ゴブリンキングとの対決
その後も行く先で主にセレナさんたちがゴブリンを蹴散らしながら進むと、僕たちは大きな洞窟にたどり着く。
「ブロロ……パオン!」
「もしかして中から匂いがするの?」
「パオ!」
はなちゃんがうなづくんだから、行方不明のセッタちゃんもこの中にいるはず!
それを汲み取ったセレナさんが、みんなに号令を掛けた。
「行こう、みんな」
「分かってるよ」
「こっちもオーケーっす」
「早くセッタちゃんを助けるんだルン」
セレナさんの仲間たちも準備ができてるとのことなので、僕たちはみんなで洞窟の中に入る。
幸い洞窟は広いので、巨体のはなちゃんも入れそうだよ。
セレナさんとラルンさんが魔法で灯をともしながら進むと、早速またゴブリンたちが襲いかかってくる。
「クキャキャ!」
「クキャキャキャ!!」
金切り声をあげながら向かってくるゴブリンたちに、はなちゃんが長い鼻を振り上げて突進した。
「パオオオオオ!」
長い鼻でなぎ払われたゴブリンたちは、洞窟の壁に叩きつけられて動かなくなる。
「あの長い鼻は武器にもなるんすね~」
「デカい獣のくせにでたらめすぎるぜ」
感心しながら取りこぼしを処理するクーガさんとアッシュさん。
「ゾウの鼻は筋肉の塊ですからね。だけどそれだけじゃありませんよ! はなちゃん、いけるよね?」
「パオン!」
まだまだ増援が来るゴブリンたちを前に、準備万端なはなちゃんを確認して僕は唱えた。
「ストーン・ショット!!」
「ズオオオ!」
はなちゃんの鼻から機関銃のように石礫が乱射されて、ゴブリンたちをまとめて撃ち抜く。
「まさか魔法を使うのかルン!?」
「驚くのは早いですよラルンさん! ――ブレスブリザード!」
「ズオオオ!!」
続いて僕が唱えるとはなちゃんの鼻から吹雪の勢いで冷気が吹き荒れ、残りのゴブリンたちを凍り付けにした。
「す、すごいっす」
「バケモンじゃねえか……」
「予想外だルン」
「ふっふーん、はなちゃんとゆー君はすごいんだよ!」
はなちゃんの無双を前に目を点にするアッシュさんたちに、なぜかセレナさんが鼻高々。
「ひとまずゴブリンたちの気配が消えたルン。先に進むなら今だルン」
「それじゃあ行こう、はなちゃん」
「パオン」
すっかり静かになった洞窟を、僕たちは悠々と進む。
洞窟の奥に近づくたび、はなちゃんがなんだかそわそわし始めたのに僕は気づいた。
「あれ、どうしたのはなちゃん?」
「ブロロロロ……」
「どうやら奥に何かがいるみたいだね」
「セレナの言う通りっす」
「みんな気を引き締めろルン」
気を引き締めながら奥へ奥へ進む僕たちは、最奥で信じられないものを目にすることに。
「むぐ、むぐぐ~!」
「ヌジャジャジャ! 美味ソウナ生娘ダ!」
猿ぐつわをはめられた女の子に、一際大柄で宝石をジャラジャラと身につけたゴブリンが覆い被さろうとしていたんだ。
あの子がセッタちゃん!?
「あれは、ゴブリンキングだルン!」
「ゴブリンキング!?」
何それ、ゴブリンのボスみたいな奴ってこと!?
そういえば喋る魔物は強力だって、前にも聞いたっけ。
「まさかゴブリンキングが絡んでたとはな。さすがにキングともなれば俺を楽しませてくれるよなあ?」
指をポキポキと鳴らしながら歩み出るアッシュさんに、気づいたゴブリンキングがギロリと目を向けた。
「ヌジャジャ……、我輩ノ邪魔ヲスルトハ万死ニ値スルゾ……!」
なんかどす黒いオーラみたいなのを放つゴブリンキングの背後から、燃える松明を持ったアメリカの先住民族みたいな格好のゴブリンが四人姿を現す。
「気をつけてアッシュ! ゴブリンシャーマンもいるよ!!」
セレナさんの注意と同時に、ゴブリンキングがゴブリンシャーマンに命令した。
「ヌジャジャ、ヤレ!」
「クキャララ!!」
ゴブリンシャーマンが松明から火を放つけど、アッシュさんは剣を振るって火を払う。
「そんな弱っちい火なんか効かねえぜ! ――なにっ!?」
その時だった、払ったはずの火が弾けてアッシュさんに襲いかかったんだ。
「ヌジャジャ! コレガシャーマンノ火ダ!」
「なるほど、触れると弾ける火魔法だルンね」
「冷静に分析してる場合じゃないよねラルン!? アッシュ、大丈夫!?」
「ああ、なんとかな」
アッシュさんは無事みたい。
だけどセレナさんたちが駆け寄ろうとしたら、アッシュさんを囲むように火柱が上がったんだ。
「そんな!?」
「ヌジャジャジャ、邪魔ハサセンゾ?」
下品な笑い声をあげるゴブリンキングに、セレナさんは臍を噛む。
「セレナさん、僕たちに任せて! はなちゃん、アクア・スプラッシュだよ!」
「パオオオン!!」
僕の呪文ではなちゃんの鼻から水流が放たれて、アッシュさんを囲む火を一瞬で消化した。
「ナニ!?」
「ありがとうゆー君! それじゃあわたしたちもいくよ! ストライク・ショット!」
「アイス・ニードル!」
セレナさんの放った矢とラルンさんの氷魔法がゴブリンシャーマンの脳天を貫く。
「サンキュー、セレナ! そんじゃ俺がこいつの首を頂くぜ! サンダー・セイバー!!」
アッシュさんが剣に雷電をまとわせると、ゴブリンキングもすかさず巨大な鉈のようなものを取り出して迎え撃つ気だ。
「そりゃあ!!」
「甘イ!」
アッシュさんの剣とゴブリンキングの大鉈がぶつかり合い、洞窟内を衝撃波が襲う。
「ううっ!」
「プオオ!?」
衝撃波で怯む僕たちをよそに、アッシュさんがゴブリンキングとつばぜり合いをしていた。
「ぐっ、この……!」
「ヌジャジャジャ、コノ程度カ?」
だけどゴブリンキングのパワーにアッシュさんが押されそう。
するとそこへクーガさんが忍び寄って、ゴブリンキングの足首を斬りつけた。
「ヌジャ!?」
「今っす!」
「ったく、余計な真似を。だけど助かった、ぜ!」
この隙に大鉈を払いのけたアッシュさんが、必殺の一撃としてゴブリンキングの腹を切り裂く。
「おらあ!」
「ヌジャアアアア!!」
雷電を帯びた剣で斬られて感電したのか、ゴブリンキングの巨体は力なく崩れ落ちた。




