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仁義無き戦い? 【1】

「しかし、驚きましたな」

下っ端の一人が、妖しげなデザインの腰掛に身を沈め、爪の手入れに余念の無いムチムチプリンセスに機嫌を取るような手付きで申し上げた。

「何が?」

「いや、なんと申しましょうか__」

辞を低くして、下っ端がプリンセスに言った。

「そこまで深いお考えの元に作戦を御建てになるとは、わたくしどもなどには、想像も__」

部下の心からの賞賛に、オホホホホホ、と甲高い笑い声を立てたプリンセスだった。

「我々とは目の付け所が違いますな」

「まあ、これもアタマの違いかしら」

「いや、全く__」

益々ヨイショに熱の篭った部下が、更にプリンセスを持ち上げた。

「いやあ、これまで自分たちは、兎も角組織に忠誠を尽くそうとそれだけしか考えてこなかったもので__」

「ふーん__」

ねっとりとした、底意地の悪い流し目で部下を窺うプリンセスだった。

「兎も角、忠誠さえ尽くしてれば給料だけは貰えると__」

「いやあ、それを言われると……」

実際その通りなので返す言葉も無い。

「この、日本支部に赴任して来るに当たって、前以ってあんた達の報告書を読ませてもらったわよ」

「へえ__」

下っ端は驚いた。まさかそんな物にわざわざ目を通すとは思っても見なかったので、正直な話、新鮮ですらある。

「あんた達のやってきた作戦__」

腰掛の手すりに頬杖ついて、プリンセスが何ともいえない顔を見せた。

「一体、何考えて計画建ててんの?」

「そ、それは……」

下っ端は答えに窮した。

「当ててあげましょうか?」

如何にも自信に満ちた、相手をいたぶる笑顔である。

「要するに、何か適当に目立つ事やって、自分たちは仕事してます、て、本部に報告さえ出来ればそれで良いと__」

「いやあ__」

まさしくその通りである。痛い所をズバリと衝かれて、下っ端は益々答えに詰まった。

「ま、しょうがないわ」

言葉通り、しょうがないと言う風に両手を広げたプリンセスが、割と淡白に言った。

「それがニッポンの伝統なんですもの。コクテツ、オヤクショ、退屈を我慢する事が仕事だって言うのも、日本の古き良き習慣だって聞いてるし」

古きは兎も角、ちっとも良くは無い。

「だけど__」

ぐ、と身を乗り出すように部下を睨みつけたプリンセスが、声を潜めた。

「これからは違うわよ」

プリンセスの目に宿った強い輝きに、下っ端は身を竦ませて震え上がった。

「今までみたいな身内の馴れ合い凭れ合い、なあなあで物事済ます日本型相互補助の責任転嫁は許さないんだからね」

「は、はは!」

下っ端が恐れ入って頭を下げた。

「いい事、組織の首領、偉大なる宇宙神と直接コンタクトを取って神託を受け賜る我等が女王、ビンビンクイーン直属の大幹部、このムチムチプリンセスが直々に指揮を取る以上、この日本支部は世界制服の最前線基地として常にトップの成績を目指すのよ!」

「ははあ__」

更に恐れ入った下っ端が、またも頭を下げた。

「まあ、一度方針を立てたら後は部下を信じて全てを任せるのが上に立つものの役目だし、今は兎に角、朗報を待ちましょ」

「はは__」

「それじゃあ、あんた、肩でも揉んでもらえるかしら?」

「はい、喜んで__」

急いで後ろに回った部下が、恭しい手付きでプリンセスの肩に手を触れた。

「いい事、このわたし、類稀なる美貌を誇るこのムチムチプリンセスの、美しい体に手を触れる、人類最高の栄誉と幸運を噛締めて、心を込めて揉むのよ、判ったわね?」

「それはもう」

部下が、それは熱心にプリンセスの肩を揉んだ。

「凝ってますねえ、実際」

「そうなのよねえ、この豊かなバストを支えるのって、並大抵じゃないのよねえ。美しい肉体の代償かしら。この美しさを支えるのは大変なのよ。美しさって罪よねえ」

下っ端の真心の篭ったマッサージに、すっかり心身をリフレッシュさせたプリンセスが、ネコのように喉を鳴らした。

「それでですね、プリンセス__」

「何?」

「プリンセスの計画は素晴らしいのですが、これを実行となると厄介な連中が……」

「判ってるわよ」

プリンセスが余裕の微笑みを洩らした。

「美麗戦隊とか何とか言うイカれた格好の奴等の事でしょ?」

自分の事を棚上げして、良くぞ言えたものである。

「ま、何とかなるんじゃ無い?コスプレかチンドン屋か、何の酔狂か知らないけど、あんなこっ恥ずかしいカッコで街ン中うろつくようなアホに、何が出来る訳でもないし……」

人の振り見て我が振りを全く省みず、他人を遠慮無く扱き下ろす快感はやめられないのが人情と言うものであろう。一体誰が彼女を責められようか?

「あー、そこそこ、いーわねー、効くウ__」

「報告します__」

マッサージに身を委ねて、夢見心地のプリンセスに、別の部下が罷り出た。

「見付かりました、お言葉に添った、お誂え向きの極道が」

「ホント?」

目を輝かせ、やおら立ち上がったプリンセスが嬉しそうに叫んだ。

“いよいよだわ__!”

プリンセスの、豊満な胸が、物理的にも抽象的にも揺れ動いた。

“いよいよ、あの名高き『ザ・ヤクザ』と対面できるのね__”

プリンセスの脳裏には様々な光景が去来していた。

着流し、長脇差(ドス)、桜吹雪に般若のお面、色取り取りの刺青が、背中で泣いてる(おとこ)の美学。

“勇壮でカラフルな昇り竜(ドラゴン)刺青(タトゥー)が逞しいモロ肌脱ぎに吠えて、嗚呼__そうよ、これよ、これなのよ__”

鮮やかな倶梨伽羅モンモンを想像してモンモンと妄想に耽るプリンセスの頬は桃色に上気し、今にもイってしまいそうなほどに盛り上がっていた。

“いやーん、もうダメ。あたし、疼いちゃう〜”

その豊かな美化脂肪を波打たせて、喘ぐように悶えるプリンセスを見守る下っ端たちの目は、何とも言えず虚脱感が漂っていた。

流石に、その視線に決まりが悪くなったプリンセスが、コホンと一つ咳払いを洩らすと再び威厳(?)を取り戻し、矢張り腰に手を当て、鞭を高々と掲げて景気良く号令をかけた。

「よーし、それじゃ、行くわよ。『“仁義亡き戦い”作戦』の実行段階発動!」

「イー!」

ムチムチプリンセスの命令に、下っ端の戦闘員達が威勢の良い奇声を上げた。


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