仁義なき戦い? 【8】
その頃、デスハードのアジトでは__
「あークソ、忌々しいったら__」
日本支部就任の初仕事を成功裏に飾る事が出来なかった大幹部、ムチムチプリンセスが息を切らせて早速特訓に汗を流していた。衣装は例のムチムチファッションではない。動き易く生地の分厚い、汗を搾り出す為に最適な、ボクサーなどが試合前に良く着用していそうなウェアである。
「ホントに、何て忌々しい連中なのかしら」
憎き美麗戦隊の忌まわしき姿を思い浮かべながら、プリンセスは益々気合いを込めてトレーニングに本腰を入れるのだった。
彼女は燃えに燃えていた。決して“萌え”ではない。真剣な表情で、歯を食い縛って燃えていた。体脂肪もまた燃えていた。
「だけど__だけど、見てらっしゃい。この次はこうはいかないわよ__」
「プリンセス……」
何が彼女をここまで駆り立てるのか、ベルトコンベア式ルームランナーの上でわき目も振らず一心に体を動かすプリンセスの姿が、下っ端たちの目には何やら意地らしく映るのだった。
「次こそは__この次こそは__見てらっしゃい、ティンカーⅤ!」
青春の、爽やかな汗__とは必ずしも言い難いものが有るとは言え、額に汗を輝かせて一心不乱に励む姿はえも言われず美しかった。彼女が何故ここまで熱心に汗を流そうと言うのか、今更説明の必要は有るまい。
「あたしは__あたしは、絶対に負けないからね!誰がこの世で最も美しいのか、必ず思い知らせてあげるからね!」
頑張れ、ムチムチプリンセス!
負けるな、ムチムチプリンセス!
宿敵ティンカーⅤとの仁義無き戦いは始まったばかりなのだ!
目指せ、薔薇色の悪の世界、悪役主役よモテモテよ!
「負けない!わたしは絶対に負けないからね!憶えてらっしゃい、見てらっしゃい!」
--つづく--