほどの威力を持った運動エネルギーを魔力へと変換し、巨大な魔法陣へと流し込めば、破壊…消滅、或いは相殺できるのではないかと。
そして、今まさに…実行している最中だ。
「ググググ!!!頼む!このまま、魔法陣を破壊してくれ!!」
落下エネルギーが、ジャスから剣先にある魔法陣へ流れ続けている状態だが…。
剣先の魔法陣を地面に展開されている、巨大な魔法陣以上に展開する事が、未だ出来ていない…。
――いや、これだけの大きさがあれば十分だ。
ジャスは『アネモネ』を地面に突き刺さすのと同時に身を翻す。
地面は、抉られ巨大な魔法陣も、大きく損傷する。
これ以上、剣先の魔法陣が大きくならないと判断したジャスは、破壊ではなく…魔法陣を消滅させる方向へとシフトした。
剣先の魔法陣に送っていた運動エネルギーを止め、そのまま地面に還元すると、半径数10m以上のクレーターが出現し、一気に魔法陣を損傷させる。
その結果、ケイジュの魔法陣は、巨大な爆発と共に、光を空中へ放出しながら…消滅した。
ジャスの体は空中に浮いており、爆風の影響を受けながら…地面へ落下し、両足で着地した。
あまりにも久しぶりな地面の感触を、振るえる足裏で感じる。
「はぁはぁはぁ…。何とか…、魔法陣を消滅させる事が、できたみたいだな…。これで、ようやく『ドレイン』の効果が無くなるはずだ…」
その様子を陰から観察する黒い影。
――ほう…あの魔法陣を消滅させるとは…、さすが勇者と言った所か。面白い…。今の状態なら簡単に殺せそうだけどな…。
そう思った瞬間。
「フ!!」
後方に何かがいきなり出現し、顔面にこぶしを食らう。
「グァ!!」
黒い影はクレーター方向へ殴り飛ばされ硬くなった地面に、叩きつけられた。
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