仁義なき戦い? 【4】
皆様、お久しぶりでございます。あるいは、はじめまして。
まだ、暫らくはなかなか更新できない状態ですが、のんびりと見てやったください。
「おのれ、貴様等……」
どうしても笑いの止まらない、憎き美麗戦隊に蒼褪めた顔を引き攣らせ、誇り高き大幹部は部下達に命じた。
「アンタ達、ナニやってるの!合成獣を連れて来なさい」
「イー!」
命令された戦闘員が、何やら上から布で覆いかぶせた物体を乗せた台車を押しながら、いそいそと登場した。
「おのれ、美麗戦隊とやら、よくも人の事を散々コケにしてくれたわね。地獄で己の罪の深さを思い知るがいい!」
怒りにその目をギラギラ輝かせ、プリンセスが叫んだ。
「出でよ、我が下僕!」
言うが早いか、プリンセスは台車の布を引き剥ぐり、中から奇妙な合成獣が出現した。この合成獣と言うのは常に奇妙な姿なのだが、今回のは奇妙なのが形状ばかりではなく、その姿勢も今までに無く奇妙であった。カエルの顔に、両手両足には矢張りその面相に相応しい水掻き、全身はカンガルーのような合成獣が自らの尻尾で体を支え、ロダンの彫刻のようなポーズで座り込んでいるのである。
「行けえ、合成獣カンガエルー。あんたのジャンプ力であいつ等を蹴散らしておやり!」
ピシッ、と景気良く、猛獣使いのようにプリンセスが鞭を一打ちすると、カンガエルーと呼ばれた合成獣が伏せていた顔をむっくりと起こした。
「承知致しました、ゲコー!」
両手を前に着き、軽々と跳び上がったカンガエルーがティンカーV達の頭上を跳び越し、易々と背後を取った。
「な、何?」
慌てて後ろを振り返ると、今度は反対側に跳び移った。
「イヤーン、何ですの、これ?」
エンジェルホワイトが身を捩じらせるように声を上げた。
「ゲコゲコゲー!」
奇声を上げながら、カンガエルーがティンカーVの周りを飛び跳ねて、たった一人で包囲するように円を描きながら動いている。
「こ、こいつ__」
マーメイドブルーがうめくように声を洩らした。
「もー、どうすればいいの!」
ヴィーナスレッドが泣きそうな声を上げた。フェアリーピンクは既に泣き顔でアマゾネスブラックにしがみ付いている。
「オーホホホホホホ!」
ムチムチプリンセスがしてやったりと言うように高笑いを披露した。
「いーわよ、カンガエルー。そのまま一気にやっちゃいなさい!」
「ゲコ!」
周囲を跳び回っていただけのカンガエルーが、円周の中に跳び込んだ。
「キャー!」
間一髪身をかわしたヴィーナスレッドが、憐れな悲鳴を上げた。
「アハハハハハ、いい気味ね、ティンカーV」
憎さも憎しティンカーVの無様な姿に、プリンセスは最高にご満悦のご様子であった。
「もー、どうすればいいの?」
「落ち着いて、レッド!」
またしても先程と一言一句違わぬ悲鳴を上げたヴィーナスレッドに、アマゾネスブラックが諌めるように言った。
「要は相手の動きを止めれば良いのよ」
「足止めすればよろしいのね?」
エンジェルホワイトが新体操のリボンに似たエンジェルリボンを構えた。しかし、狙いが定まらない。
「あーん、速すぎますわ!」
「それじゃ、ボクが!」
カンガエルーの動きを捉えきれずに困惑するエンジェルホワイトに、マーメイドブルーが応えた。
「うおりゃー、マーメイド・サイクロン・ウェーブ!」
「ゲ、ゲコー!?」
マーメイドブルーの作り出した青い竜巻に、カンガエルーが巻き込まれた。
「今ですわ!」
エンジェルホワイトが鍛え上げた新体操の妙技を披露して、七色のリボンを巻き上げた。
「エンジェル・スパイラル・レインボウ!」
「アマゾネス・アロー・インパクト!」
リボンに巻き取られて動きの止まったカンガエルーに、アマゾネスブラックが見事に一矢を報いた。
「ゲ、ゲ、ゲコ、ゲコー」
痺れたまま地面に落ちたカンガエルーが痙攣しながらうめいていた。
「何やってんのよ、カンガエルー。しっかりしなさい!」
「ゲコ、ゲ、ゲコゲコ__」
プリンセスの叱咤に、頷くように首を動かしたカンガエルーが声を洩らした。
「今よ、みんな!」
「おおー!」
ヴィーナスレッドの号令に、四人が頷いた。
五人が右手を差し出して、一点に集中した。
「な、何、一体?!」
プリンセスの見守る前で、ティンカーVが次々に叫んだ。
「ヴィーナス・ビューティ・エレメント!」
「アマゾネス・セクシー・エレメント!」
「エンジェル・プリティ・エレメント!」
「マーメイド・キューティ・エレメント!」
「フェアリー・ラブリー・エレメントお!」
五人の手の集まった中心点に、眩い輝きが宿っている。プリンセスがうろたえて声を上げた。
「ナニよ、これー?!」
「ティンカー・クリスタル・ペンタグラム!」
ティンカーVの五人が声を揃えて叫ぶと、透明に輝く五傍星が出現した。
「ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲー!」
ペンタグラムに包まれたカンガエルーが断末魔の叫びを上げた。
「カンガエルー!」
プリンセスが悲鳴を上げると、そこに合成獣の姿はなく、カエルとカンガルーが別々に佇んでいた。カエルもカンガルーもその場から逃げて行ってしまった。カエルの方は兎も角、カンガルーがあのままでは後々、町中は大騒ぎであろう。